地面にポタポタ血が落ちるとともに、口の中にも血の味が広がる
足なんかもう正直言っちゃ動きやしない
無一郎さんがあんなこと言ったのも
いなくなっちゃったのも、無言で出ていったのも
無一郎さんは理由なくそんな酷いことする人じゃない
ついに足の疲労は限界を迎え、私は草むらにひざまずいた
服も体も心もボロボロ
お腹もすいたし、喉も渇いた
私このまま餓死しちゃうのかな
もし無一郎さんの自殺が本当ならもう天国で待っててくれてるよね
なら私はもう悔いはない
このまま安らかに眠って、警察に見つかって、アオイさん達に伝わって
アオイさんは悲しむのかな
お葬式来てくれるかな
いや…そもそも警察官に見つけられずにお葬式もないかも
行方不明のまま、ずっと冷たい草むらにいるのかな
いや…無一郎さんは自殺じゃない
一応行方不明だ
遺体だって見つかってない
行方不明の人の気持ち…きっとすごく悲しくて淋しくて辛い
ガサガサ
かすかに草が動く音がした
その声は凛としていた
今人にも見つかるわけにはいかないのに
警察にでも差し出されたらもう本当に終わっちゃう
でも、声の主は遠ざかるばかりか、足音は近づいてきた
その声の主は、私が一番聞きたくて会いたかった人
質問攻めする予定だったのに、口がカラカラで鉄の味しかしない
もう死期が近づいてきてるんだ
やっと会いたかった
私は声のかわりに大粒の涙をこぼした
無一郎さんの目からはとめどなく涙がこぼれていた
無一郎さんはバッグから水を取り出すと、私に飲ませてくれた
やっと喉も潤って、声が出せた
私は力が出ない拳で無一郎さんの膝を叩いた
無一郎さんは私を抱き寄せた
それは私が一番求めていた温もりで
私は無一郎さんの腕のなかでめいいっぱい泣いた














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!