数日後。
やっと熱も抜けて、喉も“声”として戻ってきた夜。
部屋は静かで、スマホの画面だけが淡く光ってる。
連絡先の一番上――兄、スングァン。
指が、少しだけ躊躇う。
ショーケースのこと、声が出なくなったこと、
最後に戻った瞬間のこと。
伝えたいことは山ほどあるのに、
一言目が、どうしても決まらない。
深呼吸して、通話ボタンを押した。
……数秒のコール音。
「もしもし?」
聞き慣れた声。
それだけで胸の奥が、きゅっとなる。
「……スングァニヒョン」
一瞬の沈黙のあと、少し柔らかくなる声。
「回復したんだな」
それだけで、全部お見通しみたいで。
Siuは小さく笑って、ベッドに背中を預ける。
「うん。ちょっと寝すぎたけど」
「ショーケース、映像で見た」
心臓が、どくんと鳴る。
「……どうだった?」
また少しの間。
海外の夜の向こうで、スングァンが息を吸う気配。
「正直に言うぞ」
「うん」
「……最後の曲、声戻った瞬間」
声が少し、詰まる。
「画面越しなのに、泣いた」
その一言で、喉の奥が熱くなる。
「よく耐えたな。
一人で、あそこまで」
「一人じゃないよ」
思わず、即答してた。
「Shardsがいたし……
ヒョンがいない分、ちゃんと光らなきゃって」
短い沈黙。
それから、少し照れたような笑い声。
「それ、ヒョンに言うセリフか?」
「……スングァニヒョンだから言うんだよ」
また、静かになる。
「次は」
スングァンの声が、はっきりする。
「俺が客席で、Shardsと一緒に振る」
「ペンライト?」
「ああ。割れてても光るやつ」
Siuは、目を閉じて微笑む。
「約束だよ」
「約束」
通話が終わっても、胸の奥は温かいまま。
Shardsの光と、ヒョンの声が、
同じ場所で静かに呼吸していた。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。