佐久間さんは私を連れて、『桃屋食堂』という小さな看板の出ている古民家のような建物に入った
戸口ののれんをくぐって佐久間さんが中に声をかけると、二十代くらいのお姉さんが奥から出てくる
うわ、この人も変な服、と私は目を丸くした
着物の上に白い割烹着
古いドラマに出てくるお母さんの格好だ
見回してみると、店の中も質素というか、古びているというか……
呆然としながら観察していると、佐久間さんが私の背中を押した
のあさん、と呼ばれた割烹着のお姉さんは、慌てた様子で私に駆け寄ってきた
そう言いながら私を座敷に座らせ、湯呑みに入った水を出してくれた
ぺこりと頭を下げて受け取る
ありがたい、と思って口をつけたものの、予想外のぬるさに一瞬動きが止まってしまった
室温とほとんど変わらない、生ぬるい水
なんで氷を入れてくれないんだろう、と思ってしまう
でも、助けてもらった立場で文句なんて言えない
私は黙って飲み干した
そういえば、さっきは具合が悪すぎてあまり気にならなかったけど、佐久間さんがくれた水筒の水も、今思えばかなりぬるかった
それにしても、食堂だと言うのに、暑い
直射日光が当たらない分、外よりはマシだけれど、むっとした熱気がこもってる
クーラーつけないのかな、と思って首を巡らせると、天井にも壁にもエアコンは設置されていなかった
嘘、と口には出さずに驚く
今どき、エアコンがない店なんて、信じられない
せめて扇風機、と視線を走らせる
私が腰かけている座敷の端っこに一台の扇風機を見つけた
ずいぶん年季の入った、古くさい形
なぜか羽根は金属製だ
それに、埃をかぶっているように見える
のあさんが私の視線に気づいたのか、眉を上げて声をかけてきた
私が顔の前で手を振っていると、のあさんはやけにレトロな絵柄のうちわを持ってきてくれた
佐久間さんがのあさんからうちわを受け取り、ぱたぱたとあおいでくれる
ふんわりと柔らかい風が、火照った頬や首を冷ましてくれた
のあさんが世間話のような調子で何気なくそう言った
私はのあさんからもらったおしぼりで顔を拭きながら、ふと変に思う
家庭用の扇風機が作られなくなった?いつの間に?そういえば、うちだって十年以上前の扇風機を使っているけれど……
もしかして、最近はどこの家もエアコンばっかりで、扇風機なんてなかなか売れないから、製造中止になったとか?
怪訝に思っている私をよそに、佐久間さんはのあさんの言葉に大きく頷いてる
……グンジュセイサン?耳慣れない言葉を口にした佐久間さんにちらりと視線を送る
佐久間さんはにっこりと笑い、私とのあさんを交互に見た
今回はここまで!!
長かったですね……きる場所が分からなくて…(;´Д`)
それでは次回お会いしましょう〜!!
おつゆか〜!!👋














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!