何の変哲もない日々が続いて一年。
私は、お風呂から戻ると、部屋のドアに1枚の紙が挟まっていた。
「明日、空けておいて」
と書かれたメモ紙だった。恐らく、大和からの手紙だろう。
何の用なのか、私は高鳴る胸を撫で下ろし、眠りについた。
* * *
朝の気持ち良い光が部屋に差し込む。
私はベッドから体を起こした。軽く身支度を済ませ、大和の部屋をノックする。
そう言われ、私は大和の部屋に入る。
一年経っても相変わらず殺風景な部屋だ。
大和はそう言うと、部屋を出た。私は、急いで大和の後を追う。
彼が向かった先は、1階の共同スペースにあるピアノ。
初めて彼のおといろを聴いた時の光景が脳裏に映し出される。
そうして、彼は手をピアノに伸ばし、優しいタッチで音を奏で始めた。
どこか寂しげで、儚く聞こえる音。
どうしてこんな音を奏でるのだろう……と思っていると、転調した。
少し明るい音色が見える気がする。
何とも言葉では言い表すことの出来ない感動が私の身体を包み込んだ。
しばらく夢中になって聴いていると、彼の手がピアノから離れた。
私は様々な感情を色に置き換え、様々な色が合わさった虹を想像した。
この曲にピッタリだと思う。
そうして、私は大和とともにこの曲を弾いた。
この時は、この曲に込められた全ての意味など知る由もなかった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!