奈落が、静まり返っている。
さっきまでそこにいたはずの圧が、嘘みたいに消えていた。
九人は起き上がれないまま、少女を見ている。
毛先にかけて白い青色の長い髪、陶器のように白い肌。
小柄で、細い体。
なのに
奈落そのものより、強い気配。
少女はゆっくり近づいてきた。
渡辺が反射的に身構える。
少女は小さく笑った。
深澤が息を吐き、つぶやく
少女は九人を順番に見る。
一人ずつ、観察するみたいに。
阿部が、掠れた声で答える
少女は目を丸くして驚いていた。
ラウールの問いかけに、少女は少し考えてから答えた
その名前が、妙に重く響いた。
岩本が問う。
あなたは奈落の奥を見て答えた。
全員が固まる
さらっと言うあなたに阿部が問う。
あなたは、少し首をかしげる
意味が分からない。
人族の寿命を超えている。
阿部が震える声で言う。
朱莉は、少しだけ困った顔をした。
そう言いながら、朱莉はステータスを表示した。
"Lv10000"
全員、言葉を失う。
ありえない。
人族の上限は100。
その常識が、音を立てて崩れる。
そんな中阿部だけが、違う顔をしていた。
理解してしまった顔。
9人は一斉に阿部を見る。
朱莉が初めて、はっきり阿部を見る。
あなたは少し嬉しそうに笑った
あなた は九人を見渡す。
その目が、ほんの少しだけ冷たくなった
質問の意味が分からない。
しばしの沈黙の後、最初に口を開いたのは岩本だった。
また、静寂が訪れる。
誰も答えられない。
あなたは、遠くを見る。
声に感情がない。
ただ、事実を言ってるいるだけ。
奈落の空気が重くなる
九人の胸に、同じ記憶が蘇る。
あなたは微笑む。
優しいのに、どこか壊れている笑み。
静かに、でも確かな強さを持って言う。
誰も、否定できない。
あなたは9人を見て言った。
9人は頷く。
あなたは、満足そうに頷きに手を差しだした。
その言葉が、奈落で初めての"道"になった












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!