第79話

Mask.
109
2026/09/26 15:00 更新
ノエラ
ノエラ
スペイドにいさま、見て見て!
早朝にスペイドの自室に飛び込んできたのは、華やかなお召し物を着たノエラだった。桃色のシルクに、金と水色の刺繡。袖は丁寧にフリルまで縫われていて、幼い子供の正装にはぴったりなデザインだった。
キッドは彼女の声を聞いて顔を上げる。ベッドの角に座って、隣で寝ていたスペイドを起こしてたところだった。
ノエラ
ノエラ
あれ、スペイドにいさまねてるの?
「カイト」
「カイト」
あぁ、朝は弱いからね
「カイト」
「カイト」
似合ってますよ、姫
そう笑って褒めると、ノエラの目がぱっと明るくなる。その場でくるりと回ってみたり、鏡の前で刺繍を眺めたりと、随分ご満悦な様子。
「カイト」
「カイト」
まったく…子供に負けていいのですか、スペイド様
スペイド王子
スペイド王子
んー…
スペイド王子
スペイド王子
おきるよ…
スペイドはのそりとベッドから体を起こし、重い瞼を開いてノエラを見る。
スペイド王子
スペイド王子
…にあってる
ノエラ
ノエラ
へへ、やったぁ!
ノエラ
ノエラ
早くいこう!
ノエラがこんなにも興奮している理由。それは、ちょっとした「おでかけ」をするからだ。

さかのぼること数か月前。
アルフレッドが一通の手紙を手に訪ねてきた。金色の封蠟と見慣れた家紋ですぐに分かった。
「カイト」
「カイト」
タロット王国?
「カイト」
「カイト」
何かありましたっけ
スペイド王子
スペイド王子
いや…なんだろうな
他王国の王家からの手紙である故、スペイドはキッドに渡さずそのまま封を開け、中の便箋を抜き取ってゆっくりと読み始めた。内容は、手紙というより、招待状のようなものだった。送り主はあのネメリア王太子。
「カイト」
「カイト」
結婚式?
「カイト」
「カイト」
確かに、ネメリア王太子様には婚約者がいるとお聞きしましたね
スペイド王子
スペイド王子
あぁ、けど少し早いような…
何かの都合で少し早まったのだろう。何もおかしいものはない。
だが他国の王族、ましてや王太子を呼ぶのは異例だ。ただでさえ国際関係は脆く慎重に行動するべきなのに、こうも堂々と招待するとはずいぶん自信と覚悟があるのだろう。
ネメリア王太子とは小さなころから面識はあるし、皇帝も快く承諾してくれたので断る理由もなく、目立たぬようにキッドとノエラだけ連れて出席を決意したのだ。

結婚式ならそれなりの服装を、とキッドの意向で仕立て屋にノエラの正装とスペイドの礼服を依頼した。急だったので修正の暇もなかったが、そんな必要もないくらい寸法は完璧で、見た目や肌触りも申し分なかった。さすが王族専属の仕立て屋というべきか。
スペイド王子
スペイド王子
…俺はいつものでも…
「カイト」
「カイト」
だめですよ、ネメリア王太子様に失礼でしょう
「カイト」
「カイト」
面隠しも新調したので、ちゃんとつけてくださいよ?
スペイド王子
スペイド王子
…はいはい
礼服を着用する際、兜は被れない。素顔を見せないスペイドは目元を隠すなにかが常に必要なのだ。例えば、面隠しとか。
一刻ほど要したが、鏡に並ぶ三人はいかにも「家族」のように見えた。下手すればトランプ王国の王子とその連れにも見えないのかもしれない。都合がいい。目立たない方が穏便に事が進む。
馬車に乗り込むスペイドにキッドはふと口を開く。
「カイト」
「カイト」
スペイド様
「カイト」
「カイト」
貴方はなぜ素顔を見せないのです?
「カイト」
「カイト」
端麗な貴方なら隠す理由もあまり見つかりませんが
スペイド王子
スペイド王子
…
スペイド王子
スペイド王子
法により見せられない
昔から王位継承者は神に選ばれし者として王位に就くまでの間、穢れを遮断するために顔を隠す。

見せてよいのは生みの親、国王と王妃、穢れを持たないとされる10歳未満の子供、恩人、そして…
スペイド王子
スペイド王子
…伴侶だ
「カイト」
「カイト」
…?
「カイト」
「カイト」
え?
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心のままに書いてます笑 ご興味があればぜひ!
そばちか
そばちか
おつそば!

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