瑠衣side
いつも通り。
ただ2人でご飯を食べて、順番にお風呂に入って、軽くストレッチをしてから、テレビで動画を見る。
そして、どちらからともなく、そういう気分になったりして。
最初は、お互いのそれを触り合うだけだった。暫くして、それらをぴたりと合わせて扱くようになった。片手に収まりきらない自分たちのものを、きゅっと口を噤みながらも触っていく。手を上下させるほど、腰のあたりがビリビリして、身体に力が入る。ちょっと待って、なんて思っても、仁と一緒に動かしている手が止まることはない。だからこそずっと、気持ち良いままで。
仁の肩に顔を埋めるようにして寄りかかりながら、なんとか声を発する。なるべく、変な声が出ないようにしながら。ぎゅっと力を込めて、快感をどうにか逃がしながら。
それでも、そろそろ限界であった。身体の奥から、何かが込み上げてくるような…そんな感覚を覚えた時には、もう既に手遅れで。
白濁した液体が、ぱたた、とシーツを汚す。
気持ちいい。頭がふわふわしてくる。欲を言えば、このまま寝てしまいたい気分だ。
…でも、今日はまだ、やりたい事があった。肩でゆっくりと息を整えながら、まだぼんやりとした脳をなんとか働かせようと試みる。
…が、身体は疲れており、更に仁に寄りかかってしまう。
空いていた方の仁の手で、柔らかく頭を撫でられる。いつもこうだ。2人で絶頂に達したら、そこで終わり。ゆったりシャワーに入って、再びベッドで眠って…それがオレたちの、“いつも通り”だった。
けど、今日は、もう一歩先へ進みたい。
いつも素直になれなくて、できなくて、今日が3回目。
今日こそ、言いたい。
言える。
言えるはず。
なのに。
言葉が、出てこない。
言いたいことは簡単だ。いつもリードしてもらっている仁を、気持ち良くしたい。そのために、……挿れてほしい。
ふと気になって、男同士のやり方を調べた時、“挿れる”などという言葉が出てきて驚いた。そして直後、その検索結果は瑠衣の手によって消されることになる。
どこに?と純粋に疑問を抱いた。しかしそんな好奇心)りも、羞恥心の方が上回ってしまった。どう捉えようと、思い浮かぶのは、仁との夜の時間なのだ。
勝手に恥ずかしくなって、閲覧履歴までしっかり削除した。だから、細かいこともやり方も、何も分からない。
それでも、その単語だけが頭に残る。今シていることよりも、きっともっと深いことが、できるのだ。
だから、それで、仁を。
…仁を、気持ちよく。
そう。これは決して、オレが気持ちよくなりたい訳じゃねぇ。仁をよくしてやりたいだけ。仁のために、オレがリードしてやるんだ。
そんな風に自身を誤魔化して、細々とした声で告げる。
恥ずかしさを堪え、俯きながら口にした言葉。
頑張って伝えたというのに、肩を借りているこいつはいつにも増して口数が少なくて、なんの反応も返ってこない。
寄りかかったまま、控えめに見上げてみても、仁の表情は見えないままだ。オレ、なんか変なこと行っちゃったかな。
仁の頬が、オレの頭の上にぽすりと落ちる。仁の口から吐き出されたため息に反応してやりたかったが、オレの返答は、次の仁の言葉によって掻き消されてしまった。
仁side
色々思うところはあるが、全てを飲み込んで端的にそう伝える。すると、瑠衣は少しだけショックを受けたような表情を見せた。伝え方が良くなかったなと反省すると共に、自身の動揺を実感する。
…いや、俺も俺だが、瑠衣も瑠衣だ。どうせ、碌に調べもせずに言ったのだろう。準備も何もしていないのに、できる訳がない。
だがきっと、目の前のやつはあらぬ勘違いをしているようだった。恐らく、俺は瑠衣をそういう目では見られないとか、そういう類の勘違いを。
ここまでしておいて、今更そんなことがある訳ないのだが。
少し待ってろ、と言い残し、ベッドから降りる。棚の奥から小さな袋に入ったローションを取り出し、瑠衣の元へと足を進める。少量のものではあるが、買っておいて良かった。
まさか、瑠衣にその気があるとはな。
ベッドに横になり、隣の枕をぽんぽんと叩くと、瑠衣は大人しく俺の腕の中に収まった。その身体を抱きしめながら、手元の袋を開けていく。どろりと出てきた液体が、ゆったりと手指に絡まった。少し冷たいのがなんだか気がかりで、手の中で転がして温める。
事前の準備のことなど、微塵も知らないような表情。にも関わらず、挿れて、などと言うのだから。本当に、危なっかしくて、目が離せなくて、愛おしい。
手の甲で腰のあたりをなぞりながら、その手を下へ下へと動かす。そしてローションで潤った手のひらで、ぴとりとそこに触れてみる。
ぴくりと力が入ったのが分かる。
その場所に指は入れず、ずっと表面を撫でるように弄ぶ。華奢な身体を包み込みながら、指先でその場所をくるくると触れてみる。
可愛い奴。
そんな言葉を飲み込むと、代わりに少し意地の悪い言葉が零れる。
否定しないところに愛おしさを感じつつ、その口を塞いでやる。
舌でとんとんとノックすると、瑠衣はされるがまま口を開いた。うすらと空いたその隙間から、口の中を侵していく。
そのまま、指先をくちゅりと中に入れる。途端に、瑠衣の身体が強ばったのが分かる。ぎゅうと締め付けられ、ちょっとした緊張がこちらにも伝わる。
が、息をする余裕が必要なほど瑠衣がヤワじゃないことも、俺は知っている。
舌を更に奥へと進ませて、瑠衣の口の中を蹂躙する。漏れ出る甘い吐息に満足しつつ、指先で瑠衣のナカを撫でる。
第1関節まででも十分にきつい。それでも、内側をさするように、ゆっくりと指を動かす。少しずつ、少しずつ、奥まで。
圧迫感か、違和感か。今まで味わったことの無い感覚に、混乱しているのだろう。それでも、そろそろ瑠衣のそれは、俺の指を第2関節まで咥え込んでくれそうだった。
となると、恐らく、この辺に…
可愛らしい嬌声に、一瞬ぴくりと手の動きが止まる。想像以上に恥ずかしかったのか、瑠衣は口をぎゅっと閉じたまま下を向いてしまった。足には先程以上に力が込められ、耳がほんのり赤く染まっている。
何が起こったのか分からない様子で、顔を真っ赤にしながら戸惑う姿。その可愛さに、少しずつ、我慢ができなくなっていく。
わざと口に出して言ってみては、指先をぐっと押し当てる。やはり前立腺までは調べていなかったらしく、瑠衣は当惑しながらも目をぎゅっと閉じて、必死に声を抑えている。

その姿に自分が欲情していることを自覚する。それでも、今日これ以上先に進む訳にはいかない。瑠衣には悪いが、流石に無理がある。
俺がやってやりたい気持ちはあれど、生憎左手は瑠衣の頭の下だ。右手でゆるゆると前立腺を刺激していきながら、その左手で柔らかく頭を包み込む。そのままこちらに軽く引き寄せてこつんとおでこを合わせ、再び問う。
目を逸らすことができず、また瑠衣はきゅっと目を瞑る。先程まで口を抑えていた手が、少しずつ下へと降りてゆく。
そして瑠衣は、垂直に立った自身のそれをゆるゆると刺激し始めた。俺の指への締め付けが強くなる。瑠衣の身体にも力が入っており、感じていることは明白だった。
本人は無意識であるだろうが、瑠衣は絶頂に近づくと、いつも手の動きが速まる。だからこそ、気持ち良いことを知ってしまえば、後には引けなくなるはずである。
そしてその予想は、早くも的中することになった。
びくびくと瑠衣の身体が跳ね、再び白濁した液でシーツが汚れる。
上手にできたな、なんて言葉を掛けてやるのは、らしくない。代わりに、再びそっと瑠衣の頭を撫でる。
ふわふわとした綺麗な髪が、ゆるやかに上下する肩の上からさらりと落ちる。火照って紅く染まった首元が露になり、その艶やかさが更にこちらを欲情させてくる。
俺は瑠衣の見えないところで、耐えきれず口元を緩ませた。
つい見惚れていると、瑠衣がもぞもぞと動き出す。顔を見せたかと思えば、とろんとした目がこちらを捉えてきた。
ゆっくりと俯くように視線を下ろしたかと思えば、ぐりぐりと頭を擦り寄せてくる。そしてこいつは、ぼそりとこんな言葉を口にした。
思いがけない言葉に驚きつつ、必死に平静を装う。
いつものように、少し軽口を叩く。すると、瑠衣は拗ねたようにぷくりと頬を膨らませた。子供みたいに見える筈のその表情が、どこか艶かしく見える。
偶にこうやって、予想だにしなかったことを言ってくるものだから、敵わない。バレないようにそっと呼吸をしてから、瑠衣へと向き直る。
ゆっくりとその身体を起き上がらせ、近くにあったペットボトルを手に取る。瑠衣に渡すと、ありがと、と呟いてからそれに口を触れさせた。こくりこくりと、少しずつ、でも確実に、中の水は減っていく。
それでいい。無理せず、ゆっくり、俺たちのペースで。
そうして瑠衣から受け取ったペットボトルを、俺もゆっくりと傾けて、喉を潤すのだった。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。