〈あなたの下の名前視点〉
絵名も無事に見つかった!
草薙ちゃんや鳳ちゃんとも出会えた!
人もだんだん減ってきて移動がしやすくなった!
絵もはっきり見えるようになった!
みんなで雑談しながら楽しく回れた!
…のところはいいのだが。
〈美術館 屋上にて〉
どうも。何度目の自己紹介でしょうか。
ぴちぴち兄嫌われJK、神代あなたの下の名前です。
美術館に来ています。クラスメイトと会いました。
一緒に回れて嬉しいです。でも家出したから罪悪感もあります。
今、草薙ちゃんが私に何か大切なことを伝えようとしています。
美術館の屋上にいます。寒いです。
現場からは以上です。
にしても、そんなに深刻なことか?
草薙ちゃんがこんなにも言うのを躊躇っているのは初めて。
…恋愛相談?人生相談??
……どちらにしろ、私が解決できる範囲だといいんだけど…
と思っていると、深呼吸をした後にようやく草薙ちゃんが言葉を発した。
あー。そーゆーパターンか。
草薙ちゃんにとっては他人事なのに、こんなに配慮して言ってくれるとは。
優しいなあ。
それに比べて私は…
あ、今はこの話題じゃないね。
えーっと、何かいい言い訳は…
レン…?なんで??
スマホからわずかに光が漏れている。
なるほど、スマホから話しかけてくれてるんだ。
でも、なんでこんなタイミングに…
草薙ちゃんにバレたら、どう説明すればいいのかわからないじゃん。
〈ベンチにて〉
誰もいない。ていうか人が来る気配もない。私と草薙ちゃん、ふたりだけ。
…話すのはまだ躊躇いがあるけど、
本心を打ち明けるチャンスだ。
私は呼吸を一つ行ってから、淡々と話し始めた。
できるだけ、表情を読まれないように。棒読みで。
まさか、兄さんがそんなことを草薙ちゃんに話していたとは…
草薙ちゃん、迷惑かけてごめんね…
にしても、なんで私が家出したのかという理由はわかってるんかな。
そして、私は今まで心に溜めていた本音を、全て草薙ちゃんに打ち明けた。
草薙ちゃんは悲しそうな顔で聞いていた。私が話している中、「辛かったね」や「大変だったね」などの一言も発さずに、ただ黙々と私の話を聞いていた。
…話し終えても、草薙ちゃんはしばらく反応しなかった。
まあ…こんなに情報が多かったらね。
流石に、考える時間は必要か。
…
でも、今回の家出は完全に私が悪い。
家族の気持ちも知らないで家を飛び出し、東雲家のみんなにも迷惑をかけちゃったから。
さらには草薙ちゃんにまで…
あの幸せな日々に。
…って
タッタッタッ…
〈しばらくして〉
〈美術館 ガーデンにて〉
過去にあんなことやこんなことがあって入院したから、走るスピードは死ぬほど落ちてるはず…
…もしかして草薙ちゃんって
※死にかけ

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!