回収した、母の遺品、もとい、呪物を
鑑定に出し数週間後。
どれもおかしな呪いは無く、記憶の媒体的
役割をしているだけだと分かった。
そこで2日に1つを目安に呪物に触れて
記憶を取り戻すことになった。
回収した呪物は10個。
1つ目は調査旅行中に吸収済みだから
今日は2つ目。
机の上に置かれた呪物を悟と2人で見ている。
私がそれに触れようとするとさっきから
悟のストップが入る。
私の肩に頭をもたれかけてくる。
悟の頭をポンポンとする
蒼く力強い目で私を見るものだから
少し恐怖を感じてしまった。
寝たまま犯されるのは流石に怖すぎる
呪物に触れた瞬間、視界が暗転した。
五条Side
呪物に触れて、僕と反対側に倒れるあなたの下の名前の肩を掴んで僕の肩に頭を乗せる。
そして手を握った。
脈を測って、息があることを確認する。
不安をかき消すように自分に言い聞かせる。
あなたの下の名前の腰に手を回し、
ぎゅっと抱きしめる。
記憶の中でもどうか僕の声が届いてますように。
あなたの下の名前Side
大きな桜の木が一本だけ生えてる丘。
周りは花畑なのか、色とりどりの花。
私は今花畑に立っている。
軽やかな笑い声が聞こえてきて振り向くと
そこには白い着物に身を包み
小走りに近づいてくる女の子。
その顔立ちに見覚えがある。
私を通り過ぎて行く、私の知っている母より幼い姿の母を追いかける。
久しぶりに見た、大好きな母。
母様と話したい。
母様にまた抱きしめてほしい。
何度も名前を呼び追いかける。
けれど、私には一切気づかず走る母。
そこで気づく違和感。
こんなに大きな声で
呼んでいるのに
気づかないなんて、、、。
あぁ、そうか、これは夢だった。
これは記憶で、本物の母様はもう、、、。
途端に押し寄せてくる悲しさ。
そして溢れる涙。
追いかけていた足が止まる。
唇を噛み締め、涙を拭う。
止まってしまった足の太ももを何度か
拳で叩いて、また歩き出す。
再び母に追いつくと、たどり着いたのは桜の木の根元。
そこには、
私の記憶より幼い、少し不貞腐れたような表情の猩鬼がいた。
私が会った猩鬼より、優しい。
と言うかあの眼差し、、、。
つんけんしてるけど、
絶対母様に好意がある、、、。
自分の母ではあるけれど、可愛いすぎる
照れを隠すように顔を背ける猩鬼と
意味がわからずキョトンとする母。
一体何を見せられてるんだろ。。。
母が差し出した手を見て険しい顔になる猩鬼。
差し出された手を握り、母が目を瞑る。
しばらくすると握られた手から温かい光が漏れ、
そして消えた。
目を開け、手を離す母。
猩鬼の呪力を見ると、
心なしかよどんでいたものが、澄んでいる
ように見えた。
母が少し落ち込んだ顔を見せる。
が、それも一瞬、すぐに明るい顔に戻る。
そこで、記憶は終わった。
周りが白くぼやけ始める。
そして最後に残るは白い空間のみ。
その空間の中で、1つ目の呪物を触った時のように
帰りたい場所を思い描く。
私が帰りたい場所は、悟がいるところ。
すると目の前にゲートのようなものが現れる。
その向こうに見えるは、現実の世界。
私の体を抱き寄せる悟。
そのゲートを潜った途端、また暗転した。
うっすら目を開けば、ぼやける視界に、
大好きな人の顔。
にこっと笑って返事をすると、
悟は安堵した顔を見せた
いつもより一段と優しい声
悔しそうな顔をする悟が可愛い。
ふと、自分の顔に手をやる。
思い出して、また涙が溢れそうになる
私を抱きしめて、胸を貸してくれる。
しばらく無言で居た後。
悟の言葉に、気持ちが軽くなる。
心が癒されるのを感じる。
また涙が溢れる。
でもこれは悲しみだけじゃない。
嬉しさもある。
手を握って、どちらからともなく、
キスをする。
離れた唇から、じんわりと暖かさが広がり、
心が温まったように感じた。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!