第96話

なんで私が Aoi side
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2021/11/08 08:09 更新



大好きでした、とどう足掻こうが過去形になってしまったそれはもう戻らない。
会話を聞いていて気付いてしまった。

【私はただの都合の良い女だ】

ははは、と乾いた笑いをする余裕すらなかった。
なんやっけ、あなたちゃんがいなくなった寂しさを紛らわすための代理、やったっけ。
………そうなると、救われた理由も、愛されていた理由も彼女あってのものという意味になるらしい。
悔しさと、虚無に頭を殴られ続けてぼろり、と大きな涙を零した。
久しぶりに泣いたなぁと、これまでのことを思い出した。





両親共々クズで、救いようのない連中だった。
私が嫌いなお母さんと、私のことが大好きなお父さん。
両親の間にはお母さんの一方的な愛なんてなくて、言わばできちゃった婚、みたいなものだと私は予想する。

不味い飯を与えられて、食べなければ母からの罵詈雑言、そして暴力の嵐。
私にキレる母にキレる父は母へ暴力を振るう。さらにそれに腹を立てて父の外出中に暴力を振るわれる。それの繰り返しだった。
父の外出、なんて言っても会社なんて行ってなくて確かパチンコか競馬だった。
お金を稼ぐのは母だけで、流石に年齢的に働けなかった私は相変わらず罵詈雑言を浴びていた。

何よりも辛かったのはそれでも学校に通わなければいけなかったことだ。
ただ神様はそこまで私を嫌っていないらしく、小中高共に優しいクラスメイトの中心にいた。
朝起きるのも、勉強も大っ嫌いだったけど、友達だけが勇逸の生きる意味だと思っていた。


高校生にもなればバイトができるようになって、尚更家にいる時間が減った。
よかったと安心する反面、稼いでくるお金が少ないのだと何度も怒られた。
終いには何に影響されたのか父が私に暴力を振るうことに快楽を覚え始めたことだった。
母に暴力を振られる私も、自分によって傷つけられる私も、全部愛しているのだと告げられた。

次第に私は壊れていって、高校生のクラスでは、友達と仲良くしようとしなかった。
人間不信になって、全部怖くって、寂しかった。
たまに耳にする生徒会サマ達にすら、羨ましいと思ったがなによりもずっと、
生徒会サマ達の中心で笑っていた可愛らしい少女が妬ましくて仕方なかった。いいなぁと呟いても誰も拾ってくれない。

傷だらけの私なんて、と何度も自分を蔑んだ。


そして気づけば2年生の終わりも近づいてきて毎日ぼんやりと窓の外を見つめていた。
この自由な大空から解放してくださいと、窓に映る自分の痣を何度も撫でた。
そこで現れたのがいつぞや目で追っていた生徒会サマだった。


× × ×
俺らは、お前が側にいればそれでええから!



あんな風に笑ってそう言ってくれたのはあの中の誰だったかすらももう忘れてしまった。
よく考えたら意味深なようなそうでもないようなそんな台詞をいとも簡単に信じて私は堕ちていった。

なのに、いつからかまた生徒会と一緒にいた女の子、あなたちゃんが現れてしまった。
鬱は帰り道一緒に帰ろうとしてくれなかったし、訳もわからず睨まれて、気づけば迷惑ばかりかけられていた。

なのに、今ではみんなみんな殺されそうになった私が悪いと、そんなことを言った。
ただ今更感情を爆発させて、理不尽な理由で怒って、泣いただけで、また愛されて、また愛すなんて、なんて辛い手のひら返しだと、ヒリヒリと痛む喉からそう叫んだ。


相変わらず、彼女は怯えた瞳でこちらを見つめていた。
味方がいないのは、私の方だったのに。


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