第7話

安らかに眠らせて
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2025/02/18 02:07 更新
家入硝子
安静って言葉知ってる?
(なまえ)
あなた
おそらく…
家入硝子
五条にも説教したかったんだけどねー。
逃げ足だけは昔から早いんだから…
家入さんに怒られてる。
家入硝子
あなた。
顔を上げるとクマが目立つ家入さんの顔が見える。
家入硝子
アンタが昔っからイイコちゃんなの知ってるケド、
いい加減 ワガママ言ってみる練習しな。
(なまえ)
あなた
わ、がまま?
たくさん言ってると思うんだけど…
家入硝子
アンタの部屋のレイアウトは誰が立案したの?
(なまえ)
あなた
サト……五条先生…
いけない……先生だ……
昔の呼び方しちゃうな、はやく慣れないと…💦
家入硝子
その服、あと私服もろもろ誰が買ってくるの。
(なまえ)
あなた
ご、五条先生、あと冥冥さんが先生に頼まれてってくれたりとか…
家入硝子
自分の意思を持つこと自体 禁じられてたせいなのを考慮しても
あなたはワガママ言っていい。
むしろ五条とあなたを入れ替えてもいい。
先生と私を入れ替える?
家入硝子
名前を呼ばないようにしてるのも無理してんでしょ。
目覚めてまだ身体も心も上手くいってないんだから少しくらい息抜きしな。
坊を産むまでの数年、ずっと眠っていたらしい。
産んでから途端に止まっていた身体が成長を始めて

先輩たちとの顔合わせくらいでやっと手放しで歩けるようになったんだけど

数年間の社会情勢とか色々変わってて疲れてるらしい。

らしいっていうのは実感がないのと今まで何も言わない聞かない言われたことをただこなすだけの生活だったせい。
家入硝子
とりあえず、今日は絶対安静。
寮の部屋から出てくるんじゃないよ。
泥梨
泥梨
安静なら【屋敷】に戻れば良いだろう?
家入硝子
あれは休むのに不向きだよ。
身体が疲れてるのを続けたら【味】落ちるんじゃない?
泥梨
泥梨
致し方ない、さっさと行くぞ。
全く、人間の身体は軟弱すぎて困る。
(なまえ)
あなた
ま、待ってよ坊や……
ふわふわと宙に漂って先に帰ろうとする。
(なまえ)
あなた
し、失礼します……
慌てて振り向いて外に出る。
泥梨
泥梨
【門】ですぐ着くが?
(なまえ)
あなた
大丈夫…大丈夫……
黄泉
黄泉
主様💦
あ、これはダメなヤツだ。
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No side
泥梨
泥梨
全く貧弱すぎて話にならん。
九泉
九泉
主様……
白い髪をした女子生徒を取り囲むのは人ならざるもの。
九泉
九泉
主様のご容態が悪化した。
先程居た部屋に戻ると女子生徒に声をかけるトーンと全く異なる横柄な態度で話しかける。
家入硝子
やっぱりか……
で?どうするの?
分かっていたと言わんばかりの反応に眉間にシワが寄る幼子たち。
黄泉
黄泉
主様が倒れた原因は汝ら人間共だろうが!!
声を荒らげる白き髪の幼子を憐れむ感情を混じった瞳で見つめる似たような顔の黒い髪の幼子。
九泉
九泉
言っても無駄だ、黄泉。
黄泉
黄泉
しかしッ!
幼子たちの会話に耳を傾けていた訳では無いが、
完全に意識をしていなかった赤子は青年ほどに姿を変えていた。
泥梨
泥梨
安心しろ、〝まだ〟帰らん。
意味ありげな言葉を放ち、黒く重そうな門の中に姿を消した。
無に帰った場所をみて一言、
家入硝子
あんなトコに帰らないだけまだマシか……
校医の独り言は闇に消える。
【一方その頃】
パンダ
あり?1年ズは?
突然変異した呪骸、パンダが口を開く。
禪院真希
パシッた。
さも当然の口ぶりで話すのは呪術界の御三家と言われる禪院家の出身  禪院真希。
狗巻棘
おかか……
呆れたような声をあげるもその単語はおにぎりの具である。
呪言師の末裔 狗巻棘。
空気がピリつく瞬間、3人は固まる。
九泉
九泉
おい、黄泉。
やはり間違えているではないか。
黄泉
黄泉
おかしい……
白き髪の幼子は手を顎に置いて甚だ疑問だと言わんばかりの反応をする。
九泉
九泉
おかしいのは貴殿の過信極まりない言動だ。
呆れたような声を上げる黒き髪の幼子に声をかける。
禪院真希
おいお前ら、あなたはどうした。
声をかけられたことに嫌悪しているのか2人の対になる髪の幼子たちはメガネをかけたその奥の瞳を睨みつける。
黄泉
黄泉
汝らが知る必要は無い。
九泉
九泉
黄泉、構うな。
パンダ
あなたは今日休んでるハズだろ〜?
おつかいか〜?
狗巻棘
ツナツナ。
黄泉
黄泉
やかましい!!
九泉
九泉
今1番うるさいのは貴殿だ…
対として生まれているが性格はあまりに似つかない2つの呪霊をみて笑いをこらえる。
禪院真希
おつかい中に迷子ってんのか。
九泉
九泉
主様は冷たい飲み物をご所望なのだ。
案内しろ。
黄泉
黄泉
九泉!
九泉
九泉
一刻も早く手に入れて帰らなければ主様がお怒りになるぞ。
人の手を借りることを拒む白き幼子と

使えるものはとことん使う考え方をする黒き幼子。
禪院真希
へぇ〜、あなたって怒んだな。
九泉
九泉
主様は慈愛に満ちておられる。
そうそうお怒りにならん。
パンダ
さっきと言ってること真逆じゃね?
九泉
九泉
黄泉、着いてこないのであれば帰って主様や坊っちゃまの警護でも…
黒い幼子がそう振り返ろうとした瞬間だった。
黄泉
黄泉
人間は有象無象な存在だが…
その気配に覚えはない。
禪院真希
侵入者って言いてぇのか。
黄泉
黄泉
取るに足らない存在だ。
脅威になりうる者は数少ない。
パンダ
どっちだ〜?
九泉
九泉
特別に手を貸してやろう。
主様を待たせることなくお飲み物を届けることが出来るならな。
狗巻棘
しゃけ。
取引成立し、パンダに白い髪の女児が乗る。
九泉
九泉
ノロマな人間の足並みに合わせられん。
下僕しもべでも使うか。
たなびく霧の中、重厚感のある門が現れる。
九泉
九泉
乗ることを許可する、光栄に思うがいい。
禪院真希
そーかよ。
ことごとく下に見る少女に吐き捨てるように言いつつ出てきた獣のような何かに跨る。

そして目的の場所まで颯爽と空を切るように走り抜ける。
伏黒恵
なんで東京コッチにいるんですか、禪院先輩。
禪院真依
ヤダなぁ伏黒くん。
それじゃあ真希と区別がつかないわ。
釘崎野薔薇
雰囲気似てるわね、姉妹きょうだい
伏黒恵
双子のな。
東堂葵
伏黒……とか言ったか?
どんな女がタイプだ。
唐突に聞かれた質問に唖然とする。
伏黒恵
なんで初対面のアンタに女の趣味を話さなきゃいけないんですか?
釘崎野薔薇
そうよ、ムッツリにはハードル高いわよ。
伏黒恵
オマエは黙ってろ……
ただでさえ意味わかんねー状況が余計ややこしくなる。
泥梨
泥梨
人間とは実に愚かで滑稽よな。
唐突に聞こえた声と共にその場に居た若い呪術師に緊張感が走る。
泥梨
泥梨
あのわらべは、ろくに使いも出来んのか。
伏黒恵
なっ……!
天井をゆうに超える門は実在しないため、天井を突き破りながらゆっくりと門が開く。
泥梨
泥梨
身体動かぬノロマはそのまま横たわっておれ。
門の中に叫びながら小さい赤子は出てくる。
伏黒恵
(糸…?いや、紐か?)
赤子の手首には光る紐が門の奥へと繋がっている。
禪院真依
白銀ちゃんとこのおぼっちゃま、1人でどうされたの?
皮肉をこめた言葉に返す言葉も視線も赤子には不要だった。
東堂葵
さて、赤子でもいいぞ。好きな女のタイプを聞かせろ。
泥梨
泥梨
人間のような下等種に好みなぞあるものか。
東堂葵
喰らう好みくらいはあるだろう。
泥梨
泥梨
フッ。
鼻で嘲笑う赤子は1層緊張感を味わう。
泥梨
泥梨
我が母以外の下等種に慈悲すら割く必要などない。
だが、まあ門に入り堕ちた命全てが我が栄養ゆえ選り好みする気も起きん。
釘崎野薔薇
門って実際なんなの?
伏黒恵
機密事項だから知らん。
東堂葵
そうか、赤子は白銀一筋なのだな。
泥梨
泥梨
俗な言い方が気に入らんが正すのさえ面倒臭いな。
東堂葵
さて伏黒のタイプはなんなんだ!
本題だとでも言うように大きく構える。
伏黒恵
その人に揺るがない人間性があるならそれ以上は何も求めません。
女性陣の好感はあがったが、聞いてきた東堂本人はガッカリとした表情だった。
そして東堂と伏黒の近接戦が始まってしまった。
と誰もが思った。
九泉
九泉
なぜ……
黄泉
黄泉
坊っちゃま!!
パンダ
なぁぁあにしてんのぉぉお!
白黒の巨体が空から振り落ちた。
黄泉
黄泉
も、申し訳っ
泥梨
泥梨
くだらない言い訳など聞きたくない。
耳が穢れる。
九泉
九泉
申し訳ございません。
床に綺麗な土下座をする白黒の女児。
たるんでいた紐がピンと張る。
泥梨
泥梨
まだ咎めてなかろうが!
門の奥へまた叫ぶ。
黄泉
黄泉
主様っ!
門の奥へと消える白い女児。
禪院真希
うちのパシリになにしてんだよ。
禪院真依
かわいがってるだけよ。言いがかりつけないでくれる?
九泉
九泉
坊っちゃまは何がご所望ですか?
泥梨
泥梨
果実の冷えた飲み物、気に入った。
門から外界に繋がる紐か張ったりたるんだりとする中で黒い女児は嬉しそうに笑う。
九泉
九泉
ご安心ください、主様っ!
九泉は主様の所作を覚えております!
釘崎野薔薇
白銀、飲み物買って欲しいんなら連絡しなさいよ。
すぐ買ってあげるわよ。
九泉
九泉
献上するにしてもなんだその態度は。
先ほどまでの笑顔とは一転し険しい顔をする。
それと同時に茶髪の生徒に通知音が響く。
釘崎野薔薇
リンゴジュース、緑茶500 5本!!?
どんだけ飲むんだよ!
禪院真希
なんだ〜?
あなたなんか飲むのか?
九泉
九泉
主様の保護という大役をもらっているくせに何もしない人間からこのような板を渡された。
禪院真希
悟の?なんだ?
釘崎野薔薇
ぶ、ブラックカード……!
九泉
九泉
と、主様から銭をいくつか賜った。
禪院真希
おー、はじめておつかい みてぇだな。
九泉
九泉
今、我を見下したか?
禪院真希
してねーよ。
泥梨
泥梨
早くしろ、母上が喉の乾きで苦しんでも良いのか。
九泉
九泉
も、申し訳、ございま!
慌てて小銭がバラける。
禪院真希
ボウズ、急がせるなよ…
カワイソウだろ。
泥梨
泥梨
ふん。
全く関係ないと言わんばかりに目線を逸らす。
禪院真希
パンダー、棘ー?
狗巻棘
明太子っ!
いつの間にか京都からの来客は姿を消した。
禪院真希
あなたとこ見舞い行ってくる。
狗巻棘
ツナ。
パンダ
土産持っていこーぜ。
狗巻棘
しゃけしゃけ。
禪院真希
寮だろ、居るの。
パンダ
なーんだ、アッチかと思ったな。
狗巻棘
こんぶ。
目線を合わせ頷く。
釘崎野薔薇
アッチ?
パンダ
あなたが高専入る前まで居たとこだ、まあ今は高専にいるし住んでるし気にすんな。
泥梨
泥梨
人間共、来てもいいが騒がしいのは好まん。
九泉
九泉
せいぜい主様に気に入ってもらえるものを献上するのだな!
2つの小さな呪霊は大きな門に帰って行った。
釘崎野薔薇
なんなの、アイツら……
禪院真希
うしっ!行くぞ。
パンダ
なんか買ってやろうぜ。
禪院真希
号泣すんじゃねー?
笑いながら冗談を言う先輩に首を傾げる後輩2人。
禪院真希
私もあなたも高専に入るまでド屑共に良いようにされてたから知らねぇんだよ。
まああなたは私よりもエグい仕打ちばっかだけどな。
伏黒恵
五条先生からある程度は聞いてますけど…
パンダ
小学生の頃にはじめて空を見て
あなたは悟の目と同じって言ったらしいぞ。
釘崎野薔薇
は……?
伏黒恵
小学生で、はじめて空……?
禪院真希
行く前にお参りしていこうぜ、恵と野薔薇 その様子じゃ知らねぇだろ。
同級生2人はまだ彼女の人生がどれほどのものか知る由もない。


今はただ
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
(なまえ)
あなた
…ありがとう。
九泉
九泉
体調の方は……
(なまえ)
あなた
大丈夫、ありがとう……
泥梨
泥梨
さっさと寝ろ。
(なまえ)
あなた
うん……
電池が切れたように目を閉じ闇に飲まれる彼女も

また、彼女の同級生が今まさに過去に触れることを知らない。

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