【No SIDE】
風もないのに、空気が震えた。
苔むした石塔の中、その中に置かれた小さな箱…もといスマホが、かすかな光を帯びる。
低くうめくような声が聞こえた。
同時に、光の中から2つの影が押し出されるように現れる。
一人は、桃色の髪の青年___さとみ。
もう一人は、その隣で目をこすりながらよろよろ立ち上がる___ころんだった。
2人は辺りを見渡す。
そこで、彼らが眠っていた場所の隣に、お墓があるのが見えた。
墓石に、名前が刻まれている。
ころんは墓石を揺さぶろうとする。
さとみが慌てて止め、肩を掴む。
2人はしばし黙って墓の前に立ち尽くす。
そして、どちらともなく、微かに笑った。
さとみは呆れたように肩を落とす。
爽やかな夏風が通り抜ける。
何処かで、蝉が鳴き出した。
2人の視線がふと墓標へと移る。
その声が空気に溶ける。
ふいに、木々を渡る風がざわめいた。
葉擦れの音の中に、懐かしい笑い声が確かに混じった気がした。
2人はびっくりしたかのように顔を見合わせる。
そしてそっと笑いあった。
眩しい光が、雨に洗われたばかりの地面をキラキラと照らす。
2人の歩みは、その光の中へと静かに溶けていった。
End.
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約1年間、ご愛読頂きありがとうございました!
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!