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第32話

エピローグ
545
2025/08/22 07:00 更新
【No SIDE】






風もないのに、空気が震えた。





苔むした石塔の中、その中に置かれた小さな箱…もといスマホが、かすかな光を帯びる。






…っ、…う…



低くうめくような声が聞こえた。






同時に、光の中から2つの影が押し出されるように現れる。







一人は、桃色の髪の青年___さとみ。







もう一人は、その隣で目をこすりながらよろよろ立ち上がる___ころんだった。







ん…え、あれ?
封印解けた?
あー、そうらしい?
てかどこだよ此処




2人は辺りを見渡す。





そこで、彼らが眠っていた場所の隣に、お墓があるのが見えた。





墓石に、名前が刻まれている。





ななもり、ジェル、莉犬、るぅと____
え、ちょっと、皆死んだみたいになってんじゃん、?!
笑えないんだけど、




ころんは墓石を揺さぶろうとする。




馬鹿、やめろって…倒れるだろ




さとみが慌てて止め、肩を掴む。




いいか、俺らが封印されてたのは、恐らく半世紀以上の間だ
もう、誰も生きちゃいねぇよ
…そっか
そう、だよね




2人はしばし黙って墓の前に立ち尽くす。





そして、どちらともなく、微かに笑った。





…ねぇ、お腹すいた
は?今言うかそれ
いやだって半世紀…500年だよ!?
絶対美味しいもん出来てるでしょ!!
後ゲームもしたい!
500年分のゲーム溜まってるし、最新機種も...!!
はぁ…相変わらずだな…



さとみは呆れたように肩を落とす。



封印中に妖をポケモンみたいにして戦わせてた奴には言われたくないね
いやいや、あれ作戦だから
同族同士で戦わせて、封印解けた時に妖が放出されないようにする合理的な作戦
合理的?!絶対遊んでたでしょ!
...まぁ、ちょっと楽しかったわ
ちょっとどころじゃなでしょ
なんだっけ?
『ポケモントレーナー さとみは ギャラドス(的な妖)を くりだした!』だっけw?
無駄にいい声で言ってたの聞こえてたから!
だって暇じゃん
後半の何百年かは寝て過ごしてたし
ぐぬ...まぁそうだけどさ




爽やかな夏風が通り抜ける。





何処かで、蝉が鳴き出した。





2人の視線がふと墓標へと移る。









...ただいま
お望み通り、帰ってきたぞ





その声が空気に溶ける。





ふいに、木々を渡る風がざわめいた。






葉擦れの音の中に、懐かしい笑い声が確かに混じった気がした。






2人はびっくりしたかのように顔を見合わせる。






そしてそっと笑いあった。







行こうか






眩しい光が、雨に洗われたばかりの地面をキラキラと照らす。






2人の歩みは、その光の中へと静かに溶けていった。












End.






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約1年間、ご愛読頂きありがとうございました!



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