第7話

7. 瀬奈の本当の気持ち
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2021/04/24 04:00 更新
三崎 瀬奈
三崎 瀬奈
すっかり暗くなっちゃったね、外。
一宮 彼方
一宮 彼方
だから一宮の車を呼ぼうと言っただろう。
三崎 瀬奈
三崎 瀬奈
それは恥ずかしいから良いよ。
夕食を食べ、帰路を辿る頃になると既に外は真っ暗で見えるのは月の薄明かりだけだった。流石にこの時間帯を一人で歩くのは危ないから、と彼方くんが私のアパートまで付いてきてくれる事になり、少し気まずい空気の中、夜道を歩いている私たち。

先程のことがあったからか、どこか話しづらいのは彼も同じらしい。
一宮 彼方
一宮 彼方
…なあ瀬奈、牛肉は好きか?
三崎 瀬奈
三崎 瀬奈
は、はい?
あくまで真剣なトーンで彼がそう言うものだから、思わず間抜けな声が出てしまう。そんな私に気付いているのかいないのか、顎に手を当て彼方くんはまじまじと私を見つめ直して口を開いた。
一宮 彼方
一宮 彼方
いや、三崎家のカレーは豚肉だっただろう? 我が家のシェフが作るのはいつも牛肉だからか、今日は新鮮だった。
一宮 彼方
一宮 彼方
今度は瀬奈が我が家に来て一宮流のカレーを食べてほしいと思ってな。
三崎 瀬奈
三崎 瀬奈
べ、別にそれくらいなら良いけど…
全く、彼方くんはすっかりいつもの調子らしい。こんな彼の前で先程情けないくらいに泣いてしまったことも忘れて、思わずくくっと笑みが零れた。

__いや、もしかしてだけど。一通り笑ったところでふと思った。わざと、明るく振る舞っていてくれているんだろうか。空気の読めない彼方くんの癖に、無理して変な話題を持ち出すことで私の気まずい気持ちを楽にさせようとして?
三崎 瀬奈
三崎 瀬奈
彼方くんって、本当によく分からない人だね。
最初は傲慢で偉そうで、いかにもなお金持ちのお坊ちゃんって感じで、嫌な奴だとしか思ってなかった。でも、真摯に謝罪してきて、友達になろうと言ってくれたあの日からだろうか。

実は誰よりも素直で真面目で努力家で、時々空気が読めなくて残念なイケメンで……でも優しい、本当の彼方くんに触れて、どんどん彼のペースに巻き込まれていって。それは、未央という大事な親友相手にさえ本当の自分を見せることが出来なかった臆病な私にとって、改革の大きな風だった。
一宮 彼方
一宮 彼方
…何だ、その言い草は。
お前だって俺にだけ冷たい癖に、と彼方くんが口を尖らせ拗ねた真似をする。
けれどそれも一瞬で、次の瞬間にはその横顔は何かを決意したような強い意思のあるものに変わっていた。
一宮 彼方
一宮 彼方
今日、三崎家に来て本当に良かった。
一宮 彼方
一宮 彼方
あの家は…俺が昔ずっと欲していた家族像そのものだったから。
叶わない夢と分かっていても、心の何処かで家族の愛を欲していた。彼方くんのそんな独白は、みるみるうちに白い息となって寒空の中へ消えて行った。
一宮 彼方
一宮 彼方
瀬奈も俺の家のことは知っていると思うが…こんな俺もいつか家を継がないといけない時が来る。
一宮 彼方
一宮 彼方
その時は、瀬奈のような女性と三崎家のような温かい家庭を作りたいと思ったんだ。
彼方くんの頬が緩み、珍しく子供っぽいあどけなく無邪気な表情に変わる。
それとは正反対に私の顔はというと、真っ赤な林檎のように耳まで染まっていた。
三崎 瀬奈
三崎 瀬奈
そ、そっか。頑張ってね。
そんなの、そんなの。
どうして私に言うんだか。これだから彼方くんは分からない。天然なのか、計算なのか……後者は無いのだろうけれど、今はどちらでもあってほしくない。

私のような人と、私の実家のような家庭を作りたいなんて。
プ、プロポーズみたいなものじゃないのか。これは私の恋愛経験が浅いから無駄にドキドキさせられてしまうだけ?
ああ、もう。
彼方くんはただの友達、なんだから───





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二科 未央
二科 未央
瀬奈…?それに…あれは、彼方くん…なの?
この時の私はまだ、自分のアパートのすぐ近くに親友の__彼方くんを誰より慕う大切な友達の実家があるなんて、気付いてもいなかったのだ。

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