急遽わたしがお邪魔することになったけど、
どうやら他の子達は眠っていたみたい。
今日は一期さんは夜戦でいないんだっけ。
薬研さんが用意してくれたお布団に、
ゆっくり寝かせて貰えた。
二振りとも優しいなぁ…
初めてこの人を見た時、すごく衝撃的
だったのを覚えている。
ボクがどうしても守りたくて…でも
守れなかったあの人に、そっくりで。
___大好きだったあの人に、そっくりで。
もう、大切な人は作らないって決めたのに。
失くした時の寂しさが、どうしようもないほど
辛いって、知ってたのに。
あなたはボクのところへ、もう一度姿を
見せてくれた。
いつだって優しくて、ボクを包み込んでくれて
手を繋いでくれて…
そんなの、まるで都合のいい夢みたい。
ボクの隣で寝息を立てるあるじさん。
可愛くて、優しくて、でも弱いあるじさん。
ボクが守ってあげなくちゃ。
人間は脆くて、すぐ消えちゃうから。
もう、この手は離さないって決めたから。
あるじさんの辛そうな顔なんて、見たくないし
今世こそは、必ず守んなきゃって思うから。
痛みとか、辛いとか、そんなの何もない場所に
ボクなら連れて行ってあげれるから。
___バチン、と高い音が鳴った。
直後、右の頬が悲鳴をあげる。
…ぶたれた。誰に? …あの刀しかいないか。
はぁ、とため息が溢れる。
そっとあるじさんの手を離した。
薬研が自分の本体に目を移す。
わざとらしくため息をついたボクは、
とりあえず説得しようと唇を開いた。
いち兄はボクたちとは境遇が違う。
それが今のあるじさんじゃなくて、
前のあるじさんとのだとしても。
普通に顕現、鍛刀して迎えられたわけ
じゃないいち兄だから、誰よりもボクの
アイデアに乗ってくれるだろう。
でも薬研は首を振る。
薬研があるじさんを抱え、粟田口部屋を
出ようとする。
…ボクってば優しい。見送ってあげるなんて。
攫ってから騒がれるのはまあご自由にって
感じだけど、攫ってもいないのに騒がれるのは
ボクは完全悪者になっちゃうからね。
…今日は大人しく諦めるとしようかな。
毎日健気に右手を握ってさぁ…
攫うには十分すぎるくらいの神気を注いで。
…でも、この計画を諦めたわけじゃない。
だって、どう考えたって現実より、
神域の方が過ごしやすいでしょ?
ボクはあるじさんに良かれと思ってやってる
ことなのにさ…うまくいかないもんだなぁ。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!