第40話

参拾質¦乱藤四郎という刀 (注意)
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2026/02/28 08:20 更新





  急遽わたしがお邪魔することになったけど、
  どうやら他の子達は眠っていたみたい。
  今日は一期さんは夜戦でいないんだっけ。
  薬研さんが用意してくれたお布団に、
  ゆっくり寝かせて貰えた。
  二振りとも優しいなぁ…




  初めてこの人を見た時、すごく衝撃的
  だったのを覚えている。
  ボクがどうしても守りたくて…でも
  守れなかったあの人に、そっくりで。
  ___大好きだったあの人に、そっくりで。


 乱藤四郎
 あるじさーん! おでかけしよっ♩    
あなた
 はーい、何か欲しいものあるの?    
 乱藤四郎
 んーん、あるじさんと一緒にいたい    
 だけだよ


  もう、大切な人は作らないって決めたのに。
  失くした時の寂しさが、どうしようもないほど
  辛いって、知ってたのに。
  あなたはボクのところへ、もう一度姿を
  見せてくれた。
  いつだって優しくて、ボクを包み込んでくれて
  手を繋いでくれて…
  そんなの、まるで都合のいい夢みたい。


 乱藤四郎
 でももう、夢じゃないんだね    


  ボクの隣で寝息を立てるあるじさん。
  可愛くて、優しくて、でも弱いあるじさん。
  ボクが守ってあげなくちゃ。
  人間は脆くて、すぐ消えちゃうから。
  もう、この手は離さないって決めたから。
  あるじさんの辛そうな顔なんて、見たくないし
  今世こそは、必ず守んなきゃって思うから。
  痛みとか、辛いとか、そんなの何もない場所に
  ボクなら連れて行ってあげれるから。





  ___バチン、と高い音が鳴った。
  直後、右の頬が悲鳴をあげる。
  …ぶたれた。誰に? …あの刀しかいないか。


 乱藤四郎
 …なぁんだ、ボクの味方をして    
 くれないの?





 乱藤四郎
 …薬研    
 薬研藤四郎
 俺がいつ味方するって言った?    
 乱藤四郎
 …そうだね、言ってないね    


  はぁ、とため息が溢れる。
  そっとあるじさんの手を離した。


 乱藤四郎
 ここで騒ぎを起こしたら、みーんな    
 起きちゃうかもね?
 薬研藤四郎
 別に構わん。乱こそ、自分の立場を    
 弁えたらどうだ?


  薬研が自分の本体に目を移す。
  わざとらしくため息をついたボクは、
  とりあえず説得しようと唇を開いた。


 乱藤四郎
 あのね、いい提案があるの    
 乱藤四郎
 ボクは別に、あるじさんを独り占め    
 しようだなんて思ってないよ
 薬研藤四郎
 どういう意味だ?    
 乱藤四郎
 最初は独り占めしようって思ってた。
 だって、ボクだけ見て、ボクだけを
 褒めて欲しかったから


 乱藤四郎
 でもね、ボク、兄弟のことも大好き
 だから、ちょっとなら譲ってあげよう
 って思ったの


 乱藤四郎
 ねえ、粟田口で協力しようよ。
 そして、みんなとあるじさんで一緒に
 暮らそうよ。そしたら皆幸せでしょ?
 乱藤四郎
 そしたら恨みっこなしじゃん
 もちろんボクも幸せだし、薬研も…
 そうでしょ?


 薬研藤四郎
 …さぁどうだか。言っとくがいち兄は    
 きっと幸せじゃないだろうよ
 乱藤四郎
 へえどうして? いち兄は特に
 あるじさんを気にかけてるみたい
 だったし、自分の目の届く範囲に
 あるじさんがいれば、幸せだと思う
 けどなー?


  いち兄はボクたちとは境遇が違う。
  それが今のあるじさんじゃなくて、
  前のあるじさんとのだとしても。
  普通に顕現、鍛刀して迎えられたわけ
  じゃないいち兄だから、誰よりもボクの
  アイデアに乗ってくれるだろう。
  でも薬研は首を振る。


 薬研藤四郎
 とにかく、お前が大将を召し上げたい    
 って思っていることはよくわかった
 薬研藤四郎
 それが許されることだと思って    
 言ってるのか?
 乱藤四郎
 別に知らないよ。先延ばしに
 してたら、どうせ他の刀剣男士に
 取られちゃっておしまいだろうし
 乱藤四郎
 だったら今のうちにボクたちの    
 ものにしちゃえばいいじゃん
 薬研藤四郎
 お前が大将に一歩でも近づいてみろ    
 兄弟だろうが関係なく俺はやるぜ?


 乱藤四郎
 …あーあ、残念! 薬研はもうちょっと    
 賢いって思ってたんだけどなぁ


  薬研があるじさんを抱え、粟田口部屋を
  出ようとする。
  …ボクってば優しい。見送ってあげるなんて。
  攫ってから騒がれるのはまあご自由にって
  感じだけど、攫ってもいないのに騒がれるのは
  ボクは完全悪者になっちゃうからね。
  …今日は大人しく諦めるとしようかな。


 乱藤四郎
 せっかく今日が攫うのにちょーど    
 よかったのに!


  毎日健気に右手を握ってさぁ…
  攫うには十分すぎるくらいの神気を注いで。
  …でも、この計画を諦めたわけじゃない。
  だって、どう考えたって現実より、
  神域の方が過ごしやすいでしょ?
  ボクはあるじさんに良かれと思ってやってる
  ことなのにさ…うまくいかないもんだなぁ。


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