第39話

無邪気な深淵とシュークリーム
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2024/04/28 22:12 更新
 ただし――と謎の声は続けた。
謎の声
私たちはお前をこれからも追い続けるだろう、マッシュ・バーンデッドよ
マッシュ・バーンデッド
 マッシュは慌てる。
マッシュ・バーンデッド
なんで僕だけ……
謎の声
その理由も含めいずれ分かるだろう
 謎の声はそう言って小さく笑った。
謎の声
まあいい、今回は私たちの完敗だ。せっかく魔法学校の秘密の部屋なるものを乗っ取って、入念に準備をしたというのに……まさか生徒に阻まれるとはな
マッシュ・バーンデッド
……負けを素直に認めることができるってのも、それはその人の良いところだと僕は思いますよ
 ファーンとした顔で言ってのけたマッシュ。そこにすかさず入るは、フィンのツッコミ。
フィン・エイムズ
いやっ……確かにそうだけれども!
それ絶対、今言う空気じゃねぇぇぇえ!
レモン・アーヴィン
そういう空気読めないところも含めて、私は好きですよ、マッシュくん
ランス・クラウン
いや誰も聞いてねぇから
レモン・アーヴィン
なんですか、ランスくん
フィン・エイムズ
目がっ……レモンちゃん、目がイッちゃってるよぉぉ
 というやり取りをフィンたちが小声でしている間に。
マッシュ・バーンデッド
まあ、じゃあ、イノセント・ゼロの皆さん。今回は僕たちの勝ちってことで
 マッシュが話をまとめようとしていた。片手を天井に向けて差し出すマッシュ。
マッシュ・バーンデッド
ご褒美のシュークリーム、ください
ラブ・キュート
いや……まだ諦めてなかったの
マッシュ・バーンデッド
諦めません、食うまでは
ドット・バレット
「欲しがりません、勝つまでは」みたいに言うなや……
 ラブとドットのツッコミが虚空に響いたあとに。
謎の声
……わかった。約束通り渡そう
アベル・ウォーカー
……約束、守るのか
アビス・レイザー
意外と律儀ですね
レイン・エイムズ
いや、こいつの場合……シュークリームを渡さないと何かヤバいことになりそうだからだと思う
 レインの冷静に分析に、アベルとアビスは納得したように頷く。確かに、マッシュが暴れるなんてことがあれば、どうなることか……予想もつかない。
謎の声
この部屋から脱出したところに置いておく。
 謎の声はそう言った。
ランス・クラウン
じゃあ、宝箱開けるぞ
 ランスが手に持った宝箱の蓋を開けた。その途端、そこから眩しい白い光が漏れ出す。
フィン・エイムズ
わっ……眩しい
 思わず目を瞑る。マッシュたちを、転送魔法の炎が包み込んだ。
謎の声
では、また会おう。マッシュよ
 最後にそれが聞こえたあと――――訪れる静寂。
 マッシュたちは、恐る恐る目を開けた。
マッシュ・バーンデッド
……あ
 そこは。
マッシュ・バーンデッド
戻ってる
 もとの学校の廊下だった。薄暗いダンジョンではなく、陽の光が差し込む明るい空間。その差に思わず目が眩む。
フィン・エイムズ
……ほんとだ
 フィンも目を開く。松明も大理石の床も無い、謎の声も響かない、敵もいない――――平和な世界。
ランス・クラウン
とりあえず脱出できたから……よかったのか?
レモン・アーヴィン
ですね! 良かったですよぉ……みなさん無事で
ドット・バレット
だな。……ん?
 ドットが何かを見つけたようだ。
ドット・バレット
……これは!
 皆が、ドットの視線の先に目を向ける。

 そこにあったのは……。

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