あなたが一課にやって来た翌朝、

高木君は元気な声で挨拶してきた。

世間話をしていると、あなたが欠伸をしながら始業時間ギリギリにやって来た。

彼女が言えば、ポツポツと同じように返す人もいる。

私は教育係として「おはよう」と返すのと同時に、
注意の意も込めてジトっと睨んだ。

私よりも少し背の低い彼女の頭に手を乗せた。

捜査一課の強行犯係には今まで私しか女性がいなかったから、なんだか妹分が出来たみたいで嬉しかった。


柔らかい天然パーマの髪を撫でていたら、
突然、後ろにいた高木君が驚いたような声を上げた。

お互いに下の名前で呼び合ったことから、

高木君の言葉が私ではなく彼女に向けられているのだと気づいた。


驚いた様子の高木君はあなたに詰め寄った。

声を荒げて否定するあなたと、驚きのあまり若干早口になっている高木君を見ながら私はポカンとしてしまった。

ていうか松田君、ポルシェをガルウイングにしようとしたことあるんだ……。

つまり、彼女は高木君のことを私よりずっと前から知っていたんだ。


そう思うと、何故か胸がモヤモヤした。

初めての感覚に少し驚いたが、顔に出さないよう必死に自分を落ち着かせた。

あなたに声をかけられ我に返った。

朝からぼーっとするなんて、ダラしないわ。
そう自分に言い聞かせ、気合を入れるために頬を両手で叩いた。

瞑っていた目を開くと、

心配そうな表情をこちらに向ける高木君とあなたの姿が目に入った。

そう言えば二人は更に心配そうな顔をしてしまったので、私は焦ってこう付け加えた。

再び二人の顔を見ると、なんだか兄妹みたいだなと思ってしまった。

そう思ってしまうくらい二人が似ていたからだ。

そう割り切り、あまり深く考えないことにした。