第3話

初めてのゆうごはん
204
2025/10/26 04:35 更新
対異特務小隊
帝国陸軍の中でも飛び抜けて異質なその隊は帝国内で起こる
怪異に関係するあらゆる案件に設立された隊員はほぼ全員が
見鬼の才ー怪異を見ることのできる力あるいはそれ以上の人
智を超えた能力を操る異能者で構成されているもともと見鬼の才がある者や異能者は数少ないため一般にはあまり知られていない部署でもあったそんな特異な隊を率いる久堂清霞小佐は現在書類の処理に追われてる
久堂清霞
久堂清霞
☁集中できていないな原因はわかっているが…
こんな何が入っているかわからないものは食えん
ゆり江
ゆり江
坊ちゃん何もあんな言い方をすることはないでしょうにあなたさまは一生懸命お食事の用意をなさっておいでしたゆり江にはあなたさまが毒など入れるような方には思えません
久堂清霞
久堂清霞
会ったばかりの信頼関係もなど人間の作ったものなど口にできないのは当然だろう
ましてや斎森家の娘あの家なら私を葬り久堂家の地位にとって代わろうと画策していて不思議はない
ゆり江
ゆり江
あなたさまは今までいらした方々とはどこか違います
この質素な家を見て嫌悪し帰る者や怒り出す者もいた
ひたすら私に媚びを売り裏でゆり江を虐げる者もいた
食事が気に入らない部屋も変えろと我がままを言う者
もいた名家の当主ありながらこのような場所で暮らす
のは一般的ではないという自覚はあるだが相手を理解
しようとせず己の意見を通そうとする女はまっぴらだ
誇り高いのも気位が高いのも否定するつもりはない
しかし自惚れるなと思いいつも破談になる
ゆり江
ゆり江
ゆり江はうれしかったのですよ
気を遣って仕事を手伝ってくださった方は初めてでしたから
久堂清霞
久堂清霞
…そうか
(なまえ)
あなた
いってらっしゃいませ
無表情に戻っている…か
久堂清霞
久堂清霞
いってくる
まるで使用人のようだ普通に名家の令嬢として育てられたのならあのようにはなるまい今回も早々追い出すつもりだったが…斎森家の娘は結婚相手としてかなり良い条件がそろっているしばらく様子を見るか
(なまえ)
あなた
おかえりなさいませ旦那さま
久堂清霞
久堂清霞
…ただいま
(なまえ)
あなた
あの旦那さま今朝は申し訳ありませんでした
旦那さまのお立場であれば信用できない者の
作ったものなど口にできるはずもないと…
少し考えればわかることでしたのに出過ぎた真似をしました夕食はすべてゆり江さんが作っていかれて配膳したものをそのままご用意しています誓って毒など入れておりません
どうかお許しください
久堂清霞
久堂清霞
別にお前を本気で疑ったわけではない
ただ勝手に警戒して警告しただけー
久堂清霞
久堂清霞
こちらも言い方がきつかった
(なまえ)
あなた
いえ!とんでもありませんわたしがいけなかったのですから
威圧しているつもりはなかったのだが…
しかしーあらためて見るととても名家の令嬢とは思えないな
古着とも呼べぬ粗末な着物ひどく痩せ細った首許や手首
あかぎれだらけの白い指先傷んで艶もない髪都会に住む娘ならば庶民だってもう少し良い格好をしている
久堂清霞
久堂清霞
お前食事はもうとったのか?
(なまえ)
あなた
え…えっとわたしは…
とったならとったと言えばいいだけの話そう言わないということはー
久堂清霞
久堂清霞
食べていないのか
家族やそれを準する関係の人間同士でともに食事をするのは
常識…と認識していたのだが
久堂清霞
久堂清霞
なぜ自分の分を用意しない
それは本格的におかしな娘が来てしまった
旦那さまにため息を吐かれてしまった…
いよいよ追い出されるかもしれない追い出されたらもう
帰る場所のない身住み込みで働けるところを探すかあるいはー
久堂清霞
久堂清霞
ゆり江はお前の食事を用意しなかったのか
(なまえ)
あなた
違うんですあの…食欲がなくてわたしがゆり江さんにいらないと言ったのです
久堂清霞
久堂清霞
食欲が?具合でも悪いのか
(なまえ)
あなた
いえ大したことではたまにあるんです
食欲がではなく食事を抜かざるをえなかったことが…
久堂清霞
久堂清霞
まあいいだろう着替えてくる
冷えているな
(なまえ)
あなた
申し訳ありません
久堂清霞
久堂清霞
お前は息をするように謝るのだななぜだ?
すぐに謝ってしまうのは実家でそうしてきたからー
継母や異母妹に目をつけられ文句を言われ初めたら
謝罪以外口にすることを許されなかった即座に謝らなければ
嫌がらせや罵倒がひどくなるので反射的に謝罪が口につくようになってしまったそんなことを話せるわけがないここにいなくても継母や異母妹…父でさえも恐ろしい
久堂清霞
久堂清霞
言わない、か
(なまえ)
あなた
申し訳ー
久堂清霞
久堂清霞
謝るなもう謝るな
謝罪はしすぎると軽くなる
正直怖いにこりともせず今朝の冷たい顔と声も思い出すと
震えあがりそうになるあの美貌が余計に恐怖を煽るけれど
わたしの食事を気にするということは今のところ追い出そう
としているわけではないのだろう…
ゆり江
ゆり江
坊ちゃんは本当は優しいお方ですよ
冷たいだけの人でもない…と少しわかった
久堂清霞
久堂清霞
ごちそうさま
(なまえ)
あなた
あのお風呂をすぐに沸かします
久堂清霞
久堂清霞
自分でやる
(なまえ)
あなた
ですが
久堂清霞
久堂清霞
うちの風呂は異能を使って沸かせる仕組みになっている
私以外が使うのは難しい
発火能力ーーわたしには縁のないもの
久堂清霞
久堂清霞
どうした?
(なまえ)
あなた
な なんでもありません
わたしに異能かないことをおそらく旦那さまはご存じない
やってくる妻候補にいちいち興味を持ってはいないようだし
私が斎森家の娘という時点で異能ないし見鬼の才を持っていると思ったのだろうふさわしくないわたしは久堂家の当主の妻にふさわしくない妻に似合うのは香耶のように何でも持っている女性なのだろう

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