第3話

【 弐 】
2,083
2025/03/10 14:00 更新


  あなた sitenn


  諏訪 さんに指定された丘の上に立ち 、地獄と化した鎌倉を見下ろす 。
 
 刀に人の生首を突き刺して楽しそうにする武士や 、金を漁る武士…
 
 逃げ出そうとした子供が捕まえ 、生きたまま吊るし矢のまとにしている武士までいる 。


あなた
 
 子供の断末魔が鼓膜を突き刺し 、思わず顔を歪めた 。
 
 呑気に笑っている武士達には 、視えていないのだろう 。
 
 ヤツらの瞳に映っているのは 、人間の亡き骸だけ 。
 
 私の瞳に映るのは 、ヤツらを今にも襲い掛かりそうな無数の呪霊 。
 
 強いのははチラホラいるが 、ほとんど二級程度だろう 。


あなた
 …昔の日本って 、馬鹿だよな 。 


 そんなことをポツリと呟き 、ゴウゴウと燃え上がる屋敷を見つめた 。







 …ふと 、後方から茂みが揺れる音がし 、反射的に振り返る 。
 
 そこには 、先月の少年と 諏訪 さん 、そして 雫 がいた 。


あなた
 …随分と遅かったようで 。 
 
諏訪 頼重
 えぇ 、少々…… 


  諏訪 さんは視線を少年へ向ける 。
 
 少年は絶望の表情で鎌倉を見下ろし 、炎の光で顔が照らされていた 。
 
 少年が着ている服の紋章… 北条 家の家紋 。


あなた
( …この子 、 北条 の生き残りか )


 確か……“ 北条時行 ”だったっけな 。


諏訪 頼重
 仇を討ちましょう 時行 様! 
 
諏訪 頼重
 この 頼重 が必ずや力になりまする ! 
 
あなた
( やめてあげて…… )


 物凄い笑顔で少年… 時行 に詰め寄る 諏訪 さん 。
 
 第三者である私から見て 、もう可哀想で仕方ない 。


北条 時行
 帰れ 。 
 
北条 時行
 インチキ祈祷師きとうしの言うことなど 
信じられるか 。
 
諏訪 頼重
 失礼な!! 
 
諏訪 頼重
 神聖さが溢れてはち切れそうなわたくし 
に向かってインチキぃ!?
 
 父様 、インチキはインチキだから 。 
 
諏訪 頼重
 庇って身内ッ!!? 
 
あなた
 よく言った 雫 ッ!! 
 
諏訪 頼重
  あなた 殿まで!!??


 「 こちとら真面目に言ってるんですぞー! 」とわめく 諏訪 さんを横目に、私は少年へと視線を逸らした 。


北条 時行
 私に仇など討てっこない 、 
これを見ればわかるでしょう 。
 
北条 時行
  源頼朝 公でさえ 平家 を滅ぼすのに 
五年もかかった 。
 
北条 時行
 たった二十四日で全国政権くにを丸ごと 
滅ぼした男などいたでしょうか 。
 
北条 時行
 貴方は先日…私が英雄になるなどと 
戯言たわごとを言ったが 、 足利高氏 の
ような力ある者こそが…後世に“ 英雄 ”
と呼ばれるのでしょう 。
 
北条 時行
 敗れた物は潔く死なねば武士の恥 。 
 
北条 時行
 死なせてください 。
皆のように武士らしく 。
 
あなた
 …… 


 …この子はなんて立派なのだろう 。
 
 弱い八歳にして 、こんなに礼儀正しく 、武士の心構えまでも叩きつけられている 。
 
 ……兄さんもこの子を見習って 、ちょっとは大人になって欲しいな 。


諏訪 頼重
 わかりました 、 














諏訪 頼重
 では死になされ 。 


  時行 に感心しているのも束の間 。ドンッと 諏訪 さんが 時行 の背中を押し 、丘から突き落とした 。
 
 慌てて引きずりあげようとするも 、時すでに遅し 。


あなた
 ちょッ 、あんた馬鹿!? 
 
あなた
 早く助けに行かないと… 
 
諏訪 頼重
  北条 の子だッ!! 


 更に追い討ちをかけるかのように 、そう大声で言い放った 。


あなた
 本気で死なせるつもり?! 
 
あなた
 まだ八歳なのに…! 
 
諏訪 頼重
 まぁまぁ 、見ていなされ 。 


  諏訪 さんが余裕そうにそう言い 、マジでコイツぶん殴ってやろうか迷っていると 、武士の悲鳴が聞こえた 。
 
 悲鳴のした方へ視線を向けると 、 時行 がどこか楽しそうに迫り来る刀ややじりから逃げている 。


あなた
( ……あぁ 、 )


 …そうか……
 
 “ 死 ”という脅威が迫ってくるからこそ 、
 
 彼の中の“ 英雄 ”は輝く 。
 
 空へ高く身を飛ばした彼が鳳凰のように輝いて見えてしまったのは 、何故だろうか 。


 

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