あなた sitenn
諏訪 さんに指定された丘の上に立ち 、地獄と化した鎌倉を見下ろす 。
刀に人の生首を突き刺して楽しそうにする武士や 、金を漁る武士…
逃げ出そうとした子供が捕まえ 、生きたまま吊るし矢の的にしている武士までいる 。
子供の断末魔が鼓膜を突き刺し 、思わず顔を歪めた 。
呑気に笑っている武士達には 、視えていないのだろう 。
ヤツらの瞳に映っているのは 、人間の亡き骸だけ 。
私の瞳に映るのは 、ヤツらを今にも襲い掛かりそうな無数の呪霊 。
強いのははチラホラいるが 、ほとんど二級程度だろう 。
そんなことをポツリと呟き 、ゴウゴウと燃え上がる屋敷を見つめた 。
…ふと 、後方から茂みが揺れる音がし 、反射的に振り返る 。
そこには 、先月の少年と 諏訪 さん 、そして 雫 がいた 。
諏訪 さんは視線を少年へ向ける 。
少年は絶望の表情で鎌倉を見下ろし 、炎の光で顔が照らされていた 。
少年が着ている服の紋章… 北条 家の家紋 。
確か……“ 北条時行 ”だったっけな 。
物凄い笑顔で少年… 時行 に詰め寄る 諏訪 さん 。
第三者である私から見て 、もう可哀想で仕方ない 。
「 こちとら真面目に言ってるんですぞー! 」と喚く 諏訪 さんを横目に、私は少年へと視線を逸らした 。
…この子はなんて立派なのだろう 。
弱い八歳にして 、こんなに礼儀正しく 、武士の心構えまでも叩きつけられている 。
……兄さんもこの子を見習って 、ちょっとは大人になって欲しいな 。
時行 に感心しているのも束の間 。ドンッと 諏訪 さんが 時行 の背中を押し 、丘から突き落とした 。
慌てて引きずりあげようとするも 、時すでに遅し 。
更に追い討ちをかけるかのように 、そう大声で言い放った 。
諏訪 さんが余裕そうにそう言い 、マジでコイツぶん殴ってやろうか迷っていると 、武士の悲鳴が聞こえた 。
悲鳴のした方へ視線を向けると 、 時行 がどこか楽しそうに迫り来る刀や鏃から逃げている 。
…そうか……
“ 死 ”という脅威が迫ってくるからこそ 、
彼の中の“ 英雄 ”は輝く 。
空へ高く身を飛ばした彼が鳳凰のように輝いて見えてしまったのは 、何故だろうか 。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。