第13話

09.丸かじりドーナツ
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2024/09/04 09:30 更新

 休日の午後14:00。
 会社近くのお気に入りのカフェ。

 ここにくるといつもクリームラテとマドレーヌを頼む。このお店のマドレーヌはとてもしっとりしていて、でも決してベタベタしているわけではない。それどころか外側なんか少しカリカリサクサクとしているくらいだ。それがまたふっくらとした中身の美味しさを際立てる。そんなお菓子を作り出すマスターがいる大好きなカフェ。


 今日はただお茶をしに来たわけではなく、確かめたいことがあって、ここまできた。
店員
あれ?珍しいね、休日出勤?
あなた
あ、いや…

 カフェに入ると早速いつもいる店長さんに声を掛けられた。それもそうだ。ここは会社の近くのカフェで、1人で来るのは平日が多い。
あなた
あの…

 でもこんな事を聞いてもいいのだろうか。

 個人情報などに引っかかってしまって教えてもらえないかもしれない。
店員
奢ってくれた人が
どんな人か気になってる?
あなた
えっ!?
なんでそれを…!
店員
ははっ、顔に書いてあるよ

 そんなに顔に出ていたのだろうか。
 急に恥ずかしくなり、頬にどんどんと熱が溜まっていく。
店員
残念だけど、誰かっていうのは
教えられないんだけど
あなた
ですよね…
店員
あなたちゃんと同じくらいの
年齢で背の高い男性って
いうのだけは教えるね
あなた
そうなんですね…!

 そう、確かめたかったのはこの事だ。

 先日エレベーターで出会った2人の男性。
 なぜかわたしを見て驚いたような声を出した。そして、彼は最後にわたしに話し掛けようとしていたように見えた。(勘違いだったらとても恥ずかしいのだが)


 そして、そんな彼の事を、わたしはどこかで見た事があった。


 背は高いけど、顔のパーツが丸っこくて可愛らしい雰囲気の、子犬みたいな男の子。どこで見かけたんだっけ、とずっと考えていたが、きっと、このカフェの中で見かけたのだろう。

 だから、あの時彼は話し掛けようとしてくれたのではないだろうか?
店員
あ、そういえば丁度よかった
店員
彼から預かり物があってね
あなた
預かり物…?
店員
あなたちゃんからの
預かり物を彼に渡したら、
帰りにこれをって

 はい、と言って手渡されたのは小さな紙袋。

 その中を覗くとドーナツと、何かを乱雑に千切ったような小さな紙切れが入っていた。




"マドレーヌありがとうございました。
 ここ、ドーナツもおいしいよ。
 カフェを出たら、空を見上げて歩いてね。"


あなた
……空を……

 この人はどこまで優しい人なんだろう。
 無様な姿を見せただろうに、きっと上を向いて先に進め、もう泣くなというメッセージだろう。

 わたしはそれを大切に手帳に挟んでしまった。





 店長さんにお礼を言って、カフェを出た。
 空は清々しいほどの青天で、まるで私の心の中のようだ。
あなた
んーっ、おいし!

 道端でドーナツに齧り付く。
 カラフルなチョコが掛かったドーナツはとても甘くて美味しかった。

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