第49話

43rd story.
721
2023/07/19 09:00 更新

















リッチの言っていた通り、

見るだけならばネットは普通に使えるみたいだった。


リプライ画面を開くと

『叶っちゃった夢って価値ない、ゴミ以下』

の一文が飛び込んできた。


あぁ、

結局返信してなかったんだっけ。


アイコンをタッチして彼女のページに飛ぶ。


実際は会ったことはないけど、

仲良しのフォロワーさん。


名前はムーンフィッシュちゃん
(因みに僕はらびっと@無理ゲーはパス)


いつも面白いリプをくれるいいコだ。


鋭いツッコミと毒舌、

最近は絶賛恋愛中らしく、

こっちがキュンキュンきちゃう呟きが目立つ。


因みに数時間前のツイートは

『やった、今日一緒に帰れるって!』

『いつもの場所で待ち合わせ、早く来ないかなぁ』

である。



いいなぁ、

青春って感じで。


高校に入れば普通に付き合えると思ってた自分を、

絞殺したい。


ムーンウィッシュちゃんはデートで、

僕は命がけのゲームの真っ最中。


なんだこの差は、

思わず苦笑してしまう。


あぁ、

彼女にリプ返ししたい、

今の状況を教えたい。


いつもムーンウィッシュちゃんにはリッチ達の愚痴を聞いてもらっているのだ。




ビービービービーッ...!!



突然、

けたたましいアラームがスマホから鳴り響き、

現実世界に引き戻される。


体育館がざわつく。


どうやら全員の携帯電話から、

このアラームが聞こえているらしい。








Y.
どうです、目は覚めましたか?


体育館の扉が開き、

悠佑先生が現れた。


その背後には複数の飼育員達の姿もある。


心なしか人数が減っているようだ。

他のメンバーは休憩でもとってるんだろうか。

Y.
おねむの方がいたみたいやから、
休憩終了のアラームを少し大きめに作動させていただきました


それって、

僕のこと言ってる?


念の為にうとうとしている人がいないか確認してみたが、

発見することはできなかった。


Y.
金の卵候補の皆さん、零次面接の突破おめでとうございます


先生が拍手をすると、

真似するように飼育員達も手を動かした。


コイツら、

本当に先生の言いなりなんやな。


乾いた拍手が体育館の高い天井に消えていく。

Y.
さぁ、早速第一次面接とまいりましょうか


拍手が止んだと思ったら、

急に照明が消えた。


周囲が真っ暗となり、

体育館が騒然となる。


移動する飼育員達の気配が暗闇を通じて伝わってくる。




え、何がはじまるん。

急に撃たれたりしないよな!?


恐怖からパニックになって、

思わず僕はいむくんに手を伸ばした。


だがその手は簡単に弾き飛ばされる。


瀬繹 マイカ
やべぇんスけど!?


ビッチ達が一早く、

いむくんを取り囲んだのだ。
H.
落ち着いて、瀬繹さん


冷静ないむくんの声が響く。

H.
味田さん、そんなに引っ張ると制服が破けちゃう
味田 レイコ
あ、ごめん...つい


パッチまでもが、

いむくんの制服を掴んでいるらしい。


一方、

僕はというと...


後ろに倒れそうになるのを必死に堪えていた。


必死に踏ん張り、

何とか持ちこたえたが、

その姿を見てくれた者はいないようである。


そんな事、

今はどうでもいい。


誰でもいいから、

くっつきたい。


暗闇に一人になってしまう。


空中で手探りをして、

やっとのことで何かを捉えた。


ロープのようなものを力一杯握りしめる。

瀬繹 マイカ
イッテェッ!


ビッチの野太い叫び声が耳元で響く。

S.
あ、ごめん


僕が握ったものは、

ビッチのポニーテールだったみたい。


咄嗟に手を離しながらも、

内心『僕を何度も打った罰』だと思った。


もちろん、

そんな事は言える訳がない。



僕が再度『ごめん』という言葉を口にした時、

ふわっと足下の照明が点灯して館内の様子が浮かび上がった。






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