◆アレンールシフェニア王宮内「天国庭園」にて
三回鳴る鐘の音、それを聞いた時、僕がつい口にしたのはそんな言葉だった。
レヴィン大教会の巨大な鐘の音は、遠く離れたこの王宮まで届く。隣でシャルテットが大きくため息を吐いた。彼女も考えていることは同じようだ。
昼過ぎから始めた庭園の掃除は、午後三時を過ぎても終わる気配を見せない。
僕とシャルテットの他に、六名ほどの男の使用人が懸命に清掃作業を行っていたが、何しろ広さが尋常じゃない。元々この人数で行うこも自体無理があるのだ。
とはいえ大半の使用人たちは、今夜行われる舞踏会の準備に追われているため、侍女長のマリアムに頼んでも、これ以上の人数を割り当ててもらうことは期待できそうにない。
うんざりした顔をしながら、シャルテットが話しかけてきた。
無言で掃除を再開するシャルテット。彼女の不満もわからないでもない。そもそも僕たちは王女付きの使用人であり、庭園の掃除は他の使用人に任せればよいのだ。しかし、なぜシャルテットと僕が参加しているかというと、彼女が食事の準備や、着替えの手伝いなどしようものなら、持ち前の馬鹿力で食器は破壊するわ、衣装はビリビリに引き裂くわで散々だからである。そして僕は、そんな彼女のお目付け役を任されたというわけだ。
よくクビにならないものだと思うが、力仕事に関していえば、男以上に得意だし、何より彼女の愉快な性格が王女リリアンヌに気に入られている、というのが大きいのだろう。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!