shiyun side
時間は10時40分。
二限目が終わったところだ。
俺は保健室にいた。
てるとの気遣いで、ここまで休んでいたんだ。
そろそろきっと迎えに来る。
噂をすれば、カーテンの向こうから声がした。
カーテンが少し開き、顔が覗く。
丸く輝く瞳が可愛らしかった。
養護教諭までが俺を心配して顔を覗かせた。
気怠げに起き上がりつつ、スクバを掴む。
てるとは顔を覗き、優しく笑った。
俺も、ぎこちなく笑い返した。
教室の空気が止まった。
ここまでは何とか何も考えずに来れたのに、その空気に触れた瞬間、あいつらの顔を思い出して強ばる。
もう動けないと思ったけど、てるとに背中を押されるとすぐに右足が出た。
勉強する気なんてほとんどなかった。
が、仕方の無いこと。
それより、と、俺は視線だけでクラスを見回す。
やはり担任から何か言われていたのか、俺の方をまじまじと見る人間はいなかった。
いじめがあるなんてこと、こいつは知らない。
けれど何となくで、俺を守ろうとしている。
久しぶりに触れた人間が優しすぎるせいで、感覚がおかしくなりそうだった。
今ここであいつらが俺にかかってきてくれたら、てるとも少しは動いてくれるだろうな。
それを分かっているから、来ないんだ。
俺はてるとの願いしか聞かないから。
なのにてるとは、嬉しそうに頷いた。
俺は決めた。
今後、例え何があっても、てるとを守ろう。
天寿を全うさせる他ないのだから。
俺の事情に関わらせない。
知られてはいけないし、巻き込んでもいけない。
俺の中の了解だ。
まぁそれは案外、一時も傍から離れないてるとを見てみれば、簡単なことだったのだが。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。