前の話
一覧へ
次の話

第3話

2話
38
2024/02/23 17:46
誰かVOISING内のそれぞれの呼び方教えて欲しいです。私、いるいるとくにくにくらいしか覚えてないんですよね。
あなた
今、私はいふさんに案内された部屋のベッドで寝転んでいる。
どうするか考えていた
だが、今聞こえる外から入る風の音、カーテンが囁く音、心地よいベッドにそれを阻まれていた。
それは思考するには相性の悪いもので、私に早く眠りにつくようにと進めてくる。
この世に魔法はないと思っているが、ふかふかのベッドとコタツには、魔力があると突然言われても納得する。
もう眠りにつこうとした頃ドアをノックする音が聞こえた。
あなた
なにかありましたか?
あなた
いふさ…
あなた
あれ?
誰か来たのだろうか。恐る恐るドアを開けるとそこには赤い瞳に落ち着いた緑の髪の彼がたっていた。
彼は落ち着きとか慈しみとか、そういう言葉が人になって現れたような人だ。抹茶みたいだとも思った。
少し微笑みながらも不安が滲む表情に何となく落ち着きを覚えた。
すち
こんにちは
あなた
こ…こんにちは
すち
あなたちゃん…で合ってるかな?
何故私の名前を知っているんだろうか。とても怪しい。
そんな考えが顔に出ていただろうか、
すち
いふさんが教えてくれて…
と、聞いてきた。
あの人の仲間だろうか。
この人からは怪しさや怖さなどは感じないが、第一印象で人間を信用してはいけない。次の言葉を待った。
すち
あの、今、時間ある?
あなた
…?ありますが……
時間なら有り余るほどある。何かあるならついて行きたいと思う。
すち
なら良かった。こっちきて
広く長い廊下を歩きながら考える。そういえば、この人の名前はなんだろうか。全く聞いていなかった。
あなた
あの、名前教えて貰ってもいいですか?
すち
?言ってなかったっけ?俺はすち
あなた
すちさん?
「そうだよ。」
と、こっちを振り返りながら微笑んで言った。
やはり綺麗だと思った。
長い廊下の端についた。黒い細い鍵を鍵穴に入れて回す。
重いドアをゆっくり押しながら入る。
私もドアの外へと足を踏み入れると、強い風が吹いた。
あなた
わっ
すち
大丈夫?
すちさんから差し伸べられた手を取り、進む。
だんだんと風は止んできて、止まる。
さっきまでの空気が嘘のように静まり返った。
そこで手を離して、屋上の端の方へとすちさんは向かう。
周りの木や少し遠くに見える街と海は夕日に染められ、輝いていた。
この建物はかなり歩かないと街に行けないことがわかった。
あなた
この景色を見せるために来たんですか?
柵の近くにいるすちさんの方へと歩きながら喋りかける。
すち
そう、この景色を見せたくって
すち
綺麗でしょ?
すちさんの視線は、まだ街の方に向いていた。
あなた
とっても綺麗です
とりあえず返事をしながら、考える。
ここの建物は、周りが森で囲まれていて音を鳴らしても気付かれない。外からなにか放り出しても、気付かれずに終わる。

冬だからか、かなり早く沈んでいく夕日を見届けながら、外の事を考えていた。

そして本が欲しいと思った。もう一日も読んでいたい。これだけ大きい館ならば図書室の一つや二つあるだろう。本が欲しいという名目で、何かここから脱出する手掛かりを掴めるかもしれない。

プリ小説オーディオドラマ