第36話

カッケェヤツ
601
2024/06/05 09:00

 あなた side














      改めてタイマンが再開するも、

  十亀の動きは、見るからに先程と比べ鈍っていた。

 その異変に、当然対戦している桜も気づいたようだ。








桜 遥
  お前…本気でやってねぇだろ  
十亀 条
  えー…そんなこと________  
桜 遥
  拳当てる気ねぇし  
蹴り避ける気もねぇだろ


桜 遥
  お前…何がしてぇんだよ  
あなた
  …………  



十亀 条
  ……はは  




        十亀の乾いた笑いが、

     外の雨音に混ざって埋もれていく。




十亀 条
  本っ当…何がしたいんだろうねぇ  




    十亀は自身の前髪をくしゃっとかき上げ、

       ただ足元の奥を見つめていた。




 十亀 side








桜 遥
  ……  



桜 遥
  なんであいつらを殴った  
桜 遥
  お前のとこは力があれば  
何してもいいんだろ





        『力があれば』……ねぇ。

  オセロ君の言葉が、無意識に頭の中で反芻される。






十亀
  そうだよ…ここは強いヤツの場所だから  
















十亀
  クズがいていい場所じゃない  






  ちょーじがおかしくなれば四肢チームは正常に動かなくなる。

   次第にクズの皮をはぐことの方が多くなった。





      そんな時ちょーじが執着してた

        ボウフウリンともめて

        何かを変えるきっかけに

      なるんじゃないかと思ったのに





    獅子頭連ウチに正義もなにもないケンカに

      みんなを巻き込んでしまった…





永瀬 あなた
  ''獅子頭連に''じゃなくて  
私は''十亀に''言ってんの
永瀬 あなた
  そんな自分も、周りも望んでないこと  
やる必要なんてない





     オレのことを心配してくれたながせに

      ''あんな顔''をさせてしまった…




十亀
  ( それでも もう後戻りはできない )  
十亀
  ( あの日 間違いを押し通すと決めた以上 )  
















        止まるわけにはいかない
























十亀
  ( ……ここのマークうすくなったなぁ )  






        壁に描かれた獅子の絵。

       入った当初はもっと濃くて、

     かっこよかったはずなんだけどなぁ…





          気付かない間に、

    こんなにもみすぼらしくなっていたんだ。






























桜 遥
  お前…何がしてぇんだよ  
永瀬 あなた
  ねぇ十亀、アンタは何がしたいの……?  





    オセロ君とながせがオレに言った言葉。

    そんなこと、初めて聞かれたなぁ……




十亀
  …………  




        『何がしたい』かぁ……




十亀
  そうねぇ 山に行きたいなぁ  
永瀬 あなた
  …………  



桜 遥
  はぁ?  





    オセロ君の低い声が、鼓膜を揺らした。




桜 遥
  なに浸ってんだよ……  
桜 遥
  クズがいていい場所じゃないって  
ならなんで



桜 遥
  お前はここにいるんだ?  
十亀
  ………  
桜 遥
  ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ  
桜 遥
  テメーがやってることは  
同じクズだ



     向き合い改めて見たオセロ君の瞳は

      強く揺るぎない光に満ちていて

      太陽みたいに、眩しく映った。


桜 遥
  たしかにお前は強ぇ  
でもクソダセぇ
桜 遥
  それをわからせるために  
オレはお前に勝つ
桜 遥
  そしたらお前はダセぇことやめて  






桜 遥
  オレがケンカしたい  
カッケェヤツになれ

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