あなた side
改めてタイマンが再開するも、
十亀の動きは、見るからに先程と比べ鈍っていた。
その異変に、当然対戦している桜も気づいたようだ。
十亀の乾いた笑いが、
外の雨音に混ざって埋もれていく。
十亀は自身の前髪をくしゃっとかき上げ、
ただ足元の奥を見つめていた。
十亀 side
『力があれば』……ねぇ。
オセロ君の言葉が、無意識に頭の中で反芻される。
頭がおかしくなれば四肢は正常に動かなくなる。
次第にクズの皮をはぐことの方が多くなった。
そんな時ちょーじが執着してた
ボウフウリンともめて
何かを変えるきっかけに
なるんじゃないかと思ったのに
獅子頭連に正義もなにもないケンカに
みんなを巻き込んでしまった…
オレのことを心配してくれたながせに
''あんな顔''をさせてしまった…
止まるわけにはいかない
壁に描かれた獅子の絵。
入った当初はもっと濃くて、
かっこよかったはずなんだけどなぁ…
気付かない間に、
こんなにもみすぼらしくなっていたんだ。
オセロ君とながせがオレに言った言葉。
そんなこと、初めて聞かれたなぁ……
『何がしたい』かぁ……
オセロ君の低い声が、鼓膜を揺らした。
向き合い改めて見たオセロ君の瞳は
強く揺るぎない光に満ちていて
太陽みたいに、眩しく映った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。