長野県警本部。
長野の綺麗で澄んだ空気が本部を浸している。
私が抜けていたのは3日間くらいだったけど、
年度はじめの忙しさは全く変わらない。
というより、私がいなくなったことで
1人の負担が増えているんじゃないかと思う。
本当にすみません、という気持ちと
なんで無理やり入院させたんだ?という気持ちが
戦って、結局何も言えなかったけど。
由依さんは相変わらず、太陽みたいな笑顔を
向けてくれた。
ただ、唯一変わっていたのは手の上に
分厚いファイルや、仮止めされた書類があること。
青いファイルだから、たぶん刑事事件…
私がいない間も事件が起きていたんだな…
それにしても、致死量レベルの書類だけど。
由依さん、見た目に反して相当力持ちだなぁ…
交番で暇なとき、重量当てゲームしてたから
だいたいの重さはわかる。
これ、5キロ超えてる。
サイタイは突き当たりの廊下、
二課は一階上だったっけ…
復帰初日からヘマやってちゃ頼りなくなる。
ここは涼しい顔して持っていかなくちゃ。
…脳内にさまざまな案が思い浮かぶ。
タイムトラベルしたとして、疲れはするんだから
プラスマイナスはゼロ。
警察官としてはわりと貧弱な方だって
自覚もしてる。たぶん階段を上がるだけで精一杯。
息が上がる確率は100%だ。
自分でもよく思う。
未来のことは全然考えてないな、って。
普段なら目を見開かれそうなほどの荷物だけど、
年度初めということも相まって、
みんな自分のことで精一杯だ。
当たり前だ…夜遅くまでここにいたくはないだろうし。
残業なんて、好んでやることじゃない。
そんなとき、背後から体の芯にまで響くような
低い声の人が独り言のように語りかけてきた。
警部…頼りになるなぁ…
ていうか、仏に逢うては仏を殺せって、
私の思い描いている漢字が正解だとしたら、
だいぶ過激な言葉なような…
まぁ、文字通りの意味じゃないんだろうけど。
私だけかもしれないけど…
この人の声は少しドキッとする。
見えないはずの心が、諸伏警部には見えているような、
そんな不思議な感覚になる。
不思議な人だ…
冷静沈着で頭脳明晰で、優しくて、顔もいい。
時々、創作された人なんじゃないかと思うくらいだ。
でも、ちゃんとこうして実在している…













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。