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第12話

亡霊たちの告白、狼たちの不協和音【解決編】
7
2026/06/17 08:48 更新
密輸組織のビルへ潜入した6人。
幽のハッキングと夜の神出鬼没な先導、
そしてムーンウルフの電撃戦により、
作戦は順調に進むかに見えた。
しかし、奥の部屋から現れたのは、
組織の幹部である妖艶な女性と、その私兵たちだった。
犯人
あら、可愛いネズミたちが紛れ込んだわね?
女性幹部が香水の香りを漂わせ、
くねりながら歩み寄ってくる。
その瞬間、空気が凍りついた。
夜月 魔白
夜月 魔白
っ……、女、かよ……!
魔白が露骨に嫌悪感を顔に出し、数歩下がる。
瑠啞はヘッドホンを深く被り直して完全に目を背け、
狼葉にいたっては「……帰る」と
回れ右をしようとしていた。
ムーンウルフの凄まじい異性嫌いが発動した瞬間だった。
狂伊 零
狂伊 零
え、ちょっと君たち、急に戦意喪失しないでよ
零が携帯ゲーム機をポケットにねじ込みながら呆れる。
だが、魔白は顔を青くしながら言い返した。
夜月 魔白
夜月 魔白
うるさい! 俺は異性が大嫌いなんだよ! 
夜月 魔白
夜月 魔白
近寄るな!
狂泉 幽
狂泉 幽
ど~でもいい。
狂泉 幽
狂泉 幽
お前らのプライベートなど
興味はない、作戦の邪魔だ
幽が冷酷に銃を構える。
しかし、女性幹部がさらに距離を詰めてくると、
ムーンウルフの3人は連携どころか完全にパニックになり、
互いの足を踏み合ってギクシャクし始めた。
狂伊咲 夜
狂伊咲 夜
面倒極まりないな。
零、さっさと終わらせろ
夜が無表情に呟く。
狂伊 零
狂伊 零
ぇ?やだ…。
狂伊 零
狂伊 零
自分だって女の人の香水の匂い、
ゲームの集中力切れるから嫌いなんだけど。
狂伊 零
狂伊 零
でも、仕方ないな
零はため息をつき、顔にかけていた眼鏡に手をかけた。
狂伊 零
狂伊 零
ちょっと、そこのお姉さん。
君の本音、自分と『共有』しよっか
零が眼鏡を外す。
その瞬間、彼の異能 [亡霊裁判] が発動した。
読心とは少し違う。
指定した相手と零の「心を繋ぎ」、
お互いがお互いの心を読み合う、文字通りの精神的裁判。
犯人
(な、何これ!? 私の頭の中に、
このガキの思考が流れ込んでくる……!?)
女性幹部が頭を押さえてよろめいた。
彼女の脳裏に流れ込んできたのは、
零の圧倒的な【ゲームへの執着】だった。
狂伊 零
狂伊 零
(あー、早く帰ってあの格ゲーの限定イベント消化したい。今日のログインボーナス、あと3時間で切れちゃう。幽のセーブデータ消去の脅しマジでうざい。帰ったら魔白に攻略法聞こう。っていうかこの女の香水、安物で鼻が痛い。早くゲームさせろゲームさせろゲームさせろ……)
犯人
ひっ、あ、頭の中がゲームのことで
埋め尽くされて……狂いそう……っ!
女性幹部がガタガタと震え出す。
零の常軌を逸した「ゲーム中毒」の思考を
ダイレクトに流し込まれ、
脳のキャパシティが限界を迎えたのだ。
さらに、零の耳には、
眼鏡を外したことで相手の隠せない「本音」が響いていた。
狂伊 零
狂伊 零
へえ。君、表向きは余裕ぶってるけど、
狂伊 零
狂伊 零
心の中では
『このガキどもの顔、
生意気でムカつく、全員すり潰してやる』
って言ってるよ。怖いお姉さんだね
零が冷たい目で宣告する。
心が完全に繋がった恐怖と、
零のゲーム脳の濁流に耐えかね、
女性幹部は戦意を喪失してその場にへたり込んでしまった。
私兵たちも、ボスの異常な錯乱ぶりに怯んで動けない。
狂泉 幽
狂泉 幽
今だ、片付けろ
幽の冷酷な指示が飛び、
夜が音もなく私兵たちの背後を取って一瞬で気絶させた。
任務完了後、
アジトへの帰り道。6人の間には、
なんとも言えないギクシャクした空気が流れていた。
夜月 魔白
夜月 魔白
おい、零
魔白が、まだ顔を少し赤くしながら零を睨む。
夜月 魔白
夜月 魔白
君、さっきの異能のとき……
夜月 魔白
夜月 魔白
俺たちの心の中も、読んでないだろうな?
狂伊 零
狂伊 零
ぇ?やだなぁ、そんな訳ないじゃん。
自分、指定した相手しか読めないよ。
狂伊 零
狂伊 零
君たちの
『女まじ無理、消えろ、近づくな』
っていう心の叫びなんて、読む必要ないし
夜月 魔白
夜月 魔白
読んでるじゃねえか!!! Forget it!
魔白が、完全に恥ずかしさで取り乱している。
狼月 瑠啞
狼月 瑠啞
はぁ。僕の音楽の脳内に、
貴様のゲームが混ざらなくて良かった。
瑠啞が心底嫌そうに飴を噛み砕く。
狂泉 幽
狂泉 幽
ど~でもいい。
狂泉 幽
狂泉 幽
零の頭脳がゲームだけで
構成されているのは、
僕が一番よく知っている。
幽は平然とタブレットを叩き、
夜は「……やっぱり、全員面倒極まりないな」と
影に隠れてあくびをしていた。
お互いの「異性嫌い」の不器用さと、
零の「ゲーム中毒」な本音が異能を通じて露わになり、
前よりもさらに奇妙な距離感になった6人。
ギクシャクしながらも、魔白はボソリと零に呟いた。
夜月 魔白
夜月 魔白
 まぁ、助かったのは事実だ。
……帰ったら、さっき言ってた限定イベント、
手伝ってやってもいいぞ
狂伊 零
狂伊 零
え! 本当? 
やっぱり魔白、ツンデレだけど良い奴!
夜月 魔白
夜月 魔白
ツ、ツンデレって言うな!
影の亡霊たちと孤高の狼たちは、
文句を言い合いながら、夜のネストを歩いていくのだった。

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