密輸組織のビルへ潜入した6人。
幽のハッキングと夜の神出鬼没な先導、
そしてムーンウルフの電撃戦により、
作戦は順調に進むかに見えた。
しかし、奥の部屋から現れたのは、
組織の幹部である妖艶な女性と、その私兵たちだった。
女性幹部が香水の香りを漂わせ、
くねりながら歩み寄ってくる。
その瞬間、空気が凍りついた。
魔白が露骨に嫌悪感を顔に出し、数歩下がる。
瑠啞はヘッドホンを深く被り直して完全に目を背け、
狼葉にいたっては「……帰る」と
回れ右をしようとしていた。
ムーンウルフの凄まじい異性嫌いが発動した瞬間だった。
零が携帯ゲーム機をポケットにねじ込みながら呆れる。
だが、魔白は顔を青くしながら言い返した。
幽が冷酷に銃を構える。
しかし、女性幹部がさらに距離を詰めてくると、
ムーンウルフの3人は連携どころか完全にパニックになり、
互いの足を踏み合ってギクシャクし始めた。
夜が無表情に呟く。
零はため息をつき、顔にかけていた眼鏡に手をかけた。
零が眼鏡を外す。
その瞬間、彼の異能 [亡霊裁判] が発動した。
読心とは少し違う。
指定した相手と零の「心を繋ぎ」、
お互いがお互いの心を読み合う、文字通りの精神的裁判。
女性幹部が頭を押さえてよろめいた。
彼女の脳裏に流れ込んできたのは、
零の圧倒的な【ゲームへの執着】だった。
女性幹部がガタガタと震え出す。
零の常軌を逸した「ゲーム中毒」の思考を
ダイレクトに流し込まれ、
脳のキャパシティが限界を迎えたのだ。
さらに、零の耳には、
眼鏡を外したことで相手の隠せない「本音」が響いていた。
零が冷たい目で宣告する。
心が完全に繋がった恐怖と、
零のゲーム脳の濁流に耐えかね、
女性幹部は戦意を喪失してその場にへたり込んでしまった。
私兵たちも、ボスの異常な錯乱ぶりに怯んで動けない。
幽の冷酷な指示が飛び、
夜が音もなく私兵たちの背後を取って一瞬で気絶させた。
任務完了後、
アジトへの帰り道。6人の間には、
なんとも言えないギクシャクした空気が流れていた。
魔白が、まだ顔を少し赤くしながら零を睨む。
魔白が、完全に恥ずかしさで取り乱している。
瑠啞が心底嫌そうに飴を噛み砕く。
幽は平然とタブレットを叩き、
夜は「……やっぱり、全員面倒極まりないな」と
影に隠れてあくびをしていた。
お互いの「異性嫌い」の不器用さと、
零の「ゲーム中毒」な本音が異能を通じて露わになり、
前よりもさらに奇妙な距離感になった6人。
ギクシャクしながらも、魔白はボソリと零に呟いた。
影の亡霊たちと孤高の狼たちは、
文句を言い合いながら、夜のネストを歩いていくのだった。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!