________ 呪力のぶつかり合いによって
起こった奔流が、私の右腕を抉った 。
爆発に紛れ、押し合いに負けた私は覚束無い足取りで
高専から撤退しようとする 。
その時心を占めていたのは、
"感動"ただ一つだった 。
あれだけの潜在能力があれば、
いずれ私の理想が叶うのも夢ではない 。
そんな希望も半ば、
目の前に現れた存在によって光は潰えた 。
しかし皮肉にも、私の瞳孔には
輝かんばかりの蒼が映っている 。
老いを知らないその見た目に反して、
その蒼はこの世の醜さの全てを映し出していた 。
家族達の安否を確認したのち、
ようやっと心が弛緩する 。
私は悟と違い、大切な者を死地に
入れるような真似はしない 。
私は優しいんだ 。
自分の生徒を私の元へ送り込むような君と違ってね 。
でもどちらにせよ、
私は未来ある呪術師を殺さない 。
それは、私の大義に反することだからだ 。
そういった旨を伝えれば、
悟は平然とした顔で、そこは私を信用したと答えた 。
信用なんて脆いもの 。
決別したあの日、疾うに崩れたと思っていたばかりに 。
何故か、高専時代の蒼い日々が脳裏を駆け巡る 。
それはまるで、走馬灯のように 。
曲がりなりにも、私は悟達との日々を愛していた 。
私は、高専のやり方が気に入らなかっただけだ 。
決して悟達を憎んでいる訳ではなかった 。
大勢多数の為に仲間の命がすり減ることこそが、
堪らなく憎かった 。
だから、私は ...
呪術という概念がなかったら、
私はただただ純粋に笑えたのだろう 。
何も考えずに悟と笑い合い、ふざけ合って、
また笑い合う 。
きっと、そんな日々に羨望を持っていたのだと思う 。
呪術のある世界で笑えなくとも、
私は悟達との世界では、心の底から笑えていた 。
悟は膝を曲げて屈み、私に目線を合わせる 。
蒼空を掴んでそのまま入れたような瞳を見て、
思い出したのは、全ての始まりの色 。
私達の、蒼い蒼い色 。
己の瞳孔が開いていくのを感じる 。
まるで死の間際に、彼の姿を目に焼き付けるかのように 。
そして湧き上がるは、穢れ一つない、無垢な笑い 。
_________ 微かな衝撃の後、
光のベールに包まれて、体の痛みが無くなっていく 。
その温もりは、まるで春の陽だまりの様で 。
君の優しさに触れた時の、あの感覚が鮮明に蘇る。
最期まで、夢見るのは君なのか 。
薄れゆく意識の中で、
過去の未練を持った自身を嘲笑する 。
やはり私は、君を...諦めきれなかった 。
愛しているよ、あなた 。
この言葉がどれほど小さく、
どれほど私の想いを表現するに足り得ないか
分かっているが、それでも伝えたい。
君という光は、出会った瞬間から
私の心の奥を焼き続けた 。
でも...私は 。
沢山憎んだ 。沢山殺した 。
だから手を伸ばそうと、
もう届くことのない、優しい春光。
届くことがなかろうが、私は君を愛している 。
一切の穢れもない、君を 。
それはこの人生で変えることの出来ない事実なんだ 。
だからどうか、忘れないで 。
私がいたこと、私が君を愛したこと 。
君の幸せを、心から願っていたこと 。
君に出会えて、本当に良かった 。
魂が廻って、別の人間になったとして...
それでも私はまた、どうしようもなく
君という人に惹かれるんだろう。
君の事は、この魂が忘れないよ 。
そして、願うことならもう一度 。
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_________ あの蒼く煌めく春の中で、
君に想いを伝えたい 。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!