第4話

モラトリアム💄💛‎🤍
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2026/05/31 12:03 更新
まひろまる。side







放課後の駅前は、人が多い。

騒がしいはずなのに、俺には全部遠く聞こえる。

改札横のベンチ。

待ち合わせなんて、もうする訳ないのに。

気づけば、足がここに来てしまう。



まひろまる。 ……ほんと、未練がましいなぁ、笑



小さく笑って、スマホを閉じた。

画面には、もう連絡を取らなくなった名前。

――ものくん。

昔は毎日のように通知が来てた。

「おはよう」も、「おつかれ」も、「好き」も。

全部、当たり前だった。

なのに今は、最後の会話さえ遠い。


---

別れた理由は、たぶん単純だった。

お互い忙しくなって。

すれ違って。

言葉にしないことが増えて。

気づいた時には、隣にいるのが苦しくなってた。

それでも俺は。

最後まで、「離れたくない」って思ってた。


---

??? まひろまる?



不意に名前を呼ばれて、顔を上げる。

そこにいたのは、見慣れた人だった。

黒いマスク。

いつものメガネ。

少し眠たそうな目。

何度も好きになった顔。




まひろまる。 ……ものくん、



心臓が、大きく跳ねた。

なんで。

どうして今。



ものくろ。 久しぶり。



ものくろは、少しだけ困ったみたいに笑った。

その笑い方すら、懐かしい。



ものくろ。元気だった?

まひろまる。 ……まぁ、それなりに。



ぎこちない会話。

前なら、沈黙なんて平気だったのに。

今は何を話していいか分からない。


---

ものくろ。 まだここ来るんだね。



ものくんがベンチの横に立ちながら言う。




まひろまる。 ……まぁ、癖みたいな感じ。



ここは、僕たちがよく待ち合わせしてた場所。

学校帰り。

寄り道した帰り。

なんでもない日。

たくさん笑った。


ものくろ。 そっか笑



短い返事。

そのあと、少しだけ静かになる。

風が吹いて、ものくんの前髪が揺れた。

好きだったな、って思う。

今でも、たぶん。

でも。


まひろまる。 ……ねぇ、ものくん。

ものくろ。 ん?



俺はゆっくり息を吸った。

ずっと言えなかった言葉を、飲み込まないために。


まひろまる。 俺ね、最近やっと分かったんだ。



ものくんが静かに僕を見る。


まひろまる。好きだけじゃ、だめなこともあるんだね。



言葉にした瞬間、胸が少し痛んだ。

でも、不思議と苦しくはなかった。

前は、この話をするだけで泣きそうだったのに。


ものくろ。……ごめん、




ものくろが小さく言う。



ものくろ。 まひろまるのこといっぱい傷つけた



その声は、少し震えていた。

俺は首を横に振る。


まひろまる。 俺も傷つけたよ。



言えなかったこと。

分かってほしかったこと。

きっと、お互い同じくらい不器用だった。


---

電車がホームに入る音がする。

別れの合図みたいだった。


ものくろ。 ……僕、もう行くね、



ものくろがそう言って、一歩下がる。

その瞬間。

ああ、本当に終わるんだ、って思った。

長かった恋。

忘れられなかった時間。

ずっと胸の中に残ってた想い。

全部。



まひろまる。 ものくん。





呼び止める。

ものくんが振り返る。

俺は笑った。

ちゃんと、前を向けるように。




まひろまる。 今までありがとうね。



ものくんの目が、少しだけ揺れた。

それから、困ったみたいに笑う。




ものくろ。 ……こちらこそ、笑




電車のドアが閉まる。

ものくんの姿が、少しずつ遠ざかっていく。

でも、不思議だった。

前みたいに追いかけたいとは思わなかった。

寂しいしまだ少し好き。

それでも。

“終わった恋”として、大事にできる気がした。


---

帰り道。

夜風が少し冷たい。

俺はイヤホンをつけて、空を見上げた。

あの恋は、もう戻らない。

でも。

ちゃんと好きだったことだけは、消えない。



まひろまる。 ……俺も、ちゃんと前に進まなきゃな。




小さく呟いて、歩き出す。

今度はもう、過去を振り返らないように。

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