第19話

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2023/06/16 12:00
海人side

夜のハナミズキを見に行った数週間後くらいから、彼女はよく発作を起こすようになった
少し前までは1週間に数回ほどだったけど、最近はスパンが短くなり2~3日に1回くらいのペースで来るようになってしまった
(なまえ)
あなた
ハアハア...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...
髙橋海人
髙橋海人
よしよし、しんどいよね...
よく頑張ってるよ...
発作の度に彼女の背中をさすり、こめかみに滲む汗を拭った
こんなことしかしてあげられない自分が情けなくて、つくづく嫌になる
(なまえ)
あなた
海人くん、ごめんね...
髙橋海人
髙橋海人
なんで...
あなたちゃん何も悪くないじゃん...
全部病気が悪いんだよ...










彼女が発作疲れで眠ったあと、布団をかけて病室を出た

スタッフステーションに声を掛け、向かうは病院に併設されている図書館
ここは入院患者と医療従事者だけが使える施設で、広くて綺麗でお気に入り
棚を適当に物色していると、文庫本サイズの1冊に目が留まった
“ 外科医になるには ”

真っ先に彼女が思い浮かんだ
僕はその本を手に取り、窓際のソファーに座って読み始めた
文面を読んでいる間も彼女のことで頭がいっぱいで、もしかしたら彼女の病気が治るかもしれないという希望みたいなものが、同時に込み上げてくる気がした
















岸先生
岸先生
え...海人くん?
聞き覚えのある声で顔を上げると、見慣れた先生
あれからどのくらい経ったんだろうか、辺りは夕日に照らされオレンジ色に染まっていた
髙橋海人
髙橋海人
岸先生、笑
岸先生
岸先生
こんな時間まで読書?
凄いね笑
岸先生
岸先生
あなたちゃんのこと、見てくれてありがとうね笑
今だいぶ落ち着いてるみたいで、海人くんは〜?って探してたよ笑
髙橋海人
髙橋海人
え、そうなの?
早く戻らなきゃ!笑
僕は本をポケットに滑らせ、彼女が待つ病棟へと向かった

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