根津さんは少し息を吐いてからゆっくり喋り始めた
さっきとは反対に私以外の全員が頭を下げた
反射的に私も勢いよく頭を下げた
頬が紅潮していることが自分でも分かる
目頭が熱くなって鼻の奥がツンとする
直接言われる感謝は決して多くない
結局、羅刹に私は手も足も出なかった
祓ったのも私じゃなく宿儺だ
私は精一杯戦って負けた
視界が少し滲む
「ありがとう」
たった一言で少し救われた気がした
私は今日までヒーローが嫌いだった
今日からはこの人たちと対等に生きる
1.呪術界最強と謳われる五条悟の封印、及び呪術界からの永久追放
2.私、志村あなたの下の名前の呪術界からの追放、また呪術界関係者との接触禁止
会議室が静まり返った
聞かれることくらいはわかってた
イレイザーが聞かなくたって、A組の誰かは絶対に聞きに来る
いや、あれは別枠だけど。
誰かを巻き込むような真似はしたくない
追放されて独りになった今、死滅回游に参加することも許されない
ヒーロー活動
実際に口にしてみるとむず痒い
一目散に会議室を出た
やっぱりちょっぴり恥ずかしい
自分の小さな羞恥心と戦っていると、A組のみんなが会議室から出てきた
全員が束になって私に飛びかかってきた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!