2020年12月31日、大晦日
現在時刻は23時49分。
除夜の鐘の音が鳴ることで、時間の経過を感じる。
親は、「年越しなど関係ない、早く寝ろ」と言う。
…めんどくさい親達だ…
明日早く用事があるなど知ったことではない。
窓から外を眺めてみると、分かる。
家中の照明を消している家などうちしかない。
…外は雪が降っていて、空の色は灰色だ。
まるで、新年を迎える気の無い雰囲気。
曲の歌詞のような、綺麗な例えなど私にはできない。
正直、新年がなんだとか興味無い。
ただ、ここで歌を歌っていたい。
…歌っていると、心が落ち着く。
あの人にも、その話をしたっけ。
諏訪頼重。
胡散臭い笑顔と眩しい後光、
そして、55歳とは思えないほど見た目は若い。
五月蝿くて落ち着きのない人だから、教えてあげたんだ。
果たして、私のアドバイスを上手く使っているのだろうか。
ドンドンドンドン
…五月蝿い。こんな時間に誰なんだ…
親は寝てる、仕方ない。
私が出るか…
私が玄関へ向かう最中も、扉を叩く音は止まない。
扉を開ける前に、ドアスコープから誰が来ているのか確認しよう。
噂をすれば…というやつか。
こんな時間に何をしに来たんだあの人は。
いつもの事かもしれないが、様子がおかしい。
…よく見ると、服に血がついている。
いや服だけじゃない、手や足にも。
子供の私でも分かる、明らかに返り血だ。
…念の為、チェーンロックを掛けてから扉を開けよう。
焦りすぎて舌が上手く働いていない。
それもそうか、血塗れなんだから何かあったんだろう。
でも、血塗れな人など、簡単には庇えない。
彼は笑顔で言った。
その時、新年が明ける。108回目の除夜の鐘が鳴った。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!