リリーはリコリスが置いて行った地図を眺め
多種多様の花が暮らす「フルール・ガーデン国」に足を運んでいた
どうしてか、眠る前より巾着の中に入る金貨が増えていた
リコリスが稼いでくれたのだろうか、働く様子を思いかけ、口角を少し上げたあと立ち止まり、不安げな顔を見せたリリー
リコリスのことが心配でたまらないのだろう
どこで眠っているのだろうか、そう思考を巡らせている間に、整備された道を歩いていた
目指す国は顔を上げればすぐそこにあった
果てしなく感じた森に、いつの間にか背を向けていた
色とりどりの花弁の舞うこの国は理想郷
それぞれの花が助け合って、手を取りあって生きている
考え方が合わず、トラブルも多いと言われている多種が暮らす国
しかしこの国では、種による格差もなく比較的平和という
それは政策の厳しさ、王の優しさが国に染みているのだとか
旅が困難な程色褪せれば、ここで暮らそうとリコリスと話したこともあった
そんな国に、一輪で足を踏み入れるのはやはり寂しい
ただ、こんな平和な国だからこそリコリスがいるかもしれない
いや、ここにいてほしい、そう願いながら歩いた
…背後から声がする
振り返った時には遅く、既に手首を掴まれ森に引き込まれていた
何が起きたのかわからない、珍しく瞳孔を開き驚いているリリーは花術でその手を振り払おうと片手をその手に向ける
「旅の者、そちらの国に入ってはいけません」
そう真剣な顔で話す中性的な顔つきの白い花は森の奥へと突き進む
白い振り袖のついたキラキラと輝く服に、動きやすそうな黒いズボン、そんな奇妙な組み合わせに違和感を抱きながらも
そう言われ、手の力が抜けたリリーは無抵抗に森へ引かれた
「…あなたは?」
そう聞くリリーに白い花は溜め息をつき、答えることはなかった
手首は離れない、白い花はどこか慣れを感じる流れ作業のような雰囲気を纏う
見えてきたのは古い山小屋、手入れはされているようだが
「入ってください」
山小屋の扉を片手で開け、手招きをする
先程まで優しく見えた白い花の顔は暗く影が落ちていた
何か良くないことが起きると感じ取ったリリーは抵抗し、花術を使うべく片手を白い花の手招きをしている手に翳した
その瞬間、重い音が響くと同時に、リリーは白い花に蹴られ、小屋の壁に向かい身体を飛ばされる
しかし衝撃はなく、白い花の花術により守られたようだった
背中を見れば、白く大きな花がリリーを守っていた
その花の種はダリアだと理解したリリーは顔を歪め、ダリアを睨みつけた
「はいはい、怖がらない」
リリーの睨みに怯むことはなく、近付いて来る
その様子に普段の表情を忘れ、不安げな表情を見せるリリーはどうやら立ち上がれないらしい
その間に、根によりあっという間に手を縛られ、座らされてしまう
「いやぁ、助かったよ、これで今年のノルマ達成」
ノルマ、手慣れているのはそう言う訳かと苦虫を噛み潰したような顔でダリアを見つめた
リコリスと同じような真っ白な容姿を持つが、リコリスのような優しさはなかった
「…何が目的だ」
普段の優しく落ち着く声ではない、低いドスの効いた声でダリアを睨み付ける
「目的ー?それはあとで教えたげる」
動じることもなく暗い微笑みを見せると、リリーの方へ歩み寄るダリア
殺される?そんな嫌な予感が過りつつ、抵抗することもできなかった
ダリアはリリーの顎に片手を添え、まじまじと顔を見つめた
「あんた、リリーだよね」
確信したような顔で、ニヤリと笑うダリアはリリーにとって悪魔に見えた











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!