第119話

2度目.
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2023/03/17 12:57 更新
「あ? 桜羽休みか?」


朝のHR。

出席を取っている相澤がチラ、と全体を見るも、一同も同様に周りをキョロキョロと見渡している。

何か言いたげに、あるいは誰かに任せるように。


「言いたいことがあるならさっさと言え」


個性を発動させて低い声で忠告する相澤に、背筋が伸びる。

口を開いたのは爆豪だった。


「……遅刻。たぶん」


相澤の鋭い視線が爆豪に突き刺さる。


「たぶんって何だ」

「知らね。誰一人今の状況が分かってねェ」

「ハァ? どういうことだ」


それきり黙ってしまった爆豪に代わり、耳郎が説明し始める。

相澤もまた、同じように眉をひそめた。


「……とりあえず遅刻にしとく」








「あのー、相澤先生……」

「お、来たか」

「はい……すみませんでした」


あなたはおずおずと、職員室にいる相澤に遅刻を報告しにやって来た。

そんなあなたを横目に、相澤は遅刻届けを渡す。


「それで? 屋根の上で寝てたんだったか?」

「うっ……」


目を合わすことなく、興味のなさそうに聞く相澤に、あなたは恐怖心を抱いた。

「あ”ー」だの「うぅ」だの唸ってから、ようやく言葉を口にする。


「その、寝てる間に勝手に体が動くっていうのは、時々あるんです。たとえば朝のランニングとかは半分寝てるので。そういう場合、耳が利くから寝てる間の音をある程度覚えているんです」

「はぁ」

「でも今回は本当に覚えていなくて。5時にセットしたアラームも止めていなかったし、なんならパジャマで屋根の上にいたらしくて。なぜこうなったか分からないんです」

「……はぁ」


気の抜けた返事が2回返ってきて、信じていない様子があなたに伝わってくる。

焦って筆圧が強くなったのか、シャーペンの芯が折れる。


「ちなみに夢は?」

「あー、幸せな夢だったような気がします」

「そうか。……とにかく、今回はワケありの遅刻ということにしておくが、次からは知らねぇぞ。ちゃんと対処しろ」

「はい、ありがとうございます」


遅刻理由の『寝坊』の横に『ワケあり』と書いてもらって、あなたは職員室を出た。

あの相澤もあなたには少し甘いところがあるのだ。

これは1時間目が終わる10分前のことであった。









翌朝の早朝。

緑谷はルーティーンであるランニングを一人行っていた。

今年は例年よりも暑い日が続いていて、10月の半ばでもじわじわと汗がにじみ出る。

緑色の葉が僅かに吹く風で揺れるのを見ながら、普段通りのコースを走っていくのだ。


「あっ、パフォーマンステストがあるんだった。頑張らないと!」


なんて気合を入れつつ一定のペースで走っていると、遠くの方に人影が見えた。


「誰だろう? かっちゃんかなぁ」


近づいていくと、その人影は木にもたれ掛かるように腰を下ろしていることが分かった。

ミルクティー色の長い髪に既視感を覚える。

昨日からA組の皆の心のどこかに存在しているひと。


「桜羽さん!?」


そう確信してからはフルカウルで駆け寄った。

想像通り、座っていたのはあなたであった。

彼女はまた、寝ていた。









「お、緑谷ランニングお疲れ〜」


切島が水を片手に、ダイニングから顔を出す。

と、靴を脱ぐ緑谷の腕の中を見て水を吹き出した。


「さっ桜羽!?」


遠くから「切島汚い!」と叫んでいた芦戸やその他のクラスメイトも「どうした?」「何ー?」などと口々に言いながら集まってきた。

そして緑谷に抱えられる桜羽を見て、またかと顔を見合せた。


「ランニングの途中で座ってるのを見つけたんだ。昨日と一緒で寝てるだけだと思って、ランニング終わってから背負って来たんだけど……」

「うん、寝てるだけだね」

「だよね! よかった」


「とりあえず下ろそう」と誰かが言って、ソファーにあなたを寝かせる。

芦戸はあなたが少しうなされているように感じて、体を揺らした。

ゆっくりと瞼が持ち上がって、ぱちぱちと瞬きをして、眉が下がる。


「また、やっちゃった?」


周りの密集度とベッドとは思えない背中の感触から気づいたようだ。


「大丈夫なの?」


芦戸が心配そうに尋ねる。

あなたは上半身を起こして目を擦りながら「わからない」と答えた。


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