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第3話

二話
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2026/02/23 02:41 更新


憂鬱な授業がやっと終わり、ホームルーム終了の合図が学校中に鳴り響いた。

やっと家に帰れる…
今日は週初めなのもあってかどっと疲れたな。
あなた
  じゃあ、またね。碓井ちゃん!  
碓井
  ん、またね〜ん
…… って、あんた部活は?
明日からなん?
あなた
  部活…?  





あなた
 あ、マネージャー!!!  
すっかり忘れてた!!!!
碓井
 はぁ!?早よ行ってき!! 
あんたシバかれんで!
あなた
  やばいやばい行ってくる!!  





あんなに怖い人…キタサン、とか言ったっけ
あの人からのお説教なんて考えただけで悍ましい


それに、初めての部活なんだから
第一印象は大事…なのに!!


それを忘れるなんて私はどれだけ馬鹿なのだろう
つくづく自分が嫌になってしまうな




時間的にはまだ余裕があったが、足速で体育館へと向かった。



あなた
 ……っ、た 
あなた
 はっ、ごめんなさい!!
 あ、ごめん。大丈夫? 
……って、

通りすがりの人と、軽く肩がぶつかったようだった。
背が高くて見るからに怖そうな人


初部活を忘れてた上に、人様に迷惑を掛けてしまうなんて… なんて、私は自己中心的な人間なんだ。

あなた
 すみません!!急いでて…! 
 あんた、新しいマネージャーの子でしょ
女の子一人で体育館行くの不安だろうから
迎えに来たんだけど
 もしかして余計なお世話だった? 
あなた
 ……え? 
角名
 バレー部の角名倫太郎。
北さんからクラス教えてもらったんだけど
あなたの下の名前ちゃんで合ってる、よね
あなた
 は、はい!あなたです! 
角名さん?は、えっと…
わざわざ私のためにここまで、?
角名
 俺がしたくてした事だから 
あなたの下の名前ちゃんは気にしなくていいよ



スナと名乗ったその人は、私にとことん優しくしてくれた


「 入学したてで道分かんないでしょ 」


と言って、私を体育館まで連れて行ってくれるし
鈍臭い私がはぐれてしまわないように、手まで繋いで私をリードしてくれた。

まるで小さな子供の頃に戻ったような気分で、小恥ずかしさもあったけど


ーー何より、優しいと思った。


私は人の役に立とうとしたら逆にから回ってしまうような間抜けな人間だから、こうして私に親切にしてくれる人は滅多にいない。

だけど…碓井ちゃんといい、この学校には良い人が多いのかもしれないな。

私のために足を運んでくれたという事実に加え、
私が気を使わないように配慮までしてくれるなんて

一瞬でも「怖い人」だなんて勘違いしてしまった過去の私を殴りに行きたい。


角名
 こっちから行くと近道だから 
覚えとくといいかも
あなた
 は、はいっ! 
あなた
 何から何までありがとうございます… 

その近道というルートから行ったからか、
案外あっという間に着いたな。

体育館の中は当たり前に見えないけれど、
バレーをやっていることだけは音で分かった。

中で跳ねるボールの音が外にまで響いていて
その音にどこか懐かしさを感じる
角名
 あー、感謝するなら
俺じゃなくて北さんに
あなた
 ?なんで北さんが出てくるんです? 
角名
 あー…えっと 


角名
 あなたの下の名前ちゃんのこと案内してやれって 
実は北さんに言われたんだよね
あなた
 …… 
あなた
  …… え!?!? 
角名
 ( 俺の手柄にできると思ったのにな )

スナさんの機嫌が少し悪くなったように見えるけど
気の所為だろうか、

いや、それよりもだ。
あの北さんが私を案内しろって言った?

いや、私は北さんがどういう人なのか知らないけど
何となく怖いイメージがあったから、意外だった

私の見た目がいかにも馬鹿っぽくて不安に思ったとか…?
スナさんにも言えるけど、人は見かけによらないんだな

角名
 じゃ、準備できた? 
あなた
 あ、ちょっと緊張がまだ… 
角名
 大丈夫、俺がついてるから 

スナさんが私の手をさっきより強く握った。
そしてもう片方の手で体育館の扉に手をかける。

初めての部活で緊張や不安も大きかったけど、スナさんがこんなに優しくしてくれたから心が落ち着いてきた

今度ちゃんとお礼しないとな。




ーーーと、呑気に考え事をしていたら

スナさんが体育館の扉を開けた。


私よりひとまわりもふたまわりも大きいような選手さん達がバレーに熱中している。

あぁ、今度から私は この人たちを支えていくんだ
そう考えると、胸が踊る感じがする




私たちの存在に気付いた北さんが全体に一声かけると
さっきまでバレーをやっていた人達の動きがぴたりと止まり、

スポットライトが当たったように全員の視線が私に集まった。




 あれがマネージャーの子…!? 
めっちゃ可愛ええやん!!
 ツム声でかいわ
北さんに聞こえんで
 どっちも聞こえとるわ 


さっきまでテンションの高かった2人が、凍ったみたいに大人しくなった。

これが北さんの力…なのだろうか。

というかこの2人、顔がよく似てる。血縁関係なのかな
……名前覚えるの、苦労しそうだな

  角名、わざわざすまんな 
角名
 むしろありがとうございます、楽しかったですよ 

どうやら、みんな私が来ることは知っていたようで
大して驚きもせず私を囲むように集まってきた。

こんななよっちい私が入部したら険悪な目で見られないか心配だったけど、杞憂だったのかも。

角名
 自己紹介、できる? 
あなた
 は、はい! 

スルッ、と スナさんの手から私の手が離れた。

今までスナさんによって抑えられてた緊張が
また強まっていくのを感じる

だけど、いつまでもスナさんに甘えていられないよね

あなた
 えっと…1年2組、あなたの名字あなたの下の名前です! 
あなた
 私はバレー経験ないんですけど…  
マネージャーとしてこれから
精一杯努めさせて頂きます!
あなた
 よろしくお願いします! 


私が90度で礼をすると、
部員さんたちも続くように『お願いします!!』
と声を張り、礼をする。

皆さん悪い人ではないのは確か(だと思う)んだけど
図体が大きいからか威圧感を感じて
この絵面が少し怖かった。

 なぁなぁ、あんた何で標準語なん? 
引越して来たん?!
あなた
 ひゃ…っ!?! 

挨拶が一通り終わり、張り詰めた空気が緩まると
さっきのテンション高い片方の人が私に迫る。

人から興味を持たれることには長年慣れることができず、つい怖気付いて後退りした。
角名
 侑、名乗りもせずグイグイ来られたら 
あなたの下の名前ちゃんが怖がるでしょ
あなた
 い、いえ全然…! 
私のことはお気になさらず…
 今からするつもりやったわ!! 
ん゛ん……
宮侑や、これからよろしくな〜♡
 おいツム!!抜け駆けは卑怯やぞ! 
……俺は宮治、あなたの下の名前ちゃんって呼んでもええ?
あなた
 ど、どうぞご自由に…! 

入って早々、随分と愉快な人達だ。
私はここでうまくやっていけるのだろうか。

唐突に大きな兄弟らしき人に囲まれて戸惑っていたとき、そんな私に気付いたスナさんが

「あなたの下の名前ちゃんはこれから忙しいから ナンパは後にしな」
と、2人をあしらってくれた。

不貞腐れていたようだけど、あの宮さん達は
私をからかっていたのだろう。
私は弱そうだから、昔から舐められやすかったし。
あなた
 …あ、そういえば私が来たとき
既に練習始まってましたよね!
あなた
 遅刻してしまったなら謝ります、 
本当にすみません!!
 え?ああ、気にせんでええよ 
皆はよ来てバレーやっとるだけやから
あなたの名字は遅刻しとらんしな
あなた
 そうなんですか…!? 
皆さん、熱心なんですね!
 …ふふっ。ここ、
バレー馬鹿しかおらんねん


あなた
 …… 
あなた
 そう、なんですね 

バレー馬鹿、という言葉を聞いて
東京にいた頃の友人が想起される。


私は、もう二度と会えないかもしれない
あの二人を忘れたくなくて
バレーを近くで見れる部活を選んだのかな

 ーーほな、詳しい事は
コーチに聞いた方が早いやろ
何か分からんことあったら来や
あなた
 はい、ありがとうございます! 


マネージャーの仕事は、大方スポドリを作ったり部のマネジメントを行ったりするのだろう。

…… どれも経験は無いけど

こういうのは慣れだよね。多分。






 これから、よろしゅうな 
あなた
 …! はいっ! 













 き、北さんが…2回も、笑った…? 
 明日は嵐やな…… 
















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