“REI side”
船の中に入ったけれど、なんだか不気味なくらい静かになった気がする。
風の音と波の音は聞こえているけど、さっきまで大きな音で響いていたエンジンの音が聞こえない。
そのせいか、心臓の音がドクンドクンと聴こえる。
ユジナの顔からは、余裕が消えていた。
そんなことを言っていたその時、その瞬間、足元から突き上げるような衝撃が襲う。
ガタガタと震え出したのは、船体か、それとも私の膝なのか…
廊下を駆け抜けていくスタッフさんの叫び声は、船全体に響き渡った。
救命胴衣——。そのオレンジ色の塊が、死の宣告に見えて指先が震える。
隣で、イソが私の裾をぎゅっと掴んで泣きじゃくっていた。
イソの小さな手の震えが、私の腕を通して心臓まで伝わってくる。
震える声でそう言いながら、私は必死でイソの肩を抱き寄せた。
自分だって立っていられないほど怖いのに、今はオンニでいなきゃいけない。その責任感が、余計に恐怖を煽る。
すぐ横で、ウォニョニが私達を鼓舞した。
ウォニョニの言葉は力強かったけれど、私を抱きしめる指先が微かに震えているのを、私は見逃さなかった。
怒号に背中を押され、私たちは逃げるようにボートへ飛び込んだ。
お願い…生きたいよ…
さっきステーキを食べていた時の言葉が頭をよぎる。
“無人島に行ってもこの味は忘れられないよ。”
あんなの、ただの冗談だったのに…
視界を覆い尽くすほどの巨大な高波が、私たちの小さなボートを無慈悲に飲み込んだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!