第9話

第9話 離せる訳ない
57
2026/01/05 01:18 更新
Nico  side

世界一優しいキスをしたあと、
このまま撮影に戻るなんて無理だって思った。
……とにかく離したくない。
今だけじゃなくて、ずっと。

りほが腕の中で小さく呼吸してるのを感じながら、
そのあたたかさを逃したくなくてそっと問いかける。

「……りほ、今日泊まってく?」

一瞬息を飲んで、りほが顔を押しつけてくる。

「…ん、泊まる、」

返事が想像よりもずっと早くて甘くて、
ほんの少し震えてて、可愛すぎて。
言い方があまりにも恋人だった。

腕の中で甘えてくるりほの体温が『離さないで』って無言で言ってくるみたいで、離すわけないじゃんって心の底から思った。
あれから少し時間が過ぎて、
まだまだりほは私の腕の中で甘えっぱなし。

「ねぇ、りほ?」

「んー、なに、」

「お風呂どうする?」

問いかけると、りほがゆっくり顔を上げて目だけでこっちを見つめてくる。

肩に置いていた手をぎゅっと掴まれた。

「…一緒にはいる」

そう言った瞬間のりほの頬がほんのり赤くなってて、
その覚悟みたいな甘さが可愛すぎて胸がぎゅってなる。

「じゃあ、準備する?」

「……ん。でもまだ離れたくない」

りほが私の服をつまむ。
まるで猫みたいに“ちょっとだけ待って”って訴えてくる。

「じゃあ、このまんま連れてく?笑」

「それは恥ずい、笑」

そう言いながら手はずっと離さない。
立ち上がるとりほがそのまま指を絡めてくる。
お風呂場に向かうまでの短い距離でさえ息が詰まりそうに甘い。
浴室の前で、りほが小さく見上げてくる。

「……にこ、手、離さないでね」

「離さないよ」

それだけでりほの肩がふっと緩む。
世界一愛おしい私の彼女。

「……ね、見すぎじゃない、?笑」

「え、あごめん、笑」

「…そんなに惚れてんの?笑」

冗談みたいに言うのに目だけはどこか不安そうで。
だから私は迷わず言った。

「ん、惚れてるよ
……りほが思ってるよりずっと。」

言った瞬間りほがまるで“その言葉信じていいの?”って確かめるみたいに指先をきゅっと絡ませてくる。

その仕草が愛しくて、可愛くて、
つい抱き寄せてしまった。

「りほ、信じていいよ」

「…ん、ありがと、」

その声がまだ少しだけ震えてて、
私はまたそっとりほを抱き寄せた。

この子を不安にさせる世界ごと抱くつもりで。

プリ小説オーディオドラマ