「ナイトメア様。」
そう俺を呼ぶ声は、いつも憎たらしいほど甘くて、不快になるほどのネガティブを含んでいた。
「ナイトメア様、今日はどのAUへ行かれますか。」
『お前にそう聞く権利などあったか?』
『図に乗るな。』
そうやって突き放しても…
「申し訳ございません。」
なぜかポジティブを撒き散らす。
気色が悪い。
『不快だ。とっとと失せろ。』
「はい。失礼いたしました。」
いつも、俺の書斎から出ていく足音は軽快で。
気づかないとでも思っているのか、あるいは気づかせたうえで俺が踊らされているというのか。
馬鹿なあいつのことだ、前者に決まっている。
『…ドリーム。』
ふと、この多元宇宙で1番憎い奴の名前が溢れた。
しかし、皮肉な事に、そんな俺の生きる理由も、世界を破壊して回るのも、手駒を集めるのも、全て、元を辿ればドリーム関係なのだ。
…いや、ここに留まる理由はドリームじゃないか。
そんな事を考えていると。
「Oい、ナiトめア。」
厄介な奴が来たか。面倒だな。
『あ?なんだ。』
「baグ、いネェけDO」
…ほう。面白いこともあるもんだ。
『脱走か、光AUの奴らか。』
「突然ハんNOウが消えTEやGAっタ。」
「あいツ、ポータルなンてヒラKEなかッたYOナ。」
あいつは出来損ないだからな。当たり前だ。
『光AUの仕業が濃厚、ねぇ』
まぁでも、あいつを連れ戻したところでこちらの利益はない。
逆に、不利益だ。
『放置でいい。』
「Aっソ」
…消えた、か。
欠陥品。
どれをとってもこの言葉が似合うやつだ。
『…待てよ。』
何かが足りない欠陥品。
欠陥品ということは必要なパーツさえ埋めてやればどうにでも出来るということだ。
容易くこちらを裏切らせることも。
あいつはエラーとよく話していた。
エラーが口を滑らせていた可能性がある。
ああ…
『やはりニンゲンなど殺してしまえばよかった。』
『………』
結局、あいつと再会したのは数年後だった。
まぁ、俺が知っているあいつとは懸け離れていたが。
「…」
「…説得に時間はかかったし、感情が欠落していたけれど、今は安定してるし、僕達の味方だよ。」
「エラーから色んな事聞いてたみたいだし、すごく有能な凄い子で…」
ああ…大嫌いだ。
『本当にいつも通りどうでもいいことをペラペラしゃべるのが好きだな。ドリーム。』
気づけばそう口からこぼれたのも、今じゃいい思い出だ。






![絵を描いて載せるだけ [表紙変えた]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/673344a2504528a6af5ba7a81ef6f5cb6fd2df5d/cover/01KKEJV4MSJBNY7SQQK23GRDJM_resized_240x340.jpg)





編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!