第45話

第四十四話 白の兄 黒の弟
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2025/11/29 06:58 更新
あなた
それでね、それでね!
あなた
不死川さん、
ワンちゃんにおにぎりあげてたんだよ!
あなた
すっごく優しいな〜って
思って、ずーっと見てたの!!
普段、不死川さんのことを話しても
共感してくれる人なんてほとんどいない。
だからだろうか、私の気分はいつになく高揚していた。
あなた
それでね、不死川さんが
すっごく優しい顔で笑ってたの!
不死川 玄弥
嗚呼、兄貴は笑うと、
ものすげぇやさしい顔になるよな。
あなた
うん!
不死川 玄弥
.....てか、何でそんなこと知ってんだ?
あなた
え?
不死川 玄弥
兄貴がおはぎ好きとか、
一般の隊士が知ることなんてねぇだろ。
嗚呼、なるほど。
不死川さんは自分の好きなものとか
全然人に教えないもんね。
あなた
えーっと、
私が不死川さんの継子だから.....かな。
不死川 玄弥
お前兄貴の継子なのか?!
あなた
うん。
「あの兄貴が....」って、不死川君はすっごく吃驚してる
不死川 玄弥
初めて聞いた
まぁ、言ってないし、初対面だもんね。私達。
不死川 玄弥
なぁ。
あなた
なぁに?
不死川 玄弥
兄貴の継子ってお前だけなのか?
あなた
え、うん。
不死川 玄弥
じゃあ、あの噂のやつってお前なのか.......
あなた
噂?
不死川 玄弥
兄貴の妹弟子が、
柱全員の継子だっていう噂。
不死川 玄弥
結構有名だぞ。
あなた
え、知らない。
自分の噂なんて、普通聞かない......よね?
不死川 玄弥
柱全員の継子なんて普通ありえねぇし、
嘘だと思ってた。
あなた
そりゃそうだよね。
私だって、未だに夢かと思ってるもん。









不死川 玄弥
お前が育手のとこにいた時、
兄貴ってどんな感じだったんだ?
あなた
えっ、えーっとね、優しかったよ。
あなた
言葉はキツイときもあったけど、
殴ったり、蹴ったりはされなかったし。
あなた
あとは.......たまに会ったら
ご飯ちゃんと食べてるのかってよく聞かれてたかな
あの頃は、よくお萩をもらって.....
それから、ガキが鬼狩りなんてできるわけねぇって
よく言われてたっけ。
不死川 玄弥
お前も、飯ちゃんと食ってねぇのかよ。
不死川君?!呆れた顔で私を見てるけど、
"も"ってことは自分も食べてないってことだからね。
同じ穴のムジナってやつだよ?!
あなた
あはは.......食べてないけど、
結構後悔はしてるんだよ。
あなた
子供の頃に、
もっと食べとけばよかったなって
今、思うよ。
これは、本当。
鬼殺隊に入ってから後悔しなかった日はないくらいの
自分にとって人生で二番目くらいに馬鹿な選択。
あなた
ちゃんと食べてなかったせいで、
胃は大きくならなかったし、
あなた
筋肉もつかない、背も伸びない
体重だって増えないし、
あなた
よく骨折れるし、怪我治りにくいし、
あなた
おまけに鬼に舐められるし、
チビだなんだと馬鹿にされる。
あなた
本当に、鍛錬だけを優先したって
良いことなかったよ。
あの頃の私は、朝ご飯食べたら良い。くらいの考えで
生きてたしなぁ。ご飯抜くのも当たり前だったし、
ずーっと鍛錬だけに時間を充てようとしてた。
強くなることに近道なんてないのに。
あなた
だからさ、不死川君は
ちゃんと食べた方がいいよ。
不死川 玄弥
、、、
不死川君は私の話をとても真剣に聞いてくれていた。
あなた
まぁ、君は体格良いし、私みたいな心配は
しなくて良いのかもしれないけどね。
あなた
でも、腹が減っては戦はできぬって言うでしょ。
あなた
だから、食べよう?
そう言ってお萩をもう一度差し出した。
不死川 玄弥
、、、
不死川君は無言だったけど、頷いてくれて
不死川 玄弥
.....ありがとな
受け取ってくれた。
あなた
(パアァッ)
あなた
うん!
こうして、二人で縁側に座りお萩を頬張る。
あなた
あ、ねぇ、不死川君。
不死川 玄弥
何だよ
あなた
不死川君のこと、玄弥君って呼んでもいい?
あなた
不死川さんと混じっちゃいそうだから。
不死川 玄弥
はぁ!?
あなた
え.....ダメ.....?
不死川 玄弥
あ、いや、駄目じゃねえけど......
あなた
よかった〜。
ありがとう、玄弥君!
不死川 玄弥
、、、
あなた
あ、私のことは、あなたって呼んでね。
不死川 玄弥
はぁ?!
何言ってんだコイツ、みたいな顔された。
そんなに変なこと言ったっけ?
 




.....あれ?
また、玄弥君の温度が上がってる...... 何で?
あなた
あ、そうそう。
あなた
玄弥君、玄弥君!
あなた
これ、不死川さんに渡してくれないかな?
そう言ってお萩の入った重箱を膝の上に置いた。
不死川 玄弥
いや、自分で渡せよ。
あなた
渡そうとはしたんだけど
不死川さん任務でいなかったの。
あなた
だから、玄弥君に預けちゃだめかなぁ。
不死川 玄弥
俺は......
兄貴とは会えねぇよ。
急に悲しそうな温度に変わった玄弥君。


....ど、どどっどうしよう.....何か、事情があるのかな?
不死川さんに会えないって、
兄弟なのに仲良くないのかな......?
私何か.....言っちゃダメなこと言っちゃった?!
あなた
もしかして、不死川さんと喧嘩してるの?
あなた
それとも、何かあったのなら.....
聞かせてほしいな.....
あなた
あ、嫌だったら、言わなくて良いから.....
変なこと言って、ごめんね......
こんな苦しそうな温度がするこの子を
放っておきたくはないな.....でも、無理強いもダメだし....
玄弥を見つめるあなたの瞳には、
悲しいくらいに温かな優しさの色が浮かんでいた。
不死川 玄弥
、、、
不死川 玄弥
いや.....あなたの名前の初めの文字(カイ→カ)、あなたは.....悪くねぇよ
不死川 玄弥
.....話、聞いてくれんのか......?
あなた
うん!もちろん!!
不死川 玄弥
ありがとな.......






玄弥はしばらく黙っていたが、
あなたの瞳に促されるように
ポツポツと玄弥たち兄弟のことを語った。
父がどうしようもない男だったこと。
人に恨まれた挙句、刺されて殺されたこと。
兄と二人、母を支えながら
どうにか家族で暮らしていたこと。
ある晩、鬼が家にやって来て弟や妹たちを殺したこと。
自分も殺されそうになっていたところを
兄に助けられたこと。
外に出ると、血まみれの兄と母親の死体があったこと。
皆を殺した鬼は母の変わり果てた姿であったこと。
兄は家族を守る為に必死に戦った挙句、
最愛の母を手にかけてしまったこと。
そんな兄を自分は罵倒したこと.....。
人殺し、と___
不死川 玄弥
兄ちゃんは許してないんだ。
酷いこと言った俺を。
不死川 玄弥
兄ちゃんの想いを全部、
踏みにじった俺のことを。
あなた
玄弥君.....
不死川 玄弥
だから、口を効いてくれない。
弟とすら、認めてくれない。ようやく会えたのに。

どうしても謝りたくて、追いかけたのに。
___テメェみたいな愚図。
俺の弟じゃねぇよ。鬼殺隊なんかやめちまえ。
やっと言葉を交わせたのに。
兄から浴びせられたのは、ぞっとするほど冷たい視線と
拒絶の言葉だった。
目の前から消えろとさえ言われた。









玄弥君の口から語られたものは、
変えようのない過去と、苦しさ、悲しみ、自己嫌悪


一人で背負うには大きすぎるほどの重荷。
あなた
(そんなことが、あったんだ......)
何て言ったらいいんだろう。
今、玄弥君にかけてあげられる言葉は何なんだろう。
玄弥君の話を聞いてわかった。
さっきから玄弥君の言葉の端々から感じていた温度。
その正体が



悲しみ、苦しみ、後悔、そして、諦め。
もう、不死川さんと仲直りすることも、
諦めてしまおうとする温度。
でも、ダメだよ......
ここまで頑張ったのに、諦めるなんて
最後まで、絶対諦めないでほしい。
だってこのままじゃ後悔するから。
捨てきれない想いがあるのなら、苦しもうが
その大切な想いを叶えてほしい.....!!
不死川 玄弥
やっぱり、あの晩に......
俺と兄ちゃんは、兄弟じゃなくな_____



.....やめて......そんなこと、言わないで!!
あなた
っ.....!!

























   


ギュッ


























気づけば私は、玄弥君の手を掴んでいた。

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