読みにくかったらごめんね☆
ハヤトは激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。ハヤトには政治がわからぬ。ハヤトは、村の笛吹きである。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明ハヤトは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た。ハヤトには父も、母も無い。女房も無い。十六の、元気な幼馴染と二人暮しだ。この幼馴染は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。ハヤトは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。ハヤトには自称大親友があった。ヒョウである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちに ハヤトは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなハヤトも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若い衆は首を振って答えなかった。しばらく歩いて少女に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。少女は答えなかった。メロスは両手で少女のからだをゆすぶって質問を重ねた。少女は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
ハヤトは頭を抱えた
買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏じゅんらの警吏に捕縛された。調べられて、ハヤトの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。ハヤトは、王の前に引き出された
友達、ヒョウは、深夜、王城に召された。熊五郎伯爵の面前で、密かにヒョウに耳打ちをした。ヒョウは無言で首肯うなずいた。友と友の間は、それでよかった。ヒョウは、その場に残された。ハヤトは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。
ハヤトはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、椿が丘村へ到着したのは、翌あくる日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。ハヤトの十六の幼馴染も、きょうは幼馴染の代りに羊群の番をしていた。よろめいて歩いて来る幼馴染の、疲労困憊こんぱいの姿を見つけて驚いた。そうして、うるさくハヤトに質問を浴びせた。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!