第3話

 3 記憶の中はいつも
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2026/08/02 12:58 更新


 お揃いを使う為だけに、本を買った。

 手に収まる文庫本の間に居る、
 大事な思い出。

 小説は適当に選んだ。
.
まあ、いっか


 それを無造作に鞄に入れて

 またいつもの街に溶け込む。

.
行ってきます


.
らん、はよ
.
おはよ


 隣で笑う彼は、
 いつも通りの格好。

 空は澄んでいた。

.
今日から体育祭の準備、始まるらしいね
.
聞いたよ、こんな暑いのに
.
ね、倒れたらどうしよ


 冗談交じりにそう言って。

 「その時は助けに行くから」

 なんて、王子様みたいなこと
 言ってくれるよね。

.
……なあ、らん
.
ん?なあに
.
大人になっても、一緒に居たい?
.
……うん
.
じゃ、俺が助けてやらねえとな
.
はは、ありがと


 無理だって分かってる。

 けれど、どこかで、

 何処かで

 待とうとしている、自分が居た。




 照りつける太陽。

 自転車で坂道を下る。

.
あちー、燃えそう
.
まだ7月なのにね
.
8月になったら灰になってたりして
.
燃えてんじゃん


 くだらない話に花を咲かせて。

 この時間だけ

 何も考えないでいられる。

.
テスト勉強、ちゃんとしてんの?
.
うわ、やべ、
.
赤点取るなよー
.
う、うるせ、別にいいだろ、
.
一緒に帰れなくなるじゃん
.
……んな、可愛いこと言って
.
俺が絆されると…
.
思ってる♡
.
……はぁ、頑張るよ、赤点回避の保証は無いけど
.
保証書付きでお願いしまーす


 この時間も

 もう。



 高一の、春。

.
すんません、近くの奏高校知ってますか?
.
……あ、俺?
.
あ、はい
.
俺も今日入学なんで、一緒に行きましょ
.
ありがとうございます、…入学ってことは、同級生?
.
だね、タメ使おう
.
おう、よろしく


 まだ友達だった、あの頃の。

 懐かしいね。


 覚えてくれてる?

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