お揃いを使う為だけに、本を買った。
手に収まる文庫本の間に居る、
大事な思い出。
小説は適当に選んだ。
それを無造作に鞄に入れて
またいつもの街に溶け込む。
隣で笑う彼は、
いつも通りの格好。
空は澄んでいた。
冗談交じりにそう言って。
「その時は助けに行くから」
なんて、王子様みたいなこと
言ってくれるよね。
無理だって分かってる。
けれど、どこかで、
何処かで
待とうとしている、自分が居た。
照りつける太陽。
自転車で坂道を下る。
くだらない話に花を咲かせて。
この時間だけ
何も考えないでいられる。
この時間も
もう。
高一の、春。
まだ友達だった、あの頃の。
懐かしいね。
覚えてくれてる?












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!