阿部side
背後から声をかけられて、反射的に振り向く。
その呼び方をされるのは、ずっと前から当たり前だった。……はずなのに、今日はなぜか引っかかる。
画面を覗き込むと、昨日一緒に整理したフォルダが開いていないだけだった。場所を指差すと、佐久間は「あ、そこか」と軽く笑う。
冗談みたいな口調。
でもその言葉に、胸の奥がきしむ。
何気なく返したつもりだった。
けれど佐久間は、一瞬だけきょとんとした顔をする。
それだけ。
否定も、肯定もなく、すぐに話題を変える。
昼休み、二人で並んで歩く。
歩幅は自然に揃っているし、会話の間もいつも通りだ。なのに、佐久間の視線がときどき、探るように俺を見る。
心臓が跳ねた。
曖昧な言葉。
それでも確信に近すぎる。
納得していない顔。でも、それ以上は踏み込まない。
代わりに、いつもの距離まで近づいてくる。
佐久間は小さく笑う。
その瞬間、はっきり分かった。
出来事が消えているんじゃない。
関係が薄れているんでもない。
――記憶が壊れているのに、呼び方だけが残っている。
それがどれほど異常で、どれほど残酷なことか、佐久間はまだ知らない。
知っているのは、俺だけだ。
そう言うと、佐久間は素直に頷いた。
その一言が、
これから何度も俺を救って、何度も傷つけることになる。
そんな予感だけが、確かにあった。
最後の一言コメント(?)やめようと思います。(ネタ切れ)
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!