これはまるで御伽話のような
すでに終わりを迎えた話。
ある不老不死の人の長すぎる人生から切り出した物語。
それは、かつてこの地を絶望に陥れた悪を滅ぼした勇者とのほんの短い旅の記憶。
物語は終わり、勇者は永遠の眠りについた。
穏やかでどこにでもあるような日常をここに残して
時の流れは無情で、貴方のこともみんなの記憶から消えていく。
ここで生きた軌跡も錆び付いていく。
それでも、いつだったか貴方が呟いた願いも今も私の中で生き続けている。
悪を倒すのに協力しただけだった。
同じ道を歩んでいただけだった。
それなのに、いつの間にか私の頬を伝う涙の理由を知りたい。
知りたいんだ。
「今更?」って思われてもいい。
ただ、共に歩んだ旅路を辿れば、そこに貴方は居なくても見つけられる気がした。
物語は続く。例え勇者がいなくても。
私は、1人の旅へと出かけた。
立ち寄った街で出会った人々の記憶に残る貴方は相変わらずお人好しで、カッコつけてばっかりで…
あっちこっちにある貴方のシンボルはそこで勝ち取った平和の証なんだってさ
それすら、未来で私が1人にならないようにした目印なんじゃないかって、
あの旅をいつでも思い出せるようにした物なんじゃないかって考えちゃうんだよ。
まるで御伽話のような
すでに終わりを迎えた証。
私を変えた出会い。
私の100分の1未満の旅路。
例え、君の勇気が、覚悟がいつか誰の記憶から、
みんなの記憶から消え去ってしまっても私が未来へ伝えるから…
あの日、君の手を取った。
君と出会った日に始まった
くだらなくて
思わず「ふっ」と笑ってしまうようなありふれた時間が愛おしい。
知りたいんだ。今更だけど。
後ろを振り返ると優しく微笑んでいる君がいるから
私の新たな旅の始まりは、君が救ったこの地に新しく芽吹いたこの命と共に…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。