第5話

甘い嘘に溺れておやすみ
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2024/12/18 07:00 更新


※ 少し時系列を捏造しています。
















そういえばそろそろクリスマスだね。




談話室の片隅に置かれたクリスマスツリーに
色とりどりの装飾を飾り付けながら彼女は呟いた。



周りのレトロな家具とはあまり似つかわしくないが
彼女が絶対にこれが良い、と言うから監督生の権限で特別に置いた。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
もうそんな時期か、早いな

ツリーの一番上に星型の装飾を乗せようと
精一杯背伸びをする彼女の手からそれを奪い、先端の尖った部分へと置いた。
あなた
ドラコ、もうちょっと右!

少し離れた場所から指示をする彼女に苦笑いをらしながら
数センチ程修正した装飾が見えるように後退りする。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
これでどうだ?
あなた
ばっちり!
ありがとうドラコ、助かったよ

柔らかい笑みを浮かべる彼女の頭を撫でようとしたが
すんでのところで止める。


行き場のなくなったその手をわざとらしくないように
彼女の肩へと持っていき、ありもしないゴミを払う動作で誤魔化した。
あなた
何かついてた?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
ん?あぁ…
あー…、そういえばクリスマスはどうするんだ?

僕の言葉に目を輝かせる彼女を見て
あぁ、聞かなければよかったと後悔したが既に遅い。
あなた
聞いてくれる?
実はね、クリスマスイヴの日にデートしようって!
セドリックが言ってくれたの!

その名前を人伝ひとづてではなく、
彼女の口から何度聞いただろうか。

名前を聞くだけで
虫唾むしずが走る程嫌悪感けんおかんが押し寄せてくる。




頭が痛い。

あいつの話を聞く度に
こめかみの辺りが脈打つように痛みだす。






デートに誘われた状況を嬉しそうに話す彼女を
ぼんやりと見つめながらソファへと腰を下ろした。



低反発のふんわりとしたソファに身を預ければ
自分の体が深く、深く下へと落ちていく感覚におちいる。




それからこの前セドリックにね。


僕の気持ちとは裏腹に幸せに満ちた表情で話を続ける彼女に
気のない相槌を打ちながら足を組んだ。







五年間君のことを想い続けている男が
こんなにも近くに居るなんて考えもしないだろうな。


あいつよりも君を愛していて、大切に思っていて


君の為ならどんなことでも出来る僕のことなんて




きっと、眼中にないだろう。







あなた
……コ、……ドラコ!聞いてる?

彼女の声で我に返った僕は
あぁすまない、それだけ呟き左右の足を組みかえた。



心配そうに見つめる彼女の頭を
少しだけ躊躇ちゅうちょしながら撫でると、体調悪いの?という言葉と共に温かい手が額に当てられた。




僕は今、どんな顔をしてるのだろうか。





ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
…大丈夫だ、少し頭が痛いだけ
それで?話の続きは?
あなた
もう…、そんなことより
今はドラコの体の方が大事でしょ

"そんなことより"。

あいつの話よりも僕を優先してくれる事が凄く嬉しくて不覚にも笑いがれてしまった。




あぁ、非常に単純なんだな、僕は。




君の頭が僕でいっぱいになってくれたら
これ以上の喜びを手に入れられるだろうか。






その為には…、









あいつを、消さなくては。





















時間が経つのは早いもので今日は12月24日、クリスマスイヴだ。



いつも通り談話室のソファに腰掛けていると
上機嫌な彼女が部屋から出てきた。



薄い水色のワンピースにふんわりとしたニットのボレロを羽織り、高い位置でポニーテールに結んだ髪の毛を揺らす彼女は今まで見た中で一番愛らしくて、輝いていた。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
おはよう、あなた
凄く綺麗だ
あなた
ふふっ、ありがとう
セドリックはなんて言ってくれるかな

ずきり、と痛むこめかみを抑えながら
僕は頭を軽く横に振った。






なんてことない、大丈夫だ。


すぐに、すぐに良くなる。





小さく息をき、姿見鏡すがたみで全身を確認する彼女の名前を呼んだ。


小走りで僕の近くに駆け寄り何?と首を傾げる彼女に
無意識にごめん、と一言呟いていた。
あなた
ん?何が?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
…いや、なんでもない
そろそろ朝食の時間だ
あなた
もうそんな時間!?
急いで行かなくちゃ…
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
あぁその前に…、後ろの髪飾りが曲がってるぞ

ごめん直してくれる?、背中を向ける彼女に対し
ローブから取り出した杖を静かに向けた。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
…僕のことだけを見てくれ
あなた
え、今なん、
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
ブリビエ忘れよイト

緑色の光が彼女へと当てられるのをただ黙って見守った。




あいつとの会話、思い出全て…、
存在丸ごと消し去ってくれることを願って。








数秒程しか経っていないはずだが
何だか凄く長い時間そうしていた気がする。




光を無くした杖を元の場所に戻すのと同時に
彼女が振り返りぼんやりとした表情で口を開いた。
あなた
あれ…?
私…、……え、何でこんなにお洒落してるの?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
……覚えてないのか?
今日はホグズミードに出掛けようと話してたじゃないか
あなた
ドラコと…?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
当たり前だ、…他にいるのか?
あなた
そ、か…、そうだよね
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
あぁ、……僕以外に、いるはずがない

今までずっとそうしてきたように、
彼女の頬へそっと手を当てる。

熟した林檎みたいに耳まで赤く染まる彼女を見て
口角が上がりそうになるのを必死で堪えた。




照れ隠しのようにやめてよ、と視線を逸らそうとする彼女の肩を掴み、今朝方右ポケットに入れておいた縦長の小さな箱を手渡した。
あなた
何…?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
夜に渡そうと思ったけど…
今の服装にきっと似合うはずだ

困惑の表情を浮かべる彼女だったが
箱を開けた瞬間、その顔は喜びに満ちた表情へと変わった。



彼女の手の中でちゃり、と音を立てるそれは
シルバーのチェーンに真ん中に控えめな大きさのハートがあしらわれており、中にはピンクゴールドの宝石が埋まっているネックレスだ。





数ヶ月程前に一緒に出掛けた時
このネックレスから視線を外さない彼女を見逃さなかった。





どんな結果になろうと
このネックレスは絶対に渡そう。


そう考えていた。







もちろん、

あいつの記憶を消してから。
あなた
これ…前から欲しいなって思ってたやつ…
私に?いいの?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
あぁ、僕がプレゼントを渡すのも
こういうことをするのもずっと好きだった君にだけだ

ネックレスを首元に回し付け、
伝えたかった言葉を紡ぎながらきらり、と光るピンクゴールドの宝石にキスを落とした。



先程よりも更に赤くなった頬を両手で抑え、
凄く嬉しい…、と小さく呟く彼女をそっと抱きしめる。






もっと、もっともっともっと。




僕のことしか考えていない君が見たい。







名残惜しくも体を離し、
幸せそうな表情でありがとう、と伝えてくれる彼女の手を取り僕達は大広間へと足を向けた。
























日常とは異なった賑わいを見せる大広間を見渡しながら
僕達は"いつもと違い"、隣同士で席に着いた。


その様子を静かに見ていたパンジーが
僕の方へ少しだけ距離を詰めながら小声で話しかけてきた。
パンジー・パーキンソン
パンジー・パーキンソン
"成功"したのね?ドラコ
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
……あぁ
パンジー・パーキンソン
パンジー・パーキンソン
そう…
あなたを悲しませないって約束、絶対守りなさいよ
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
もちろんだ
あなたを幸せに出来るのは僕しかいない

僕の言葉を聞き納得したように頷くと
彼女の元へ近寄り「カボチャスープでいい?」と存分に甘やかしているような声色で話しかけた。




パンジーを敵に回すと怖いだろうな。


そんなことを考えながら
美味しそうにスープを飲む彼女を頬杖をつきながら見つめた。


























久しぶりに楽しく、ゆったりとした朝食を終えた僕達は
パンジーや他の寮生達に挨拶を交わし、ホグズミードへと出掛ける準備をすべく大広間を後にした。






どこか行きたい店はあるか?
そんなことを話しながら廊下を歩いていると、
不意に黒い影が横切ったような気がして顔を上げる。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
ちっ…

彼女の前へ立つ人物の顔を見て
僕は無意識のうちに舌打ちが出ていた。





…やっぱり来るだろうな。


朝食を食べる約束をしていた彼女が
まるでそんなこと"忘れているかのように"僕と楽しく過ごしているのだから。




先程から気付いてはいた。
彼女を心配そうに見つめる瞳が、時折嫌悪感けんおかんを含んだ視線に変わり僕を睨んでいたことを。




昨日までは僕自身がそうだった。





何でこいつと?

楽しそうに何を話している?



なんで?どうして?







君の隣は、僕のはずなのに。







セドリック・ディゴリー
セドリック・ディゴリー
あなた…、あー…、朝食の約束…忘れてた?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
…元からそんな約束していないだろ

冷たい視線で僕を一瞥いちべつしたディゴリーは
黙っている彼女に柔らかい笑みを浮かべながらもう一度口を開いた。
セドリック・ディゴリー
セドリック・ディゴリー
今日の服凄く可愛いね、あなた自身には負けるけど…
そういえば行きたいお店は決まった?
あなた
あ、あの…
セドリック・ディゴリー
セドリック・ディゴリー
ん?何?
あなた
ごめんなさい、誰ですか?
セドリック・ディゴリー
セドリック・ディゴリー
え…、

言葉を失うとはこのことだな。


ディゴリーの表情を見つめながら僕はそんなことを考えていた。



驚きを隠せないまま「どういうこと?」と彼女の肩に触れようとするディゴリーだったが、怖がるように僕の腕にしがみつく彼女を見て苦虫を噛み潰したような表情で僕を睨んだ。
セドリック・ディゴリー
セドリック・ディゴリー
…マルフォイ、彼女に何をした?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
何もしてないさ
セドリック・ディゴリー
セドリック・ディゴリー
そんなはずない!
彼女が……、僕のことを忘れる訳…
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
酷く自信満々だな
…彼女は僕を選んだ、ただそれだけのことだ

腕の中で小さく震える彼女の首元へと手をやり
場違いな程キラキラと輝くネックレスを指先でもてあそばせるように見せつけると、今にも殴りかかってきそうな、憎悪ぞうおに満ちた表情を浮かべてくる。











僕と同じ気持ちを味わえばいい。






まぁ、何年も苦しんだ辛さが
たったこれだけで分かるはずがないけど。










彼女の耳元へ顔を近付け、"あなた、キスしてくれないか?"と囁くと、勢いよく顔を上げて金魚のように口を開け閉めする。
あなた
っ、い、今?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
あぁ…じゃないとこいつは納得しないみたいだ
あなた
っ…、目、瞑ってて…

言われた通りに待っていると
温かい指先が頬に触れたのと同時に、彼女の柔らかい唇が優しく押し当てられる感触がした。



少しだけ目を開けディゴリーの方をちらり、と見れば
何とも悲しそうな表情を浮かべながら唇を噛んでいた。



彼女の肩を引き寄せ抱きしめるような仕草を見せると
拳を強く握りながら何か言いたげな顔で立ち去った。
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
…あなた、いきなりすまなかっ…っ、

小さく溜め息をいた後俯く彼女の顔を覗き込んだ僕は


酷く困惑してしまい、言葉を詰まらせてしまった。





何故か…、それは
僕のローブを強く握りしめる彼女が静かに涙を流していたからだ。





キスが嫌だったのか?

それともディゴリーとのことを思い出した?


まさか、そんなことは。





動揺する僕の様子に気付いた彼女は
急いで服の袖で涙を拭い苦笑いを浮かべながら口を開いた。
あなた
ごめんね、キスが嫌だったとかじゃないの
急に涙が出てきちゃって…
…凄くね…、大事なことを忘れてる気がして…

本当にごめんなさい…、鼻をすすりながら
ポケットからハンカチを取り出そうとする彼女の手を掴み自分の方へと引き寄せた。




震えそうになる手にぐっと力を入れる。









理解したくない…、でもせざるを得なかった。



大切な想い出をそう簡単に壊せるはずがないことを。



相手のことは忘れていても
心のどこか片隅で、"欠片"が残っているんだ。






それでも。






そうだとしても。










僕は、君の隣を譲りたくない。







ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
……あなた
あなた
ん…?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
君のことは絶対に僕が幸せにする
だから…






どうか、僕が隣に居ることを許してくれないか。





彼女の手の甲にキスを落としながら小さく、呟いた。
あなた
ふふっ…
私の隣は、今も昔もドラコだけでしょ?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
そう、だな…、あぁ、そうだ
これから先も、誰にも譲らない
あなた
…ねぇ、おかしなこと聞いてもいい?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
どうした?
あなた
私とドラコって、付き合ってるの…?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
…、
あなた
あ、ごめん…!
何だか最近の記憶が曖昧で…
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
いや、いいんだ
昨日……、僕が告白したけど、君は真っ赤な顔をして部屋に行ったまま出てこなかった
あなた
そ、そう…恥ずかしかった、のかな…?
ごめんなさい、覚えてなくて
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
大丈夫だ、……あなたは悪くない……っ、
あなた
ドラコ?大丈夫?
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
あなた…、あなたっ、頼むから…
僕のことだけ、見てて…
考えるのも、僕のことだけにっ…、
あなた
ふふっ、今日のドラコは甘えん坊なの?
さっきから私はドラコしか見てないよ




治まっていたはずの頭痛が再びやってきて、僕は強く目を瞑った。




なんで。なんでなんだ。






これでもう、大丈夫なはずなのに。






痛み出したこめかみを押さえていると
彼女が僕の頬を両手で包みながらこつん、と額同士をくっつけた。




ゆっくりと目を開け彼女に視線を合わせれば
今まで見たことのない、愛おしいものを見るような瞳が映った。



その瞬間、酷く脈打つような痛みがすっと消えていく。
あなた
私も大好きよ、ドラコ
凄く繊細で、心が弱っている時でも大切なものを守ろうとするその強さ…、いつも私を守ってくれたよね
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
っ、
あなた
返事が遅くなってごめんね
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
いい…、返事なんて気にしない…
君が側に居てくれるだけで、僕は…
あなた
ふふっ…、ねぇ、私今日はドラコの為にお洒落したんでしょ?
そんな悲しい目じゃなくて、いつもみたいに優しく笑ってるドラコに見つめてほしいな
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
あぁ…、そうだな、すまない
今日はあなたの行きたいところに全部行こう
あなた
本当?
三本の箒にも行きたいし、グラドラグスで服とマフラーと、それに帽子も見たいの
ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
ふっ…、これは夜までかかるかもしれないな

それから後は…、行きたい場所が尽きない彼女の手を引き
密着するように体を寄せ合った。








ドラコ・マルフォイ
ドラコ・マルフォイ
Merry Christmasメリークリスマス、あなた
あなた
うん、Merry Christmasメリークリスマス、ドラコ







どうか、どうかこの"幸せな嘘"が続くことを。







聖なる夜に願って。




















甘い嘘に溺れておやすみ
( 君が僕に溶けるまで )










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夢主ちゃんの「ねぇ、おかしなこと聞いてもいい?」で
◯ナ雪を思い出してストーリー終盤なのに
中々進まなかったっていう余談置いときますね






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