‐Nの城‐
キョロキョロと周りを見渡すと、どこからともなく声が聞こえてきた。
咄嗟に正面を向くと、そこには大量の七賢人達がいた。
タッタッタッタッ
シュワンッ
シュワンッ
トウヤくんは私より幼いからわからないかもしれない。
でも、私は理解してしまうんだ。
この部屋のおもちゃはさっきトウヤくんが言ってた通り、使い込まれて、更に最近遊ばれた痕跡がある。
それにこの部屋には、窓も1つもない。
ここからでも見える、バスケットボールに書かれた、「ハルモニア」の文字。
あぁ、こんなのわかりたくなかった。
タッタッタッタッ
‐奥‐
コツ、コツ…
私には、なにもできない。できることがあるのなら、それはきっと、応援だけ。
それでも、願うしかないんだ。トウヤくんが勝つことを。
これからもポケモン達と暮らす、この世界が続きますようにって、願うことしかできない。
…ゴゴゴゴッ!
バックの中…ライトストーンがうごめいている⁉▾
ドドドドド…パリーンッ!
周りのオーラを取り込んだライトストーンが、それを強烈なパワーとし、今…解き放つ…!▾
ドンッ!
レシラムが あらわれた!▾
…グイッ
トウヤくんを信じる。などと他人事のように願っていると、突然なに者かに腕をつかまれた。
咄嗟にトウヤくんの方に視線を向けると、そこには真剣にレシラムへ挑む少年の姿が。
なんて、当たり前じゃない幸せがすぐそばにあったことを、自覚しているつもりで、いざとなると全く考えていなかったことを思い出す。
グイッ
グイッ!
誰かもわからない人に腕をつかまれ、引っ張られやってきた場所は…
私はトウヤくんのように強くないし、勇気もない。
そんな私が、こんなラスボスみたいな雰囲気を飾るなんて、おかしな話。
…でも、トウヤくんは今、一生懸命Nと戦ってる。
私がしなかったら、この世界は…
そんなの…
プラズマ団のゲーチスが 勝負をしかけてきた!▾
ドッゴーン!
威厳のある戦い、その言葉が1番似合うバトルだと思う。
ぼくの目の前には、伝説のポケモン、ゼクロムとレシラム。
ゼクロムはNを、レシラムはぼくを英雄と認め、力を貸してくれた。
大きく響き合うわざ。
このバトルは、絶対、絶対に負けられない。
ぼくがここまで来れたのは、ぼく1人の力じゃない。
ポケモンがいて、一緒に学んで、一緒にバトルして、一緒に強くなってきたからこそ、ここまで来れた。
今だってそう。レシラムやポケモン達がいなかったら、ぼくはただの無力な男になる。
ポケモンにはいつも助けてもらってばかり。だからぼくは、実力で恩返しをしたい。
あれからゲーチスとのバトルはまだ続いている。
ゲーチスのポケモンは全部で6体、そして残りは3体。
そしてこちらのポケモンは5体、そして残りは2体。
やっぱり世界を変える力を持ってるだけあって、やっぱり強い。
ポンッ
ザシュッ、ドンッ!
あれからも激戦が繰り返され、まだまだ決着もつかなさそうだ。
…この世界は、みんなに力で成り立っている。ジムリーダーにチャンピオン、それぞれのトレーナー達。
みんなの心や願いが重なって、こんなにキレイな世界ができてる。
…ぼくはそんな世界を壊したくない。ポケモンと人の笑顔が輝いていて、幸せそうにしている街達が、ぼくは大好きだから。
…なにより、ずっとぼくについてきてくれた、ユズキとポケモン達を…
一瞬の隙に後ろを見ると、そこには誰もいない。
うそだ、さっきまでそこに、怯えているような、怒っているようなユズキがいたはずなのに。
…バタン
時空が止まったような感覚。止まらない冷や汗。
目の前には、大好きで、これまでともに暮らして、冒険してきた、エルフーンの倒れた姿が。
苦しそうに倒れるエルフーンと、やり切った顔をしているゲーチス。
これからの世界やトレーナー達をかけた戦いで、私は…
…負けた。
プラズマ団のゲーチスとの 勝負に負けた!▾
ガタ、ガタン…
あまりのショックに、私は跪く。
目の前が真っ暗になった!▾
次回 ➡ 【理想と真実】












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!