第19話

~19~【奪えない夢】
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2024/03/04 08:00 更新
…バタン
ユズキ
小さい頃からの夢であり目標であった、「チャンピオン」という肩書き。

その座を手に入れるため、どれだけの努力をしたことか。

そういう今さっきまでだって、チャンピオンの座をかけて、大好きな少年と頂上決戦をしていた。

…でも、だけど。その座を手に入れたのは…
アデク
…勝者、トウヤ!
パチパチパチパチ!
トウヤ
やった、やった…ぼく、チャンピオンに…!
ベル
やったね、トウヤ!おめでとう!
チェレン
まさかキミがチャンピオンにまでなるとはね…素直にすごいと思うよ
ユズキ
トウヤ
…ぁ、ユズキ…
ずっとその夢を追いかけて冒険をしてきたけど、その座を手に入れたのは、私じゃなく…トウヤくんだった。

頑張って集めたジムバッジも、トウヤは軽々と手に入れてしまう。

気づかないようにしていただけで、薄々感づいてはいたんだ。

チャンピオンになるのは私ではなく、トウヤだって。

…パチパチ
ユズキ
…おめでとう。やっぱりトウヤくんはすごいね、…どうやっても追いつけないや
トウヤ
ユズキ、その…あ、ありがとう!
ユズキ
うん、おめでとう。さすが私の愛し子だね。…なんてね
トウヤ
精一杯の笑顔で冗談らしく笑っても、周りは笑ってくれない。

もしかして、みんな私のことが心配なの…?
ユズキ
…あ~悔しいな~!泣きそうだわ!
全員
ユズキ
でも、同時に嬉しすぎるって気持ちも捨てられない!
ユズキ
だって、大好きな子がチャンピオンになったんだもん!嬉しくないはずないよ!
ユズキ
改めて!チャンピオンおめでとう、トウヤくん!
トウヤ
ユズキ…
トウヤ
…ありがとう!
眩しいくらいの笑顔。私にはできない笑顔。

どうやっても追いつけなかった私自身に、自己嫌悪に陥る。

ポケモン達も一生懸命頑張ってくれたんだ。褒めてあげなきゃ。

…なのに、それなのに…
ユズキ
(やっぱり、悔しいなぁ…)
ユズキ
っ…なんで、私はもっと頑張れなかったんだろ…
エルフーン
ルフ…?
ユズキ
ごめんね、こんな出来損ないで…エルフーン達はなにも悪くないんだよ…?
トウヤくんがチャンピオンなって、もちろん嬉しい気持ちでいっぱいだ。

…だから喜ばなきゃって。悲しいとか、羨ましいなんて思っちゃダメなんだって。

トウヤくんが心から喜べるように、私は笑顔で祝福する。

でも、そんな気持ちに背を向けたって、いつかは限界がくる。

我慢しなきゃと思っていても、その気持ちとは裏腹に涙がこぼれてくる。
ユズキ
祝わなきゃいけないのに…おめでとうって、いつもみたいに言わなきゃいけないのに…
ずっと憧れて、努力して、強くなって。

苦手なことにだって立ち向かって、あの時とは比べ物にならないくらい成長したと思う。

…でも、私が求めていたのはこれじゃない。

チャンピオンという名を手に入れて、輝いて。

それを目指していた私は、そのためにジムを巡って、ポケモンを鍛えて。

一生懸命に頑張って、ただ走り続けた。

…でも、どんなに頑張っても、トウヤくんには勝てないんだなって。

コンコン
トウヤ
ねぇユズキ!いる?
ユズキ
大好きで、いつもはとっしんのようにハグをしに行く子。

でも、だけど。今だけは話したくない。
ユズキ
…ごめんね
私は純粋に、素直にキミのことを見れないから。

もう限界なんだ。少しの間、さようなら。
ユズキ
…エルフーン、戻って
エルフーン
ルフ…
エルフーンをボールに戻し、荷物をまとめる。

なにごとにも初心が大事。…だから戻ろう。

‐翌日‐

N side
チェレン
トウヤ、そっちにはいた?
トウヤ
ううん、いなかった…ベルの方は?
ベル
あたしの方もいなかったよぉ…
トウヤ
ユズキ、一体どこに行っちゃったの…?
ベル
…やっぱり、チャンピオンのこと、気にしてるのかな?
トウヤ
チェレン
…確かに。あの時のユズキの様子からして、明らかに落ち込んでたからね
N
ゼクロム、戻ってくれ
全員
トウヤ
あ、N!
N
N
トウヤ!どうしたんだい?こんなところで…
ベル
どうしたもこうしたもぉ…!
トウヤ
ユズキが…ユズキがいないんだ!
N
っ⁉
チェレン
…簡単に言うと、そういうことだね
N
どういうことだい?ユズキがいないって?一体どこに…!
トウヤ
落ち着いて、N!ユズキがどこにいるか、それはぼく達もわからない。だから一生懸命探してるんだ!
N
っ…!
ユズキがいなくなった。そう聞いた途端、体が動いていた。

綺麗で、美しくて、可愛くて、ポケモンのような、不思議な子。

キミはあの時、ボクに微笑んでくれたはずだ。

絶望に満ちていたボクに、キミは話しかけてくれたんだ。

笑っている顔も、怒っている顔も、トウヤにハグしている顔も、全部が愛おしい。
トウヤ
N!待って、どこ行くの⁉
N
ユズキを探して見せるんだ!絶対に!
チェレン
待って、そんなむやみに探しても…!
N
ボクは彼女がいなければダメなんだ!
そう言ってゼクロムに乗り、そらをとぶように合図をする。

トウヤはわからないかもしれないけど、ボクにはわかる。

普段からの様子を見るに、ユズキにとってトウヤは、大切で特別な存在。

そんな彼に、ずっと夢見ていた夢を踏みにじられたんだ。そんなの正気を保っていられるはずがない。

キミは優しいから、本人に感情をぶつけるなんてできないだろう?

…どうして、どうしてボクを頼ってくれなかったんだい?

キミ1人だけがそんな思いを抱えるなんて、苦しいだけ。

今はそうじゃなくても、キミがいつか、ボクにすべてを話せるようになろうね。

‐?‐

懐かしい景色に匂い。なんだかまた泣きたくなっちゃうな。
ユズキ
…ただいま、ワカバタウン
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