太陽の日がもうすっかり見えなくなっていた頃
僕はさとみくんと一緒に祭りの会場に向かっていた
ここの道は、おじいちゃんが住んでいる場所と違って
人通りも多く賑やかだった
花火大会ではしゃいでいる子供やカップルが
楽しそうに喋っている中、
僕たちは終始無言で歩いていた
お互い良く似合う浴衣を着ながらまだ熱が残る
夏の夜の道を進んで行った
そう思って僕はさとみくんに話しかけた
なんだ、僕ちゃんとさとみくんと喋れるじゃん
さとみくんは空を見上げながら言った
空には夏の大三角形の星
『ベガ』 『デネブ』 『アルタイル』
がよく光っていた
指で空をなぞるように星と星を繋ぎながら話した
僕はぼんやりしながらそう言った
元はと言えば仕事をせずに遊んでいたふたりが
悪いのだろうけど、でも
僕は2人の純粋な愛がすごく素敵だと思った
さとみくんは少し笑いながらもそう言った
僕はちょっと驚き止まってしまった
でもさとみくんは歩みをとめず進んで行った
僕は走ってまたさとみくんの隣に並び歩いた
気がつくともう
祭り会場の手前の神社まで来ていたようだった
さとみくんはまた少し笑いながらも
どこか真面目な様子で言った
さりげなくそう言ったさとみくんに僕は
少しドキッとしてしまった
なんでそんなにさらっとロマンチックのことが言えr…
心臓がびっくりして鼓動が早くなる感覚
ドキドキと速いテンポで脈がなっているこれが
きっとそうなのだろう
でもなんで?
なんで僕はさとみくんにドキッとしたのだろうか
だって、そんな怖いことが起きたわけでも
思いっきりビビって驚いたわけでもない
それに、別に僕はさとみくんのことが好きな訳でも
恋とは不思議なものだ
ついこの間まで好きではなかった人が
気づけば気になっていたり、意識してしまったり
そして恋していると気づくのは本当に
ふとした瞬間だったりする
そしてその瞬間が訪れた時から
その人のことがどうしようもなく愛おしく思ってしまう
求めてしまう
そしてその衝動が抑えきれなくなってしまう
さとみくんはこの衝動を数年間ずっと
抑えていたのだろうか
昨日だって、もしかしたら本当に我慢していたのかも
しれない
そう考えるとすごく申し訳なくなってきてしまった
さとみくんは急に謝りながら泣き出した僕に
すごくびっくりした様子だった
でも僕はつい感情が溢れてどうすることも出来なかった
焦りながらもさとみくんは僕の手を優しく引っ張って
ほぼ人が来ないような神社お社の裏に連れてきた
でもそこは田舎の風景が一望できて
とても風通りの良い場所だった
僕とさとみくんはそこにあった段差に腰を下ろした
さとみくんは僕の言葉を聞くや否や
真っ赤なリンゴのように顔を赤らめて驚いた
手を引いてくれた時からはなさなかったその手は
段々と力がなくなってきて
ついには離れてしまった
そうだ、僕はずっと嫌ではなかったんだ
さとみくんが僕に対して特別な感情を抱いていることに
今までで少しも不快感を感じたことはなかった
そう考えれば本当は僕もさとみくんのことを
昔からちょっとは好きだったのかもしれない
さとみくんがボソッと呟いた
その瞬間、さとみくんは僕にグッと顔を近ずけた
チュ ッ …
さとみくんは僕の手を握り軽いリップ音を鳴らした
僕はその時ようやく理解した
僕はさとみくんの物になってもいいと思っているんだ
いや、なりたいって思ってるんだ
少し笑いながらも愛おしいそうに見つめるさとみくんに
僕は目を合わせることが出来なかった
気まずいからとかではない
ただ、どうしようもなくさとみくんを求めてしまう
どうしようもないほどさとみくんが欲しい
そういう思いが暴走してしまいそうだったから
さとみくんは俯いて少し声が震えた声でそういった
きっと今までの気持ちが溢れて来たのだろう
ポタッ…ポタッ…
僕の手に数粒のしずくが落ちてきた感覚がした
さとみくんは俯いたまま僕の手をギュッと握りしめた
こいつサラッと爆弾発言しやがった
さとみくんはそう言ってしばらく僕を抱きしめて
微動だにもしなかった
僕は抱きついて離れようとしない
さとみくんをなだめるように言った
するとさとみくんは案外すぐに体を起こした
そうホッとしたのもつかの間、
急にさとみくんは両腕を僕の顔のすぐ横に突き立て
いわゆる壁ドンしてきた
これで無事一件落着と思いきやまださとみくんは
なにか言いたげであった
照れて顔と耳が真っ赤になり
恥ずかしさのあまり目が涙目になっているさとみくんは
月明かりに照らされて酷く儚く見えた
もう周りの音が何も聞こえない
ただ儚いさとみくんだけが僕の意識を引き付けた
さっきまで泣きそうだったさとみくんの顔が
一気にパッと明るくなった
僕がそう言いかけた瞬間さとみくんが急に顔を近づけた
びっくりした
さとみくんがいきなりキスをしてきたから
しかもこれは普通のキスではない
離そうとしてもさとみくんが力が強く押し返せなかった
でもキスの方はとても優しかった
さとみくんの舌が僕の舌を優しく撫でてくる
気持ちいい…キスってこんなに気持ちよかったんだ
なんだか変な気分になってくる
だが不意打ちでやられたからもう息が苦しくなってきた
そう言ったところでさとみくんはキスをやめて
顔を離してくれた
さとみくんはいたずらに笑いながら言った
さとみくんはそう言ってにやけながら視線を
僕の体の下の方にやった
僕は内心さとみくんにイラつきながら急いで立った
さとみくんは歩き出そうとした僕の手首を掴んだ
そしてそのままグッと勢いよく引き寄せた
そのせいで僕はバランスを崩し
さとみくんの方へ倒れ込んでしまった
が、さとみくんはそれを華麗にキャッチした
こんなふしだら状況にも関わらず夜空には
花火が打ち上がり始めていた
でも今はそんなことよりもさとみくんに夢中で
さとみくんしか見えなくて
さとみくんのことしか考えたくない
【さとみくんと一緒にいたい】
END












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。