冬期講習を終えて教室の外を見れば
朝から降っていた雪がしっかり積もっていて、
校庭は一面真っ白だった。
文系コースの村宮も、今頃他の教室で同じように
この景色を眺めているかもしれない。
朝から勉強し通しだったので、ぐっと伸びをすると
背中からぽきりと音が鳴った。
それに続いて、机に置いていたスマホからも
メッセージの受信音が鳴る。
見ると、相手は村宮だった。
送られてきたメッセージを読むと、自然と頬が緩む。
俺は手早く勉強道具を片付けて、
荷物を持って教室を出た。
───
待ち合わせ場所として指定された中廊下は、
屋根がないため一面に雪が積もっていた。
そこにしゃがみ込んで頭を付き合わせている村宮たちは、
未だ降っている雪をものともせず楽しそうだ。
事前にアドバイスされていた通り、
下駄箱からピックアップしてきた靴に履き替える。
暖房がついている校内から一歩外に踏み出すと、
たちまち寒さが身に染みた。
さくさくと雪を踏みしめる俺の足音に気付いた村宮が、
ぶんぶんと大きく片手を振る。
もう一方の手のひらには、かわいらしい
ゆきうさぎが鎮座していた。
手のひらも鼻の頭も真っ赤だし、頭の上には
うっすらと雪が積もっている。
いつからここにいんだよこいつら……。
同じく頭に雪を積もらせた三浦の言葉に、思わず黙る。
言葉で伝えることを意識しだしてからの三浦は、
感情をストレートにぶつけてくるから
たまにこっちが照れてしまう。
ただ照れているのは俺ぐらいで、
村宮と和田は全力で三浦の言葉を肯定し、
おおいにはしゃぎ倒す。
今だって、雪を集めていた三浦に両側から抱き着いて、
頭を撫でくり回していた。
村宮に腕を引かれて、その隣にしゃがみ込む。
寒いし、雪は冷たいし、手はかじかんで痛いし。
けど、こんな時間も悪くない。
俺たちがこうして一緒に過ごせる時間が終わる日は、
刻一刻と迫っている。
三浦の言う通り、大切に出来る時にした方がいい。
作り終えたゆきうさぎを並べて村宮が
写真を撮りまくっていると、背後から
騒がしい声が聞こえてきた。
振り返らなくても分かる、いつぞやの一軍たちだ。
あからさまに嫌な顔を向けてしまったが、
一軍たちはお構いなしにこちらにやってくる。
和田が一軍たちを連行していったあの日以来、
こいつらがしつこく誘いに来ることはなくなった。
あの後、本当に進路を変えたやつもいたらしい。
ちょっと話しただけで他人の人生を
そこまで変えてしまえる和田は、
本当にカウンセラーの素質があるということだろうか。
もしくは教祖の。
だからこそそう言われて心底驚いた。
いや、変わったのお前らだぞ。
確かに村宮は嫌なものは嫌だと言えるようになったし、
自分の意思を伝えられるようになった。
かつて関西弁をからかわれて
会話が出来なくなっていた三浦。
それを抜きにしたって無口すぎる奴だったが、
最近では素直過ぎるくらい素直に気持ちを
伝えてくれるようになった。
確かに、成長したよな。
良くも悪くも素直な一軍たちは
オブラートに包むということを知らない。
改めて言われると、自分でもそうだったよな、
と納得はする。
だが、だからといって腹が立たないわけじゃない。
シンプルにムカついたのですくい上げた雪を投げつけると、
隣では和田も同じことをしていた。
目が合うと、その目がすぐに怪しく細められる。
なるほど。お前もムカついたんだな。
器用な和田が手早く丸めた雪玉を並べていくので、
俺はそれを片っ端から投げつけた。
即席の連係プレイだったが、面白いくらい命中する。
最初はぎゃあぎゃあ喚きながら雪玉を
食らっていた一軍たちが攻撃に転じると、
当たり前のように村宮と三浦も参戦して、
雪合戦はさらに賑やかさを増していった。
最初は苛立ちを込め投げつけていたが、
時間が経つにつれてただのじゃれ合いへと変わっていく。
高三にもなって雪合戦だなんてガキっぽいかもしれない。
だけどそれ以上に感じているのは、確実に楽しさだった。
今しか出来ないバカ騒ぎ。
だったらせいぜい騒いだもん勝ちだよな。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!