ーー高校時代ーー
付き合ってからのあなたの下の名前は敬語も外れて俺に対しても完全にフジたちと同じように話すようになった
それだけじゃない
想像していたよりも愛情表現がストレートで、「好き」とちゃんと伝えてくれる
彼女の親は「ちゃんと勉強しなさい!」ってタイプだからデートは2、3ヶ月に一回とかで、周りの同年代カップルよりかは少なかった
だけど一緒に勉強することもちょくちょくあったからそれも十分嬉しかった
もちろんぶつかることもある
そんな時、彼女は多少感情的になるもののすぐに落ち着いて俺の話もちゃんと聞いた上で自分の意見を伝えてくれるから大喧嘩になることはなかった
デートの予定の日に生理が重なって行けなくなったときに俺が「行きたくねーの?」とかアホなことを言ってしまったときは「金玉引きちぎるぞコイツ……」とか怒られたけど
他にも女子の大変なこととか教えてもらって、ふたりで上手くやっていたと思ってる
でも、3年で部活を引退していよいよ受験も近づいてきた時期からは、部活で会えなくなってしまったし他の場所で会う頻度も減ってしまった
一緒に帰ったりたまにお互いの家で勉強したりはしていたが、彼女の元気は少し減っているように感じた
彼女は時折、脳が疲弊しすぎて頭痛や目眩を引き起こすことがあるという体質があったので、今回もそれなのかもしれない
もうあと少しでクリスマスなんだ
俺は彼女に元気を出してもらいたくて、彼女のことを考えながらプレゼントを選んだ
家に帰ると紙袋をテーブルに置いた兄がソファでくつろいでいた
紙袋はたった今俺が買ってきたプレゼントと同じ店のものだった
その時、ふとソファの前のローテーブルに置かれた紙が目に入った
朔哉が紙になにかを書いていたので少し覗き込んでみた
読んでるこっちが胸焼けしそうなくらい甘ったるい文章の羅列がそこには書かれていた
お調子者で自他ともに認める彼女ラブ人間の朔哉は得意げな表情をしている
でも……メッセージカードか…………
彼女から「好き」と言われることはあっても、自分からは照れくさくてなかなか言えていない
俺がそう尋ねると、朔哉の目が一瞬見開かれた
そして1秒後にはニヤニヤしてキモい口調で話す
顔が地味にイラッときたので軽くどつく
ペラ、と一枚の紙が差し出された
ちょっと大袈裟にキザな動作をしてくるのが鬱陶しいというか朔哉らしかった
俺はカードを受け取り、早速自分の部屋へと向かった
2日後、クリスマスイブ
最近寒くて朝なかなか布団から出られない
普段より少し遅い時間にリビングへ行き、急いで朝ごはんを食べる
テーブルの上に置かれてあった紙袋が2つから1つになっている
朔哉はもう大学に行ったのか
朝食を食べ終わり、俺もちゃんと忘れないようにプレゼントを手に持って家を出た
急ぎ足で学校に向かう中、俺は彼女が喜んでくれるかどうかだけを考えていた
放課後になり、靴箱の前であなたの下の名前を待つ
さっきLINEで「今日掃除!」と言っていたからそろそろ来るだろう
少し待つと彼女が来た
小走りでこちらに来てくれるのが嬉しい
靴を履き替えて学校を出る
あなたの下の名前はこの後家族でご飯を食べるので、今日は一緒に図書館に行ったり家で一緒に勉強したりはしない
さすが北海道の冬は寒い
となりあって歩く俺たちの息は白かった
来年は一緒にデートに行けたらいいな……
あ、来年だとあなたの下の名前が受験なのか
なら再来年はどこかへクリスマスデートに行きたいな
そんなことを考えながら彼女の家まで喋りながら歩いていく
目的地に近づく頃にはあなたの下の名前の鼻先や頬は冷気でほんのりと赤くなっていた
白い肌にピンク色の映える様子は紅を差した人形のようにかわいらしい
俺はカバンから紙袋を取り出して彼女に手渡した
彼女は少し息を飲むと嬉しそうにそれを受け取った
そう言うと彼女もカバンから丁寧にラッピングされたプレゼントを取り出して俺に渡してくれた
中身を見る前からめちゃくちゃ嬉しい
受け取りながら俺は思わず笑顔になってしまった
彼女は紙袋の中を覗き込み、手を入れた
出された手にはメッセージカード
気付いたのか
今から読まれると思うと少し恥ずかしいし緊張する
カードを開いてすぐ、彼女はこちらを見た
しかしその表情は曇っている
疑問に思っていた次の瞬間、彼女の一言に俺は心臓が凍るような思いをすることになった












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。