第4話

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2024/04/12 05:06 更新
……。

……これは。

迷子、というやつだね、きっと。

もう14歳なのに、迷子。

いやいや、今日は学校初めてだったんだから、しょーがない、よね?

青々とした芝生に、ぽつんとベンチが置かれている。

ゆるゆるとベンチに腰を下ろした。
渡木さくら
ふぅ
自然とため息がもれる。

外に出るのも久しぶりだったから、疲れてしまった。

もう、帰りたいな……。

けど、帰ったとしても私は、「かえでの代わり」。

いつまでも、どこに行っても、たぶん一生。

「さくら」を求めてくれて、受け入れてくれる人は、もうどこにもいないんだよね。

ベンチに背中をあずけて、両手をだらりと下げる。
渡木さくら
しんどいなぁー……
桐山湊
なにが?
聞こえるはずのない返事に、ガバッと身を起こす。

ベンチの後ろに、男の子。

けげんそうに私を見てる。
渡木さくら
えっと、どちら、さま?
え、え??


というか今、普通の話し方をしてしまったよ??

これは後からめんどうくさくなるパターンでは……。

なんて説明しよう……。


いや、違う学年とかだったらなんの問題もないよね!

大丈夫!
桐山湊
同じクラスの桐山湊。
渡木さんが体育準備室から戻ってこないから探してこいってさ
渡木さくら
あー……
同じクラス……。

これは誤魔化しが効かないやつでは……。


そういえば、今って体育の授業中だったっけ。

唯一の見学者だった私が、体育準備室で道具を取ってこいって言われて、迷子。

のんびりベンチに座ってる場合じゃなかったね、私。
桐山湊
ここ、体育準備室と真逆だよ?
場所わかんないなら聞けばよかったのに
渡木さくら
う。ごめんなさい
というか、しゃべり方については何も言わないんだ。

そうだよね、女子の会話なんてそんなに聞いてないよね。
桐山湊
そっちが渡木さんの素なんだ?
しっくりくる
……そんなことなかったみたい。
渡木さくら
あ、あの。こ、このことはどうか、内密に……!
私が手を合わせると、表情を変えずにうなずいてくれる。
桐山湊
わかった
渡木さくら
ありがとう……
桐山湊
おれも授業サボろうかなぁ
渡木さくら
えっ
中学校の授業って、そんな簡単にサボっていいものなの……!?
桐山湊
あーでも後でメンドそうだな。絵美にも殴られそう
渡木さくら
なぐられ……!!?
ちゅ、中学生ってそんなに野蛮なの!?

目を丸くする私を、桐山くんがチラリと一瞥する。
桐山湊
本気の殴るじゃなくて、比喩的な?
渡木さくら
あ、なるほど
私が言うと、桐山くんがクスッと笑みをもらす。
渡木さくら
どうかした?
桐山湊
ううん、イメージと全然違ったから
渡木さくら
そ、そうかな……
桐山湊
そろそろ戻んないとマジメに怒られそう
ベンチに座ったままの私に、桐山くんが手を差し出してくれる。

あの絵本に出てくる王子さまみたい……なんて考えが浮かんで、ぶんぶんと首を振る。

いつまでも夢の世界にいたら、あっという間にこてんぱんにされる。

この世界は厳しいんだ。

気を抜かずに、ちゃんと生きなければ。

でも……せっかくの好意をむげにするのは悪いよね。

桐山くんの手を取って、ベンチから腰を上げた。

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