……。
……これは。
迷子、というやつだね、きっと。
もう14歳なのに、迷子。
いやいや、今日は学校初めてだったんだから、しょーがない、よね?
青々とした芝生に、ぽつんとベンチが置かれている。
ゆるゆるとベンチに腰を下ろした。
自然とため息がもれる。
外に出るのも久しぶりだったから、疲れてしまった。
もう、帰りたいな……。
けど、帰ったとしても私は、「かえでの代わり」。
いつまでも、どこに行っても、たぶん一生。
「さくら」を求めてくれて、受け入れてくれる人は、もうどこにもいないんだよね。
ベンチに背中をあずけて、両手をだらりと下げる。
聞こえるはずのない返事に、ガバッと身を起こす。
ベンチの後ろに、男の子。
けげんそうに私を見てる。
え、え??
というか今、普通の話し方をしてしまったよ??
これは後からめんどうくさくなるパターンでは……。
なんて説明しよう……。
いや、違う学年とかだったらなんの問題もないよね!
大丈夫!
同じクラス……。
これは誤魔化しが効かないやつでは……。
そういえば、今って体育の授業中だったっけ。
唯一の見学者だった私が、体育準備室で道具を取ってこいって言われて、迷子。
のんびりベンチに座ってる場合じゃなかったね、私。
というか、しゃべり方については何も言わないんだ。
そうだよね、女子の会話なんてそんなに聞いてないよね。
……そんなことなかったみたい。
私が手を合わせると、表情を変えずにうなずいてくれる。
中学校の授業って、そんな簡単にサボっていいものなの……!?
ちゅ、中学生ってそんなに野蛮なの!?
目を丸くする私を、桐山くんがチラリと一瞥する。
私が言うと、桐山くんがクスッと笑みをもらす。
ベンチに座ったままの私に、桐山くんが手を差し出してくれる。
あの絵本に出てくる王子さまみたい……なんて考えが浮かんで、ぶんぶんと首を振る。
いつまでも夢の世界にいたら、あっという間にこてんぱんにされる。
この世界は厳しいんだ。
気を抜かずに、ちゃんと生きなければ。
でも……せっかくの好意をむげにするのは悪いよね。
桐山くんの手を取って、ベンチから腰を上げた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。