あれからテヒョンイヒョンはジミニヒョンと一緒に居るようになった。
ジミニヒョンと一緒に他のヒョン達に守られながら過ごしている。
僕の姿が見えると体を震わせて誰かの後ろに隠れるけどね。
好きな人に怖がられるのは悲しい。
けど良いの。
僕がそうなるように仕向けたから。
僕が望んだ結末だから。
これ以上酷くならないように、でも元に戻らないように。
ずっとこれを保つんだ。
それが幸せのカタチ
僕は毎週のように海へ向かうようになった。
夜には夕方とは違う静けさと、美しさがある。
夕方は癒やされるけれど、
夜は、落ち着く。
夜は月光に海が照らされ、青と白、水色、紺がベースとなった空間が出来上がる。
それが、僕の心の隙を突いた。
すっと入り込んで、はまってしまった。
その感覚がどうしても忘れられなくて、心地よすぎる夜風を浴びながら冷たい水に触れる。
僕の指を伝ってポタポタと落ちていくその雫がどうも綺麗で、目を離せない。
月光に照らされ白く光るその雫はまるで真珠だ。
すぐポチャンと居なくなってサーッと白い粒を消す。
その呆気なさが儚くて、あまりに美しい。
一生居ても居たりないよ。
この潮の香りも、ザーザーとゆっくり響く音も、月明かりに照らされてキラキラ光る波も、泡立ちながら僕に近付こうとして離れる君も。
そして、近いようで遠くに輝く月も。空に飾りを付け足す数々の星も。
全部忘れたくない。
なのに、温もりのように少し経つと消えてしまう。
酷いね。
僕はこんなにも求めてるのに。
君は消える。
忘れる。
忘れさせようとしてくる。
だから何度も何度も来させるんだ。
ずるいよ。
いっそのこと、僕も其処に入れてよ。
波でも良い、潮風でも良い、波音でも良い、月でも良い、星でも良い。
君にならせてよ。
君に溶け込んで、輝きたい。
けれどそれは叶わないから。
虚しくなる前にもう帰るよ。
宿舎に帰ると、何故か全員揃って鋭い目つきで僕を見つめていた。
僕を避けてたのに、怖がってたのに、怯えてたのに、嫌がったのに、拒絶したのに。
今はそうやって僕を綺麗な顔で睨んでいるんだね。
何があったのか知りたいよ。
突然、どうしちゃったんだろう。
僕はいつもと変わらないのに。
どうしてそんな顔してるんだろうね。
低い声、
相当怒っているみたいだね。
僕何かしちゃったかな?
あの場所を思い出し、気持ちが穏やかになるのを感じた。
あの綺麗な場所を貴方達は知らないなんて、なんだか信じられないよ。
純粋に分からなかった。
どうして、浮気をする必要が?
別にそれで幸せになるって訳でもないのに。
僕はもうテヒョンイヒョンと別れたはずだ。
どうして浮気という言い方をするのか分からない。
別にしても問題は無いはずだ。
もう僕は誰のものでもないのだから。
あ、やっちゃった。
悪気は無かったんだけどな、
何をそんなに疑っているの?
ヒョンの携帯にはあの時会った男の子が映っていた。
身長が高かったその子を見て新しい恋人だと思い込んだのか、このことをヒョン達はさっきから言っているようだ。
でもこの時僕は一人だったはず。
周りに人も居なかったような、
正直検討はついてた。
ジュヌの友達が現れたのだからジュヌだってこの近くにいる。
たまたま僕のあの様子を見て情報を売ったんだろう。
完全にやらかした、
ダメだな、笑
言えるわけないじゃん。
この状況で、過去に嫌がらせ受けてました。なんてしょうもないこと。
誰が言うと思う?
そんなことよりヒョン達の方が辛いのに。
言ったら呆れるに決まってるよ。
それなら、言わない方がいいでしょ?
貴方を脅す手口はいくらでもある。
どれだけの発言をしたのか、
貴方は知らない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。